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侵入者

 

みなとみらい方面から、ランドマークタワーの前方へ抜ける。操と太一は横浜が誇る高層建築に目を向ける余裕がなかった。第九は流れっぱなしだったし、運転席のステラはハンドルから手を離し、曲に調子を合わせて歌っている。


自動運転のようだったが、時々ハンドリングが危うい。しかもスピードを出しすぎだ。操たちは気が気ではなかった。


「ちょっとステラちゃん、大丈夫なの!?」


「問題ありません。目的地まで所要時間二十分。皆様は音楽を聞いてお楽しみ下さい」


操に答えたのはステラではない。聞き覚えのない女の声が車内で反響している。スピーカーからだと気づく頃には桜木町方面の標識が見えた。


「ハダリー、お行儀が悪いのね。自己紹介もせずに」


ステラがお姉さんぶってたしなめるとわハダリーは暫く黙り、そこから機関銃のように喋り始めた。


「オッケー、ステラ! ハアイ、みんな。わたしハダリー、見ての通りのティーンの女の子よ。安全運転を心がけるけどシートベルトはちゃんとしめてね」


「ノー! そういうことじゃない!」


ステラはパネルをバンバン叩いた。それから気恥ずかしそうに振り返る。


「すみません、この子、人が一杯いるから興奮しちゃっったみたいで。良い子なんで仲良くしてあげて下さいね」


ステラの話を総合すると、ハダリーは車に搭載された人工知能で無二の相棒らしい。ステラはハダリーを人間扱いしているように見えた。


自分をアンドロイドだと主張する少女と、自分を少女だと主張するAIの相克は、操の興味を引いた。


反対に、ステラへの心証がよくない太一は気味悪く思った。できれば車を降りたい。操の手前口に出せないが、機会があれば断行したいと思っていた。


桜木町駅に差し掛かった時だった。音楽がぷすりと止み、静寂が訪れた。曲にハミングしていた操は舌を噛みそうになった。


「コーション! 車内に特定されていない生体反応があります」


ハダリーの警告を真に受けたのはステラだけだった。自分の城に不審者がいると告げられ、気が気ではない。


「ボンネットに猫が入っちゃったりして」


太一が不吉な事を言うと、操は金切り声を上げた。


「大変! 車を止めて、ステラちゃん」


操の悲痛な訴えは受け入れられ、桜木町の大型複合施設の脇にハダリーは止まった。


三人はまず車内を捜索したが、めぼしい手がかりは見つからなかった。次に車外に出て、トランクを開けた太一は悲鳴を上げた。


三人が見下ろす中、トランクにいたのは太った中年男性だった。胎児のように体を丸め、ボストンバックを抱えている。


「誰?」


三人は揃って疑問を口にした。

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