22話、剛討伐計画1
野良犬の鳴き声、ホームレスの唸り声、缶を蹴っ飛ばす音そんな普段じゃ効かないような音が響く中路地裏をバカみたいにゆっくりと歩く足音とその足音をつける足音が聞こえる。
「...........」
剛はボーッとした様な目で前を見据えながら何も喋らずただ淡々と前へ、孤児院へ進んで行く。
そんな剛の後ろ、だいたい4mぐらい離れたところにあるゴミ捨て場の陰に隠れている人影が2人。
「...おい栗原、さっき聞かなかったが何でこの先に孤児院しか無いって知ってんだ?」
「今現に僕がその孤児院で暮らしているから」
「そうか」
それだけで会話は一時中断される。
幾ら遅くなっているとはいえ敵は敵なのだ、油断は出来ない。
「...っ!」
カチンッ
ゴミ捨て場から直ぐに飛び出し電柱の陰に移る。
この時に少し金属音がなってしまい驚いて剛を見てみるが特に変わりはなく、安心する。
今度は電柱の影から乱雑に積み上げられた段ボールの影に移る。
サササッ!
こんな動きを繰り返して徐々に剛に近づいて行く。
2m
1.5m
するとこの時に剛の動きに変化が見え始める。
ググググッ...
剛が後ろを向き始めたのだ、まるで時計の針の秒針のようにゆっくりで視界外に出るのも簡単そうだ。
しかしこの2人からすると恐怖でしかなかった。
何せ、振り返ったのだから、幾ら遅くても振り返った、気づかれた、勘付かれたのだから。
「取り敢えず隠れるぞ!」
桐条が大声をだして僕の右腕を掴む。
しかし、先ほどまで隠れていた段ボールや電柱ももう剛の視界に入ってしまっている。
時計で言うと、12の方向を向いていた剛が振り返り始め、今、数字の4ぐらいのところを見ているのだ。
ちなみに桐条と僕は8のあたりでテンパっている。
「えぇい!!こうなったら!ただの気のせいと思われることを願って進めぇぇぇ!!」
桐条は僕の右腕を掴みながら剛の左側、今剛が向いている方向と真逆の方向に空いていた少量のスペースに突っ込む。
勿論剛からは見えない。
もしも視界に入ってしまったとしても、長くなった前髪が風になびかれ一瞬だけどチラッと見える様に、新幹線に乗っている時に看板があった事は分かるが文字は読めない様に、何かが通ったのは分かるが顔や服の柄などは全くわからないのだ。
「急ぐぞ!」
「わかった」
桐条と僕は頷きあい、走りながら孤児院へと向かう。
シャッ... シャッ...
箒をはく音が聞こえ始める。
「もうすぐだよ」
僕がそう桐条に呟き、歩いていた桐条を追い抜かす様に早歩きになり箒をはく音と子供達の声が次第に大きくなって行く。
「あら、早いわね!子供達も会いたがっていたわ、その子は学校のお友達?」
ルミアーナさんが頬に手を当てて首をかしげる。
「うん、そうなんだけど...ウチに剛って苗字の子って居る?」
すると意外な質問をされた様で少し戸惑いながら答える。
「ほら、いつも遊んであげてる中に双子の秋くんと春ちゃんがいるじゃない?その子の昔の苗字が剛...だったと思うわ」
「成る程、そう言う事か」
桐条が顎に手を当てながらそう言った。