20話、通る電車にご注意下さい2
「うわぁぁぁぁ!!!」
そんな大声を上げわざと自分にヘイトを向かせる多々間川
勿論、そんな大声をスルーできるほどの精神力は今の剛には無く、チッと舌打ちをしながら足に力を入れて前にジャンプするようにギュインと前に行く。
勿論ほぼ無能力者と変わらない多々間川は反応出来るはずもなく
ただ無情に裏拳を肩に決められ、線路へ投げ飛ばされる。
その時の多々間川の表情は笑っており...
剛はいきなり黒い靄に包まれ、多々間川の飛ばされた方向と逆に吹っ飛ばされたのだ。
両者ともに線路に落ちる。
それに剛が落ちた所はさっき鼓矢が落ちた所、その隙を狙って自爆をする___
ことは無かった。
「っ!?」
剛が線路に落ちたと同時に左腕を能力で強化し、右側に寝返りを打つような形で思いっきり殴る。
その拳は電車を殴っていた。
グォォンっ!!
電車が脱線し、反作用で剛は吹き飛ばされホームの上に転がり込むしかし電車はその程度では止まらずそのまま鼓矢は引かれてしまう。
グチャァ!と不快な音を立てる、その瞬間にピロンと言う機械音が鳴り、鼓矢の電脳空間での死を鮮明に伝える。
「ぐっ、任せろ!桐条!あれやるぞ!」
「分かった!」
橋本と桐条が互いに頷き合い、橋本が左手を前に構える。
「はぁぁぁぁ...」
「くそッ!」
剛の方もこちらが何かしようしているのを見てこっちに向かってくる。
「っ!灰の爆発!」
そう叫ぶと左手から超大量の灰が爆発のように飛び出す。
しかしその代償なのか、左手のありとあらゆる場所から血が出でいる、僕のスキルで徐々に止まってきてはいるが、
「んっ!?」
剛は驚き一歩下がる、直ぐに桐条が叫ぶ。
「全員さがれぇ!!」
その直後、
ドガァァァァン!!!
爆発が起こる。
「灰を使った粉塵爆発...成功してよかった、だけどまだ油断はできないッ...」
そう呟いた橋本の声を聞きながら煙が晴れるのを待つ。
するとこには、紫色のHPゲージが半分まで削れた光景だった。
その影響なのか剛の頭からは血が垂れている。
「てめーら、殺す...」
そう言うと、今まで青色だった身体強化系特有の模様が、紫色に変わる。
「こ、この土壇場で能力効果上昇!?」
その誰かわからない叫びは僕ら全員の心情を表していた。
剛は右手の人差し指を紫色で染め、高橋に向けて放つ。
その瞬間暴風が吹き荒れ、高橋の頭が変な方向にメシャッ!と言う嫌な音を出しながら曲がる。
「あっ...」
次の瞬間、僕達は紫色に染まった右腕で吹き飛ばされていた。
試合結果、勝者、Cクラス 剛
【試合が終了したため、電脳空間を削除します】
その音と共に僕らの視界に映るものはまだ見慣れない教室のものだった。
「全員、財布を俺に渡せ、いいな、全部だぞ?」
そんな言葉が僕らの耳に届く。
流石にあそこまで完膚なきまでに打ちのめされ逆らう奴は居ない。
全員が前のボロボロの教卓の上に財布を置く。
「...チッ」
剛は黙って財布の中身を確認すると舌打ちをしながらD棟を去っていった。
僕らは物凄いどんよりとした空気になりながら家に帰る準備をし始めた。
この間、僅か5分である。