12話、花言葉は親切
いやー、うん、はい、すみません
作戦開始と同時にゴミ箱の陰に隠れていた3人から堂理ちゃんだけが道路に出る。
「ふっふっ〜、私はここで〜すよ!」
マンホールに手をつけてそんな気の抜けた声が響き、
「お前...あのクソ男の仲間のアマかぁぁ!!!!死ねええ!!」
「【減速する物者】!」
ギュゥゥゥゥ...2人が目に見えて遅くなる、と言うよりも止まる。
「今ですよ!先輩!」
その僕の掛け声と一緒に先輩と2人でゴミ箱の陰からでて今ものすごく遅くなっている2人の間にあるマンホールに手をつけて毒をマンホールに付与する。
パキッ、
「先輩!毒の付与完了しました!」
「了解!じゃあ...」
先輩はほぼ静止した状態の堂理ちゃんを担ぎ上げ、ダッシュで逃げる。
「そ、それでここからどうするんですか?」
「待つ、と言うよりも帰っていいよ、これでもう奴は術中にはまっている...はず」
自信なさげに下を向き考えながら答える。
パキッ、
パリッ、
ピキッ、
マンホールにどんどん小さなヒビが入っていく音が聞こえる。
「...こんなもんかな?堂理!解除てくれ!」
「..........」
「あれ?」
2人で数秒考えて僕が答えを出す。
「多分意識も減速しているので、先輩の声が超早口に聞こえたのでしょう、だからゆっくりといえば...」
「か〜い〜じょ〜し〜て〜く〜れ〜」
「............」
パッ、
2人の速度がいきなり元に戻る。
相手から見るといきなり狙っていた敵が背後にテレポートして仲間が隣にいるみたいな状況である。
しかし、減速される直後前に進もうとしていたのでマンホールに足を落とす。
コトン、
「チッ、なんにかは知らないが...今の転移はどうやった?」
「ふん、教えると思うかい?」
『ま、まずい、まだマンホールが...』
ピキッ、
「おい、踏み台にさせてもらうぞ!」
そんな真剣な声が聞こえたと同時に両肩に衝撃が走る。
そのせいでバランスを崩し前に少し倒れる。
「ハァッ!」
先輩が真上に飛び上がる。
「ほら!狙ってみろ!」
そう両手足を広げて叫ぶ。
「...チッ!クソガァ!」
ガッ、と相手はマンホールの上で体重を落とし真上に飛び上がる。
事はなかった。
バギィンッ!!
今まで本当に地味なヒビが入ってたマンホールは人1人のジャンプの衝撃にも耐えられないほどにボロボロになっていたのだ。
「なっ...うわぁぁぁ!?」
そのままマンホールの下に落ちていった。
しかしここは2018年ごろと違い、マンホールに人が落ちることも考慮され衝撃吸収装置が下に置いてある。
なので、先輩は持っていた小型冷蔵庫をマンホールの中に落とす。
すると落としてから数秒後、メシャッ!と言う音と同時に短い悲鳴が聞こえてきた。
「それじゃあ、俺はここで別れるな」
「あ〜私も〜ここから左側です〜」
マンホールから少し歩いたところの分かれ道で先輩と堂理ちゃんと別れ、家に向かい歩き始める。
「はぁー、今日は長い1日だったなぁ...」
そう思い歩く。
家の近くの公園を過ぎ、
公園の隣にあるコンビニに寄ろうか迷い、お金がないことを思い出し諦め、
狭い路地裏を抜け、
大量に落書きがされたスーパーの荷物置き場の刺激臭に鼻を塞ぎ、
ほぼ廃墟になった大きめな和風建築の家があり、そこに入る。
そこの表札は、《カスミソウ 孤児院》と書かれていた。
「「「お帰りなさい!栗原おに〜ちゃん!!」」」
「うん、ただいま」
明後日ぐらいになるのでしょうか?