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空想小説シリーズ 巨害獣  作者: インパラ
プロローグ
1/10

悲劇

 1956年8月21日

 東京都 新宿


 沢山の人々が何かから必死で逃げていた。

 ある者は怒りを、ある者は恐怖を、またある者は悲しみを顔に浮かべながら。


 数台の戦車で編成された攻撃隊が人々が逃げる方向とは逆に向かって進軍していた。

 先程から東京中で何度も見かけられた光景だ。


 攻撃隊が向かった先には人々が恐れ、逃げる理由が居た。


 巨大な体躯(たいく)、おおよそ60メートルといったところで2足歩行、尻尾を地面から大きく離してその体をゆっくりと、しかし確実に歩いていた。


 間近でそれと対峙した攻撃隊隊員の本多大介はその姿を見て、本能的な恐怖を感じた。


 その巨大さもさることながら、その生物の色と皮膚の様子が生物の物とは思えなかったからである。


 全身が赤黒くまるで全身が絶えず出血しては瞬時にかさぶたになっていってるような、そんなふうにも見えた。

 そしてその皮膚はまるで全身がケロイドのように隆起し、よく見ればそれらの隆起(りゅうき)一つ一つが(うごめ)きあってその存在が異形な存在である、と認識させられる。


 大介は、つい本能的に呟いていた。

「神の化身だ......」


 攻撃隊の戦車による砲撃が始まった。しかし......


 砲塔(ほうとう)より放たれた砲弾はその生物に着弾する。

 しかし、効いているのか、と聞かれた場合一切の効果が認められないと答えるしか無かった。


 砲弾による攻撃を物ともせず、その生物は歩みを進める。


 戦車が一箇所に集まってくる。そして、次々と攻撃を仕掛ける。

 流石に鬱陶しさを感じたのか、その存在は大きく口を開け、咆哮(ほうこう)をあげる。

 地面が揺れ、人々は恐怖した。

 それは余りにも巨大な音、しかし威嚇というよりかは、あくまでも鬱陶しく思い溜息を吐く、といったような感じであった。


 そして尻尾を地面近くに降ろして胴体を大きく起こし口をもう一度開くと、その口から戦車に向かって多量の熱焔(ねつえん)を放出した。


 それが不運にも一番前にいた数台の戦車に当たると、一瞬にして300メートルを超える大きな火球が発生した。

 それは、正確な温度を測ることはまず困難であったが戦車に乗っていた人や逃げ遅れたり屋内に避難したなどの理由で近くにいた全ての人は、自分がどうなったのか把握することすらできずに瞬く間に火球に飲み込まれ骨すら残さずに消えていった。

 しかし、そこで死ねた人たちはまだ幸運だったと言えよう。


 その後すぐに凄まじい衝撃波が周囲に広がっていった。


 火球から逃れ、原型を保った建物は、その衝撃波によって破壊された。

 もちろん人間が耐えれるわけがなく人々は吹き飛ばされ、ある者は壁などに叩きつけられ、ある者は地面に墜落し、苦しみながら死んでいった。


 衝撃波はおおよそ4km前後まで到達した。


 そして、その中心からは大きな雲......キノコ雲が発生した。


 その様子は、幸いにも衝撃波から逃れた人々にある記憶を思い出させた。


 1945年8月6日および同9日の原爆投下を......


 そして、大都会だったはずの場所の中心にその存在は何事もなかったかのように堂々と存在していた。

 まるで神であるかのように......


 荒野に咆哮が響き渡る。

 それは大きな衝撃波となって瓦礫を吹き飛ばし、地面を大きく揺らした。


 人々はその生物に恐怖し、こう呼んだ。


「ニュークモンストルオ」


 それが東京を去った後に行われた調査では、火球が発生したところを中心に異常な放射線量が観測され、東京にいた特に新宿に近い人ほど、被曝し苦しむこととなる......

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