第5話:大切なもの
サクちゃん視点で、少しシリアスです
あんな事言われた位であんなに動揺すると思っていなかった。
『なんだか最近つまらないんですよねー。あ〜死にたいなぁ』
死にたい…
こんな事言う奴はバカだと思う、冗談でも許せない。
ただ俺もそんな事を考えていた時期があったのも事実だ。
俺みたいな奴は二度と現れなくて良い。
我慢して…我慢して…
俺はどうなってもいいから俺の大切な他人を幸せにしたい。
その俺の自分より大切な他人が『死にたい』と言ったんだぞ?
許せる訳が無いじゃないか!
笑顔がみたいから笑う、悲しい顔が見たくないからケンカを止める。
俺の行動は全て人の為だ。
どっかの本に『自分の事を考えられ無い奴は人から好かれない』とあったがそんなの無理だ。
俺の生きる意味が無くなってしまう…。
俺はちっぽけかもしれない…けれど、俺に他人を1人でも幸せにする力があるのなら、生きてみようと思う。
◇
俺が帰り道を歩いているとき、山本が少しチャラそうな他の学校の奴らと路地裏に入るところが見えた。
山本は結構大人しい性格だからあんな奴らと一緒に居るのはめずらしい、
気になってしまって、後をつけて見ると、案の定、楽しみ目的か何だか知らないけど、チャラい奴らに山本が殴られようとしている所だった。
俺は頭の中が真っ白になって気づいたら、殴ろうとした奴をぶん殴っていた。
相手は5人
1対1では負けないと思うが、この人数じゃ無理だ、一斉にたこ殴りにされる。
「逃げろっ!!!」
それでも山本だけは守りたくて絶対に触らせなかった。
…
何分たったか分からないけど、意識が無くなりそうになっていたとき、俺の卓球部のみんなが20人位現れた、
あのバカ!なんで警察を呼ばなかったんだ!
とか、多分、見当違いな事を思っていて
少し俺によって手傷を負っていたチャラい奴らは、人数にビビったのか、そそくさと退散していった。
◇
「おい、大丈夫か?」
広樹が俺に手を差し伸べる。
俺はその手をとらずに立ち上がる。
体中から痛みが込み上げるが、この手を取る訳にはいかない。
俺は絶対にこの優しいコイツらを絶対に傷付けさせない…。
そう決意し、全員を無視して、家に向かう。
チャラい奴らの顔だって学校だって覚えている。
顔だけは守ったので、あまりケガはヒドくないと思ったのか、無理やり病院に連れてくような奴は居ない。
それどころか
「せっかく助けてやったのに」と言っている奴もいる。
けれど、予定通り、それで良い…。
俺みたいな奴は、俺だけで充分だ。
……つづく