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第3話:優しさの塊


作山先輩は優しい…。

って言うか自分ではそう見せてないつもりかもしんないけど、優しさが滲み出ている。




帰りの電車で4人位で座って談笑していた時なんかは、


「あはは、あー面白れぇ…。


やべぇ、ちょっと今立ってみたいな気分だわ」


とか言って立ち上がり

みんなで「なんだよそれー!」とか言って笑っている


ふと、周りを見てみると赤ちゃんを抱えたお母さんがドアから入って来たところで、

座席は埋まって居たけど、タイミング良く立ち上がったおかげで作山先輩の居たところに難なく座れている。

そして当の立った本人は、


「ははは、マジかよ〜!」


とか言って談笑していた。


まぁその時は、たまたまだろうなとか思っていた、

そして、ある程度経った頃


「ちょっと広樹立て!」


といきなり坂籐先輩に声をかけた


「なんだよそれ?」


「今から女の子口説くのにお前がそこに居ると邪魔で口説けないんだよ!」


少し考えた後、坂籐先輩は納得した顔になり笑って「ああ」とか言って立ち上がったけど、俺には何の事だか全くわからない。


そして作山先輩を観察していると、


「お嬢さん、お荷物をお持ちしましょうか?」


と、もう還暦は越えているだろう腰の曲がったお婆さんに声をかけていた。


「ふふ、大丈夫ですよ。」


「ああ、こんな素敵な女性の荷物が持てないなんて!せめてお座りになった姿を見せて下さい!」



「じゃあお言葉に甘えさせて頂きますね。ありがとう」


その後も「どこで降りるんですか?」とか言って、俺が自分の駅に降りる時までは話し続けていた。

二人とも終始笑顔だったのが印象に残っている。




そういえば、こんな事もあった。


俺が傘を忘れて困っていた時、


「山本、お前傘忘れたのか〜?」


「あ、はぃ…」


「そっかぁ!ちょうど良かった!この傘余ってたんだよ、誰にも使われなくて可哀想とか思ってて、これでこの傘もちゃんと役目果たせるな!」


と、笑顔で渡される。

「ありがとうございます!」


その時は良く考えないで受け取っちゃったんだけど、それが間違いだった。



…次の日



授業が終わり貸して貰った傘を持ち卓球部の部室まで行くと、マンガを読んでいる坂籐先輩がいた。

「おぅ!」

「こんにちは!あ、今日作山先輩来ますか?」


「来るんじゃね?どうして?」


「いやぁ、昨日借りた傘を返そうかと思って…」


ばっ、と驚いた顔をしてこっちを向き、傘を見て、そしてまたマンガに目線を戻すと、笑いながら、


「あいつバカだな」

と言った。

どうしてか分からなくて意味を聞くと


「サクに言わないなら教えてやる」


と言われ何度も頷いた。




「あいつさ昨日俺が『傘は?』って聞いたら『今日は濡れて帰る日!』とか笑って言うんだぜ!普通に忘れたのかと思ってたわ。」



全然分からなかった。

今すぐ会いに行って、すごく謝りたいけど坂籐先輩に念を刺されてしまった



「サクに言うなっていう約束守れよ、ありがとうって言っときゃアイツは一番喜ぶんだ。」




作山先輩が来たときは、精いっぱい気持ちを込めて「ありがとうございました!」と言おうと決めた。




「サクってさ優しいだろ?」


いきなり坂籐先輩に声をかけられた。


「はい!」


俺は正直に答える


「サクの優しさってな、自分を大切にしない優しさなんだよ。」




何となく分かる気がする。



「でな、自分一人で頑張って、人の優しさを受け入れないんだ。

人に頼った所なんて見たことが無い」



そう言われてみれば、そうかもしれない。



「だからな、時々で良いから助けてあげてやって」



俺は、首を縦に振った。



「ありがとう」



その言葉が、本当に作山先輩の事を思って言っている事が分かって、坂籐先輩も優しい人なんだなと肌で感じた。




その後は部員がぞろぞろやって来て、俺と坂籐先輩の話も終わり、傘を返して、その日は可もなく不可もなく終わったが、少し作山先輩の事が分かったような気がした1日だった。







…つづく

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