第1話:部活紹介
俺は今年から高校生になる…。
今は高校の入学式で、温暖化のせいか、もう緑になってしまった桜を窓から見ながら、お決まりの事しか言わない、長ったらしい校長先生の話を聞いている。
いや、左から右に聞き流してると言った方が正確か…。
ぼんやりしていると、どうやら入学式が終わったらしい。
前にいる俺の担任になったっぽい人が、なんか指示をだしている。
あいうえお順で並んでいるので、山本昭人である俺は後ろの方にいて全く聞こえない
俺のクラスが動きだしたので、みんなに便乗し立ち上がる。
そして俺のクラスである一年一組についた。
その後、先生が諸注意などを色々話してから、
「このあと部活紹介があるから見ていくと良い」と言いクラスを出ていった。
俺は帰ろうかな、とも思ったが周りが誰も動かないので、まぁ良いか、と思って見ていくことにした。
「野球部でーす!」とか言って素振りを始めたり。
「合唱部でーす!」とか言って歌い出したり。
他のところも印象の濃いものはあまり無かった、まぁ合唱部は結構上手くて感動したが、あのアカペラってヤツ?
でも、まぁその程度だ。
最後の方になってきてみんな飽きてきたころ、そいつらはやって来た…。
一応クラスのドアを空けて
「おぃ、お前行けよ」
「やだよ、お前が行け」
とか言って譲り合っている。
ハッキリ言って
「何こいつらキモッ!!」と本気で思った。
結局二人で入って来て、真ん中まで来ずに、はじっこの方で「卓球部です…。」とか、言っている。
さすが、卓球部だなとか思っていると、タタタ…、とでっかい旗を持って廊下を走っている人影が見えた。
そして一年一組の開いているドアから、思いっきり「とうあっ!」とか言って、ジャンプして先に居た二人の前に降り立った。
旗にはでっかく『来たれっ!卓球部っ!』の文字が、
「こんっにちわーっ!! 卓球部部長のサクちゃんですっ!」
…みんな唖然としている。もちろん俺もである。
さっきから居た連中と、
「お前の担当はここじゃねぇだろ?」
「良いじゃん×2、お手伝いだよ、お・て・つ・だ・い」
なんて話してる…。最初に居た連中は頭を抱えている。
サクちゃんがこちらを向いた
「では×2、皆さんに質問があります!この中で、俺私、中学の頃卓球やってましたよ〜とか言う人」
「ハイッ!」とかいってサクちゃんは右手を高く上げている。
…
…俺のクラスは誰も手を挙げない。
これは予想通りだったのかサクちゃんは続けた。
「では×2この中で卓球に遊びでも良いから触れたことがある人」
また「ハイッ!」とかいって手を上げている。
…
…また誰も手を挙げない
ちょっと焦った感じになってサクちゃんは続けた。
「じゃ、じゃあ、卓球を知っている人」
「ハイッ!」
…
誰も手を挙げなかった。
サクちゃんはちょっと涙目になって言った
「うそ×2有り得ないって卓球って日本人の99.999…%は知ってるよ! 手ぇ上げてよ!俺、無視されてるみたいじゃん悲しい!悲しすぎる!」
みたいじゃなくてされてんだよ、って思ったけど言う訳がない
周りを見てみると、2、3人の親切な子が遠慮がちに手を挙げていた。
サクちゃんはパァーっと向日葵みたいな明るい笑顔になって
「その今上げてる子! 最高っ!愛してるっ!」
「では×2、今上げた子も上げて無い子も卓球部は大歓迎ですっ!! 女の子でも初心者でも大歓迎!特に女の子っ! 入ってっ! 我が部活に花が欲しいんだっ!」
男しか居ないのか…。
「我ら卓球部は、永遠に不滅だーっ!」
とか、訳の分からん事を言って、サクちゃんは走って教室を出ようとしたが、何も無いところで「へぶっ!」とか言って豪快に転んでいた。
…
直感的にこの部活には誰も入らないだろうなと思った…。
…つづく