幼なじみ
それは、本当に突然やってくる。
幼なじみだとか、くされ縁とか呼び方はたくさんあるけれど、私の中に恋愛の二文字にはならないと思っていた。
家に帰る途中で見た幼なじみの仁の横には、かわいく笑う女性がいて、お似合いデスネー。なんて、からかえると思ってた。
二人は、私に気づく様子もなく家へと入っていく。
私は、立ちつくし、足の下から冷えていくような、血液が逆流するような…
二人が家に入っていくのを見届けると私は我にかえり慌てて家へ入り、自分の部屋へかけあがるとベットに突っ伏した。
なんだこれ…
なんだこれ!
あんなの見てから自覚した自分の気持ちが情けなくて、私の頬を一筋滴が流れた。
コンコン。
ドアを、ノックする音で目覚める。
どうやら寝てしまったようです。
「ゆうな、仁くん来てるわよ。私、ちょっと買い物行ってくるし頼むわね。」
…母は、警戒心がないと思う。年頃の娘と男を置いて出掛けるとか。まあ、私たちに何かあるのはないと思ってるのかもしれない。
階段を降りると、ソファーに座る仁がいた。
?何か緊張してる?
一瞬そう思ったが、その気持ちはすぐ消えた。
「どうしたの?」
「数学のノート借りようと思って。ゆうな、もって帰ってきてる?」
「ちょっと待ってて。取ってくる。」
ノートを借りに来るのはよくあることで、私は、部屋へと取りに行く。
部屋でノートを探していると、後でパタンと扉がしまる音がした。
振り替えると、仁が立っている。
私は、動けず仁を見る。何か言わなくちゃ。
声は、でない。ただ、引き付けられるように仁をみている。仁は、私を抱き締めてゆっくりと唇を重ねた。
あたたかい熱が口の中を蹂躙する。
気持ちいいと感じてしまうと同時、さっきの女性の姿を思いだしとっさに体を離した。
「っ…やっ!」
「なんで、なんでこんなことするの?!」
「何でって…ゆうながの事が好きだからだよ‼」
間一髪入れずすぐに返答が返ってくる。
「うそだ。」
「嘘じゃない。」
ボソッと呟いた私の声に、静かに仁は言葉を返してきた。
「だって、私、みたもん。綺麗なひとと、家にはいっていくの。」
あーと、仁は決まり悪そうに横を向いた。
「彼女は、委員会が一緒だから企画で寄って行ってもらっただけだ。…まあ、付き合ってほしいとは言われたけど…」
「上膳据膳じゃないの…」
やや不機嫌そうにいうと仁は苦笑する。
「彼女には、感謝してるよ。ゆうなが、好きだってわかったから。」
優しく笑うとおいでと言うようにてを広げる。
同じような時に同じように自覚した私たちは案外お似合いなのかも。
そんなことを、考えながらその手をとった。