生きる意味
わからない。
何故、私は生きているのか。
何ができるわけでもない。
一般ほどできることなど、何一つない。
代わりなど、いくらでも居る。
私でなくても良いのだ。
私でなければならない必要など、ないに等しい。
彷徨い歩き幾星霜。
標などなく、ただ歩く。
探す答は見当たらない。
一面は白の世界。
その中で、私だけが、黒。
染まらない、染まれない。
白い布の、一点だけの、黒い――
黒いコートを纏う人を見つけた。
啜り泣く声が聞こえた。
フードを取り声をかけると、彼は、笑って振り向いた。
隠そうとしているのだろう。
だが、干からびた筋が頬に残っている。
笑顔が眩しいのが、痛々しい。
そっと、横に座る。
大丈夫だと微笑んでいるが、眉尻が下がっている。
声が震えている。
だが、私は何も言わない。
ただ、座る。
雨が降る。
雪が降る。
風が吹く。
微笑む彼の横で、私は、ただ座る。
時が過ぎる。
長い長い時が。
何をするわけでもない。
彼は、笑わない私をなんとか笑わそうとする。
無理をして、笑ってまで。
それに私は、静かに雫を伝わせる。
何故泣くのかと彼は聞く。
首を傾げる彼にどう答えるべきか、ない頭を働かせる。
何故、傍に居るのか。
理由は、何だ。
何もない。
ただ、傍に居たいだけ。
ひとつ、見つけることができた。
生きる意味を。
白に染まるためではない。
心を開いてもらうためではない。
ただ、傍に居る。
君が、泣ける時に泣けるために。
本当に大丈夫になる時まで、ずっと、ずっと。
傍に居続ける。
それが、私の生きる意味。