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暗殺者と少女A

初めて小説を書きます。素人なので温かい眼で読んでくれると嬉しいです。

月の光も弱々しく、まだ辺りがぼんやりしているころに俺は宿を出た。

三十分くらいだろうか。

しばらく街道を歩いていると。

この時間には珍しい人影を見つけた。


「あいつか」


かすかにつぶやいた。

あいつがこの時間に交渉しに行くことは裏がとれていた。

俺は近くの屋台の影に身を隠すと、懐から手配書の束をとりだしジッとそいつの顔を遠くから見た。


「間違いないな」


確認し、俺はいつも通りになにげなくそいつのもとへと歩いていく。

ただ、足跡を限りなく殺して。

背後にまで近づくと、腰にさげていた愛用の短剣でそいつの喉元を音もなく切り裂いた。

人形のように崩れ落ちるそいつを河に投げ捨てて、持っていた手配書の内一枚に×をつける。


「今月で何人目だろう」


ため息をつきながらその場を歩き去る。

月にかかっていた雲が風で流れいくらか明るくなってきたころ、俺はこの街をでた。





気がつくと村のベンチで寝ていた。

まだ桜の花が芽吹く前、冬の冷気が抜けきれてないので外は凍えるほどに寒い。

だが、この生活もあと一人でおさらばできる。

あと一人で、あと一人で自由に...。

そんな胸の高鳴りを静かに抑え込めて目的の人物のところまで歩くことにした。


その人物は人気の無い路地に無防備にも突っ立っていた。

年は俺よりひとつ下の15才くらいだろうか。

そいつは小柄で黒いつばの広い帽子をかぶり、先端にきれいな緑色の宝石がはめこまれている杖をもっている少女だった。

コスプレかなんかか?

いずれにしても俺は任務をこなすだけだ。

心が痛まないわけでは無いが、慣れというものは怖いものだ。ひどく落ち着いている。

いつもどおりに気配を殺し少女のすぐ後ろまで来た。

高まる鼓動を落ち着かせ腰の短剣に手をかける。

つらいだろうが、せめて痛くないように一瞬で終わらせてやる。

抜いた短剣が少女の首に触れようとしたその瞬間。


「テレポート!!」


少女が発した言葉によりでた白く淡い光に包まれた。

驚く暇もなく俺と少女はその場から姿を消した。





「起きてください。大丈夫ですか?」


そんな声が耳元で聞こえてきた。

起きようと思ったが、なんだろう体がすごくだるい。

それになんだか頭がクラクラする。


「ちょっと起きてください。ていうか今一瞬起きましたよね?」


わかりました起きるので揺らさないでください。

あきらめて目を開けるとそこには、先ほどの少女が俺の顔を至近距離でのぞきこんでいた。


「夢か」


夢の中で寝ればいずれ目覚めると誰かに聞いたことがあるので三度目の眠りに入ることにした。


「いいかげんにしろー!」


思い切り腹にエルボーをくらわされ、今度は本当に目覚める。


「なんなんですか。人がせっかく起こしてあげてるのに無視ですか。私ここまで自覚ありながらスルーされたの初めてですよ」

「そんなこと言われても…。まず、状況がさっぱりなんだが」


なんだろうこの少女はつい最近見たことあるような。


「あなたは、私がテレポートしたときに一緒に巻き込まれたようですね」

「テレポートだと。テレポートといえば瞬間移動するあれか。」

「そうですけど。なんだか知らないような言い方ですね。」


少女は訝しげに俺の顔を覗きこんだ。


「少し怪しいですが大方、転移したときにどこかにぶつけて少し記憶が飛んだのでしょう。大丈夫です、よくあることです。」


よくあっちゃだめだろ。

でもこの子の言う通りあまり記憶が定かではない。

自分の名前や出身などはわかるが、自分が今まで何をしていたのか覚えていない。

ぽっかりと穴が空いたような気分だ。

まるで、嫌な記憶だけを奪い去ったような。

思い出はそのようにおぼろげなのだが、今まで培ってきた知識はそのままのようだ。

記憶というものは知識とエピソードと別々にインプットされていると聴いたことがあるのだが本当だったんだな。

それにしてもテレポートって魔法の一種だよな。

ちょっと信じられないな、もしやこの子は噂に聞く厨ニというものなのかもしれない。

そろそろ意識がはっきりしてきて周りが見えるようになってきた。

そこは街の広場のベンチでまだ辺りは薄暗いが少しだけ出てきた太陽の光でかろうじて見渡せた。

どこか洋風というかファンタジーチックというか俺が住んでいた国には見られない、まるでお伽噺の魔法の国のような街並みをしている。

特にあの奥にある白い王族でも住んでそうな城には一際目がいく。

それに、先ほどから俺の腰に提げている短剣をずっと見ている少女はよく視るときめ細やかな肌をしており、黒い髪を肩まで伸ばした美人だった。

これで厨ニじゃなかったらグッドなのだが。


「そこの残念少女Aここの説明を百文字以内で説明せよ」

「誰が残念少女Aですか。私のどこに残念要素があるんですか。それに私の名前はアルルです覚えておいてください」


アルルは俺のことをジッとにらみながら


「そうですね、希望通り簡単に説明すると」


立ち上がり、そびえ立つ城をみつめて。


「ここは、魔法都市クエス=アリス。王を君主として栄えた、魔法を扱おうとするものは必ずここを訪れ学びに来るという。まさに魔法使いにとっての始まりの街です」


なんか大層な都市みたいだな。

こいつが本当に魔法使いだろうが年中ハロウィン気分のバカだろうがこの国が魔法都市だろうがそんなの関係ない、めんどくさそうだ。

病院にも行きたいし帰ろうと心に決めた。


「そうか勘だがここでお前は魔法を習うと言い出すのだろう。だが、俺には関係ない早く元いた場所に帰してくれ」

「いや、無理ですよテレポートはさっきので使い切りました」

「は?お前仮にも自称魔法使いだろうだったら魔力を回復してテレポートの一つや二つ簡単に使えるだろう」

「おい私は自称じゃなく本物の魔法使いだ。さっきから人をちょくちょくバカにするのはやめてもらおうか」


アルルは懐から無色透明な宝石としては輝きが限りなく無い結晶を取り出した。


「私は魔法使いといえどまだ駆け出しなので、テレポートは使えないのです。代わりにこのテレポストーンという一個で一回テレポートができる便利アイテムによって魔法を使うことができたんです」


輝きを失ったその石を投げ捨ててポケットから同じものを取り出した。


「念のためにとこうして予備にもう一個渡されたのですがどうやらあなたを連れてきてしまった場所に間違えて行ってしまい、もう在庫がありません」


アルルは手に持っているテレポストーンを俺の顔面目掛けて投げつけてきた。

恨みの矛先が理不尽。


「じゃあその石をまた買うなり作るなりすればいいんじゃないのか?」

「なに言ってんですか!これは作るとなると鍛治スキルを全て修めたものが三日三晩打ち続けてやっと二つが限度なんです。買うにも一つ百万はくだらないですよ」


百万…、こんな石っころに。

なにそのすごいのやら使いづらいのやらよくわからないアイテム。


「お前はなんでそんなの持ってたんだよ。まさか人に言えないような夜の仕事で稼いだお金で買ったのか。つらかったなほら、アメあげるよ」

「違いますよ!変な妄想しないでください」


アルルは頬を染めながら殴りかかろうとしてくる。


「この石は村を出るときに母親からお祝いで貰ったんです。いったいどこから持ってきたんだかわかんないんですけどね」


娘のお祝いで奮発でもしたんだろうか。


「じゃあ今の当面の目標は資金集めか。どうしたものかな」


俺が思案しているとアルルが思いついたような言ってきた。


「私に考えがあります。そろそろ開くと思うのでついて来て下さい」

「どこに行くんだ?」

「私がこの街に来た目的の場所です」


フフッと笑い追い風を背に受け歩きだした。



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