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灰色魔法少女のmemorial  作者: 紗南宮夕月
8/16

その運命は何処へ向かう

長らくお待たせいたしました!

久々更新です。

運命というのはなかなか残酷で一生の苦しみから解放されてそのまま幸せなんてありえない。


ピチピチ


大きなベットの上なかなか寝付けなくて苦労した。

なんせ今までずっと藁や地べたで寝るのが当たり前だったのだから…

綺麗な服まで用意され、なに不自由ない生活


・・・


結局来なければいいと思った朝は無情にも訪れ、マスターの部屋へと向かう。


これほどまでによくしてくださったのにお礼が返せないのは嫌だった。

また、捨てられるかもしれなくって―

同じいつ死ぬかわからない命ならせめて良いほうに向けば最後くらい報われるかもしれない。


「わっとっと!」

「!」


誰かとぶつかって後ろにこけてしまう。


「あぁ、ごめんなさい‼大丈夫?」


すっと差し出された手に手を伸ばしかけて…反射的に手を引っ込める。


「いえ、、、私こそ申し訳ありません」


相手の視線から背き、壁を支えに立ち上がる。


ドクン


相手は一言も返さない。


ドクン


差し出された手を静かに下げ、足元がこちらを向く。


ドクン


あぁ、どうしよう。怒らせたかな…

相手がふいに手を伸ばしてきて―

ギュッと目を瞑る


ごめんな―


「貴女とても綺麗ね」

「ふぇ?」


突然の言葉に前を向く。

前髪を手であげられ、すぐ近くに満面の笑みをむける彼女がいた。

麦色のそばかすが元気いっぱいなイメージを与える使用人


「前髪がこんなに長いと不便でしょう?」

「…」

「うーん、せっかくだから今から切りましょう?マスターのもとに行くならちゃんとした格好でいかなくちゃね!」



「どうして、マスターのところに行くことを知っているのですか?」


彼女は私の手を取ってマスターの部屋と逆の方向に進む。


「同じだからかな~えへへ」


そう言って彼女はもう一度笑った。


「えっ?それって‥‥」

「たぶんだけど、貴女も元奴隷だったんでしょう?」


前をまっすぐ見据えた彼女


「あっ‥‥」


握られた手が熱を帯びる。


「私も同じ。マスターに助けられて魔法少女にならないかって言われたの。

・・・でも私は死にたくなくてメイドとして働かせていただいているの」


・・・

私以外の同じ人

小さな部屋で椅子に座り(はさみ)を持った彼女は「目を瞑ってね」と言ってパラパラと髪を切りそろえてくれる。


パラパラ、パラパラ


まるで今までのつらかったことが、重みがゆっくりと解かれていく。


「できたよ!」


前髪がなくなり、視界が開ける。


「ありがとうございます」

「ねぇ、貴女はどうするの?」

「私は―」


彼女の言うことも分かる。

だけど‥‥


「私は、私は人はいつか死んでしまいます。それなら、どちらも変わらない人生ならばせめて救われた恩を返したいんです。だから―」

「そっか。貴女は強いのね~」


少し寂しそうにそれでいてどこか眩しそうに目を細める。


「頑張ってね!ああそうだ、私はニュラルっていうの」

「私は‥真白って言います」


差し出された手に手を伸ばし、今度はちゃんと握り返す。

同じ境遇の友人(知り合い)が初めてできた。


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