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灰色魔法少女のmemorial  作者: 紗南宮夕月
13/16

その運命は何処へ向かう,6

お読みくださりありがとうございます

まだ静かな庭で真白はネルビネに挨拶をされた。日がようやく上り始め暖かで眩しい陽光が差し込み、顔を洗う井戸水がキラキラと光る。


「私が魔法少女防戦大会に出場するんですか?」

「えぇ。いつまでもここに居ては何も始まらないですから。それに貴女のペアントから聞いてない?」

「え?あっ、聞きました…」


そう言えば昨日いきなり「近々仕事をする」って言ってきたのはこれだったんだ。もう少し説明して欲しいよ、クロ


「とりあえず三日後にはバネリオナ国に行ってもらわなくてはなりません」

「分かりました」


これが私の初めての魔法少女としてのお仕事‥

あれ?でも私―


「あ、あの!」


ネルビネさんが「どうかしましたか?」と優しく尋ねてくれる。


「私、今まで生きていくのに必要な勉強とか体力づくりしかしていないから…どうやって魔法少女になるんですか?」


そもそもクロは日中どこかにいっているし、魔法少女ってこのままの姿とか‥‥ありえないし

一般的なペアントはこちら側では動物の姿をしているらしい(クロは例外的に人間の姿になれるらしい…本人曰く)


「それなら心配いらねえよ」

「クロ!」

「当日になれば俺が教えながら戦うんだ。お前はただ言われたと通りになれるまではやっていけばいい」


真っ黒な髪をガシガシとかきながら一言そう言って欠伸を一つつく。

ネルビネさんはあまりよく思っていないのかクロに向けてキッとにらむがクロはお構いなしだ。

でも私はクロの言葉で安心できる。

だから―


「うん!頼りにしてるねクロ」


笑ってそういえばネルビネさんにはため息をつかれた。クロは呆れた風にこちらを見た後またどこかへ行ってしまった。


 ?

私なんか変なこと言ったのかな?


それでも2週間後、、それが私のはじめての魔法少女としての戦いであり、真白としての自由の一歩そう考えると握った手に爪がたつ。

白い肌にくい込んだ爪が赤い痕を残す。それは恐怖と決意の証

純粋な少女はまだ知らない。魔法少女がいかに過酷な運命なのかを…

運命の歯車はカチリと音を鳴らして回り出す―





12日後


「さて、真白準備は出来たかい?」


服を2着分、マッチやタオル、15デルタ入った小袋、水筒・・・それらを詰め込んだリュックを背負った小さな背中から流れ落ちる銀髪が風にのって靡く。


「はい!マスター準備出来ました」


明るく笑う彼女は少し前まで人を怖がっていたとは思えない程普通の少女だった。

そんな彼女を残酷な運命に誘い込んだ自分の良心がズキリと傷んだ。だが、それはほんの一瞬

これから何度もあるであろうこの罪悪感にもそろそろ慣れなくてはいけない。せめて悟られないようにと外面の笑みを向ける。


「バネリオナに着いたら宿をとって休むんだよ」

「はい、マスターありがとうございます」

「!」


真白はほんの少しだけ頬を染めながら嬉しそうにはにかむ。


「私を自由の身にして下さってありがとうございます」


ぺこりとお辞儀をした真白に何故か泣きたくなった。伸ばした手が…喉から出かける声が…形をなそうとして・・・


「おい真白さっさと乗れよ」


苛立ちが込められた少し低い声によって遮られた。

黒髪の青年は気だるげに見つめながらも僕を見つめる…というか睨んでいる。おそらく彼は気づいたのだろう僕が彼女に「行くな」と言ってしまいそうになったことを—


「-っ」

「今行くよ!それではマスター、ネルビネさん行ってまいります」


彼女は陽の光を受けて輝くような笑みを浮かべて馬車へと乗り込む。あの日の姉さんの姿とどこか似通っていて…‥


ばっ


真白の手を握って焦る声音でその瞳を窺うように見つめながら伝える。これが僕が彼女にできるせめてもの行い。それでいてただの僕のエゴでしかないが、、


「向こうについてもその先でも定期的に手紙をよこしなさい。必ず助けになるから」


一瞬驚いた表情をしたが真白は嬉しそうに微笑み「ありがとうございます」そう言って今度こそ馬車に乗り込んだ。

2人を乗せた馬車は砂埃を巻き上げながらバネリオナ国へと出発する。

晴天の中遠くで鳥が二匹自由に羽ばたいていた。


10月の更新が出来なかったので11月は更新になります。

お待たせしてしまって申し訳ないです。



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