悪役令嬢の魂が純粋なヒロインの中に入ったんだけど、悪役魂と主人公補正がせめぎ合ってる【2】
つづき書いてみました
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わたくし、前世をリリアナ。今世は春花と言いましてよ。
ところで、どうやらわたくしは元々ギャルゲーの世界の人間だったようですの!
この、学園一の美貌とうたわれ!女王と呼ばれ! 取り巻きどもを侍らせていたわたくしが所詮はプログラムですって!?
しかもこんな! 数十年前のハードにビット数も貧弱なポリゴン絵ですって!?
パッケージの絵と実際が一致していませんわ!
そんなことよりも今日は、わたくしの幼馴染の青年……伊織と出会った時の話をしてさしあげますわ!
ホーホッホ! およしになって! 傅いて例をとっていただかなくても結構ですわ!
あれは、3歳の頃、わたくしがこの前世の記憶に目覚めた時ですわ。
きっと、両親もびっくりしましたでしょうねぇ、今まで謙虚、堅実な娘が高飛車になったんですものねぇ。
で、その時から、わたくしの悲劇は始まったのですわ!
「あら、お母様。紅茶の葉が混ざりきっておりませんわよ? 粗末なものを使うと、心まで貧しくなってしまいますわ」
「は……春花ちゃん、パパは中堅職人の肉体労働者で、ママも都会に憧れて田舎から出てきたと思ったら、あっという間にバブルが崩壊した普通の家庭よ? お茶っ葉はお中元以外はトップバリュで十分なのよ?」
「はっはっは! いいじゃないか! 秋葉! 最近おれも春花のお姫様プリにようやく慣れてきたんだ!」
フツメン以上、イケメン以下のお父様が豪快に笑いますわ。
前世での傭兵にそっくり。でも、わたくし、今の家族のことは、前世の家族よりも家族と思っていましてよ!
家族らしい家族、というか、前世にはなかったアットホームな雰囲気があって、とっても暖かいのですの。
この家族がいれば、庶民の粗茶なんて、なんでもありませんわ!
「ん? おーい、春花! お向かいの伊織くんが遊びに来たぞ?」
「はーるーかー! あーそーぼー!」
なんですって!?
「いないと言ってちょうだい!!」
「はーい、こんにちは」
おもむろに扉を開くお母様。
って、お母様っっっ!?
そして、扉ををくぐって現れたのは!
「よっ! はるか! きょうもあそぼーぜ! 結婚式ごっこと、おままごと!」
もう、そこには花も恥じらうばかりのかんばせを綻ばせ、わたくしに無茶難題を言ってくる美ショタがいたのですわ!
ちょ、おま、結婚って。
「冗談じゃありませんわ! 貴方とは遊びたくありませんもの! 帰ってくださいまし!」
こんな将来有望な美ショタと遊ぶのなら、ペットのウーパールーパーに餌を食べさせたほうがマシですわ! 可愛くってよ、サラマンドラ。
と、言い放って、ちらっと、伊織のほうを向いたら……
「………………ひっく! はるかはっ、おれのことっ! 嫌いになっぢゃっだの??」
半べそをかいて、鼻水垂らす美ショタがおりましたのよ。
こんなみっともない顔をしても、麗しさにちっとも陰りはありませんのよ。ぱないですわ。
「ヒック……ごめんね! オレ! なおずがら! はるがが、やな所! なおずがら!」
さすがに……罪悪感を覚えますわね、これ。
裾を握って、顔ぐしょぐしょにして、泣いてるショタなんて、わたくしの中では需要はありませんでしてよ。
「……おにごっこなら、やってあげてもよろしくてよ」
わたくしは見るに堪えず、そっぽを向きながら、申し上げましたの。
……すると。
「ありがどう!」
いきなり抱きつかれましたわ。
相変わらず、ぐしょぐしょでも、秀麗美貌は変わらずに、抱きつかれましたの。
ああ、絆されそうで怖いですわ。