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「ねぇ君の名前は?」

「………………」

「村はもうすぐ着くの?」

「………………」

「お腹空いたね?」

「………………」

「ポッキー食べる?」

「!!!!!!」


俺が少女の前に出したポッキーが一瞬にして消えた。やはり子どもを釣るのはお菓子が一番なのだろう。

もっとくれという眼差しを向ける女の子に、今度はビスケットをちらつかせる。

「名前言ってくれたらあげるよ?」

「名前……クレア。」

女の子はボソッと答えた。

「そっかクレアちゃんって言うんだ。じゃあこれあげる。」


そう言って差し出した俺のビスケットをクレアは目を輝かせて食べ始めた。

「先輩、誘拐する前のおじさんにしか見えないんですけど。」

「ハハハ、よく言われるー。」


誰も俺のことを小さい子には優しいなどとは思わなかった。まぁ今に始まった話じゃないんだが。

「それよりここどこだろな?彩香、見覚えないのか?」

「あったら最初にビビってませんよ!でもこんだけ広いと歩くのも疲れますね。」

確かに、さっきから歩いてばっかだ。そろそろ何か見えてもいいと思うんだが。


「ビスケットのお兄ちゃん、あれが私の村だよ。」

ポッキーは一瞬だったから忘れたのかと思ったが、クレアの指差す方を見ると、なかなか大きい村があった。

「とりあえずこの子の親の所にでも言って話を聞いてもらうか。」




村に着いた後俺は村に違和感を持った。家の数の割に子どもの数が多すぎる。あっちにもこっちにも子どもだらけだった。

キョロキョロあたりを見渡しているといつの間にか家に着いたみたいだ。クレアがドアを開けると母親らしき人物が出てきた。この母親もまた金髪で赤い瞳をしており、クレアと親子ということがわかる。歳もまだ若そうだ。


「あらクレア?どこ行ってたの?あれ?お友達連れてきたの?ママ何も準備してないのにー。」


この幼稚な話し方は少し気になったがあえてスルーする。

「突然すみません、少しお話したいことがあるのですがよろしいですか?」

俺は知らない場所ということもあって丁寧に尋ねた。もしここで断られたら宛がなくなるしな。

幸いクレアの母は愛想よく俺たちを迎えてくれた。


「突然お邪魔してすみません。実は道に迷ってたところをクレアちゃんに助けてもらいまして。しばらくこの村に泊めていただきたいのですが。」

母親がクレアのほうを見るとコクリと頷く。どうやら芝居は得意のようだ。

「そうでしたか。それは災難でしたね。しばらくこの村で休んでいってください。」

よし!我ながら上出来だ。とりあえず怪しまれないように、この村からいろいろ情報を聞き出さねば。

「あの、この村って子どもの数が多いような気がするんですけど。」

そう思った矢先、俺が口を開く前に彩香が口を開いた。「私たち、多分違う世界から来ちゃったんです!」とか言わなくてほっとしたが、反対にクレアの母親は顔を俯かせた。


「おっしゃる通り、この村……この国は子どもの数が多いのです。もともと経済的に安定していなかったこの国は、その結果さらに不安定になっているんです。この村はまだましな方なのですが、隣の村は一日の食事にも困っているらしくて……」


そこまで言うと母親は突然泣き出した。心の優しい人なのだろう。見た所この家の子はクレアだけのようだ。

「わかりました。この村に少し居させてもらう代わりに、私たちが解決策を見つけます!」

俺の隣で彩香が何やらバカなことを言ったような気がする、いや言った。

こいつは多分今の状況を完全に理解していない。俺たちはあくまで高校生だが、多分こいつは異世界からきたヒーローかなんかと勘違いしているのか。てかここが異世界かどうかも怪しいが。

「陸は生徒会長ですから大丈夫です!」

また余計なこと言っちゃったよこいつ。てか呼び捨てだった気がするのだが?


「生徒会長が何かはイマイチわからないのですが、なんか凄そうですね!よろしくお願いします!」

さっきまで泣いていた母親が目を輝かせて俺の手を取る。ここまで来て「嘘でした。」なんて言えるわけもなく

「任せてください!」と言うしかできなかった俺。これが夢であることを祈るしかないな。

………………………………


「おいアホ副会長。何言ってんだよお前。」

村の様子を見たいということで家の外に出た俺は彩香の頭を押さえつける。

「だ、だってほっとけないじゃないですか!私たちがなんとかしなきゃ……」

「そこだよそこ!なんで「たち」なわけ?」

「生徒会長じゃないですか!」

こいつは俺が「ここは学校じゃねぇ!」とでも言うのを期待しているのか、それともただのアホか。

まぁ言ってしまった以上、少しは役に立たないとな。


「それにしてもホントに多いな。家の数の三倍は軽くいるんじゃないか?」

「一見普通に見えますが、村の財政からすると、いつか隣の村みたいに破綻しちゃいますね。」

この状況を高校生の俺たちがどう救えと言うのだろうか。……いや、そういう専門的なことを調べれば俺たちでもなんとかなるのでは?

そう考えついた俺は生徒会室へ走り出した。

……………………………


「こ、これだ!」

「これって……私が普段使ってるパソコンですよね?」

息切れしている俺とは違い、彩香ぎ淡々と話す。

「彩香、今すぐネットが繋がるか調べてみてくれ。もし繋がったら少し調べてもらいたいことがあるんだ。」

俺は彩香に細かく説明し、この問題の打開策を調べさせる。まぁその間俺はポッキーを食べながら見物していたのだが。


「先輩!見つかりました!」

さすがは未来の生徒会長。仕事が早い。俺はパソコンの画面を覗き込んだ。

「ええと?1914年アメリカで少子化を解決しようとしたところ、逆に子どもの数が爆発して、財政破綻寸前に。この問題を解決したのはモルターという人物でその方法とは子どもを自立させるという方法だった……どういうことだ?」

「要するに、子どもを大人から離して、自分たちで生きていけるようにするってことじゃないですかね?」「なるほど、そうすれば自分たちの食料は自分たちで補わなければならなくなり、大人たちはその分生活が楽になるというわけか。」


子供からすると苦痛だろう。ついさっきまで養ってもらっていたのに、突然自分たちでなんとかしろと言われるのは……。

けれどモルターの方法以外に成功例がないことから、俺たちはこの方法を参考に打開策を考えることにした。


「とりあえず一度村に戻って何人かの大人と話してみませんか?なんか良い案が出るかもしれませんし。」

俺は彼女の提案に頷き、生徒会室を後にした。



読んでくださった皆様、ありがとうございます!

ちなみにオルターという人物は多分存在しないのでご了承くださいー

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