ハジメちゃん、ごくろうさま
カリカリカリカリ……ゴシゴシケシケシ……カリコリケシケシ……ケシケシカリケシ。
万作は並べた学習机の隣で、伊吹がまじめに宿題に取り組んでいる様子を感慨深げに眺めていた。
二年に進級した伊吹の一学期の成績のひどさにショックを受けた万作は、伊吹の将来をおもんばかって、円谷瞳をエサにして伊吹に勉強させようとした。
円谷瞳が真田のあとを追って行くであろう大学に伊吹も入学するためには、勉強しなくてはだめだという万作の言葉を信じて、伊吹の自宅学習は二学期に入った今も継続していた。ありえない粘り強さを見せる伊吹に、万作は尊敬の念さえ抱いた。日曜日だというのに今日も朝から学習机に向かって物理のプリント問題を解いている。
カリカリとシャーペンを走らせては消しゴムでゴシゴシ消すのを繰り返している。どうも書くより消すほうが多くて、朝からやっている割には進んでいない。しかし、根性はたいしたものだと思う。この調子で粘りに粘れば、ひょっとして、伊吹にでも入れる大学くらい見つかるかもしれないと淡い期待を万作は抱いた。
「イブ、居るかぁ」
ドアが開いて、坂本肇が入ってきた。
万作に「よっ」と片手を上げて挨拶する。
万作は軽く頷いた。
「勉強してるんだ。どうしたのイブ? 今日は日曜日だよ。お休みの日はよい子の子供は遊ぶものだよ?」
肇は伊吹の小さな背中におおい被さるようにして頬ずりした。
「やめてよハジメちゃん。じゃましないでよ。集中できないだろ」
「ねえイブ、一問目の答え、間違ってるよ。エネルギーは質量に比例し、速度の2乗に比例するんだよ。二問目も間違ってるね。バネエネルギーはフックの法則をつかうんだよ。バネが物を引く力は伸びに比例するんだよ。だから答えはW=2分の1×2乗になるんだよ。三問目も四問目も、あ、全問間違ってる。ほんとによく集中して間違えたねぇ」
「ハジメちゃん、キライいだ。出ていってよ。もう家に来ないで。二子ちゃんと別れて永遠にぼくの前から消えてよ」
「ほらイブ、エネルギーの法則って習ったでしょ、あれを思い出してごらん」
「エネルギーの法則なんて習ってないよ」
「習っているけど、イブの頭に入っていないんだよ。イブは、本当に大学をめざすつもりなのかい」
伊吹の頬に頬をスリスリしてすべすべの頬っぺたを楽しみながら訊ねると、伊吹は真面目な顔でこたえた。
「そうだよ。円谷瞳さんの行く大学にぼくも入って、四年間で愛を育んで、卒業したらぼくたち結婚するんだ」
「決めてるんだ」
「そ。ぼくと円谷瞳さんの人生がかかっているから、ぼくは頑張るんだよ」
「すごい愛だね」
「そ。すごい愛なの」
肇が声を殺して笑っていることに伊吹は気がつかない。万作は、先週の日曜日の水族館の出来事を思い出した。円谷瞳にひどい扱いを受けても、男らしく庇ってみせた伊吹の態度に、万作だけではなく真田たちも驚いていた。
好きな人のことなら、何でも良く見えるものだが、そんなに伊吹は円谷瞳が好きなのだろうか。万作は伊吹のためにそっとため息をついた。断言してもいい。伊吹の恋は叶わない。叶わぬ恋に向かってひたむきに努力して勉強に励んでいる姿がいじらしかった。
「ねえイブ、そんなにいっぱい勉強して、無い知恵を絞ったんだから、もうおしまいにして遊ぼうよ。新しいプレステのゲームを持ってきたんだよ。一緒にしようよ」
伊吹の頬っぺをむにゅむにゅ摘みながら誘う肇を、伊吹は一蹴した。
「一人で遊んで。ぼく、忙しいから。それと二子ちゃんのベッドには潜り込まないでね。結婚まではおうちエッチは禁止だからね」
「イブ、大胆な言葉を覚えたよね。どこで教わってきたの、おうちエッチなんて」
「ホテルエッチもだめだよ。ぼくはうちのお姉ちゃん達を害虫から守らなきゃならないからね」
「ひっでえ、オレって害虫扱いかよ」
「ふうー。ハジメちゃんを相手にすると疲れるよ」
肇は隠していたゲームソフトを伊吹の目の前で揺らして見せた。
「あ! ぼくが欲しかったゲームだ!」
肇の手に飛びついた伊吹だったが、我に返ったような顔つきになって机にかじりつく。
――いけない、いけない。
危うく頭の軽いハジメちゃんの姑息な手に乗るところだった。
ぼくが意志の固いしっかり者だからいいようなものの、遊びの誘惑に負けていたら大願成就は果たせない。
たとえ物理の宿題の問題が全問不正解でも、蟻の一穴というように、あきらめずにこつこつ努力を積み重ねていったら、必ず目的は達せられるのだ。
努力のあとに結果がついてくると、中年になってからテニス界にカムバックした伊達公子さんも言っていたではないか。
ぼくはあの人の筋トレ風景をテレビで見て感動したんだ。
どんなに苦しくても、頑張れば結果はぼくを裏切らない。
ハジメちゃんがプレステの新発売のゲームでぼくを誘惑したとしても、負けずに物理の連立方程式を解くんだ――。
「イブ、連立方程式は数学だよ?」
伊吹の独り言につっこみを入れて笑っている肇と伊吹を放っておいて、万作は着替えを始めた。
白のタンクトップに半袖のネイビーブルーのチェックの綿シャツを羽織って、アイボリーのスリムパンツに着替えた万作は、携帯をジーンズの尻ポケットに入れながら伊吹に声をかけた。
「イブ、出かけてくるからな」
「イブを連れて行かなくていいのか」
独り言の世界に入って妄想に浸り込んでいる伊吹の代わりに肇が返事を返した。
「うん。今日は親のいいつけでのばらさんと会うことになっているんだ」
「婚約者の彼女?」
万作は困ったように顔をしかめた。
「デートなら確かにイブは邪魔だよね。いいよ、イブはオレがみているから」
「デートっていうわけではないんだけど、ちょっと行ってきます」
そういって、ちらりと机にかじりついている伊吹を見てから万作は出かけて行った。
万作がいなくなったとたん、伊吹はパチンとシャーペンを置いた。背筋がピンと伸びて眉をきりりと引き絞る。
「どうしたのイブ」
「鼻くそブタ!」
「鼻くそブタがどうしたの」
「こうしちゃいられない」
イスを蹴るように立ち上がって伊吹は床に放り投げてあったキャップをかぶると、コマネズミのような忙しさで部屋を飛び出した。階段をかけあがって二階の二子の部屋に飛び込んむ。あとを追う肇が慌てた。
「イブ、いくらきょうだいでも二子の部屋に入るときはノックしてよ。二子は女の子なんだからさ」
これから出勤の二子は、パジャマのまままだベッドの中で眠っていた。伊吹が騒々しく部屋に入ってきても平気な様子でもぞもぞと目を開ける。
「イブ、今度はなに」
二子のドレッサーの引き出しを勝手に開けて何かを探している伊吹に声をかける。
「二子ちゃん、サングラスどこ。早く万札を追いかけなきゃ! 鼻くそブタから万札を守れるのはぼくだけだから、変装してあとを追いかけるんだ」
伊吹がサンローランのサングラスを探しているうちに、二子はどこからかロープの束を取り出してきて、夢中になってあちこちの引き出しをかき回している伊吹の腰にロープを巻き付けて縛った。
「ハジメ、このロープを放さないでしっかり持っているのよ」
二子からロープの端を持たされたハジメは、きょとんとして首を傾げた。
サングラスを見つけた伊吹が顔に装着して、そのまま部屋を飛び出し階段をかけ下りる。
伊吹にくくりつけられたロープがどんどん伸びていく。
「ハジメ、イブを追いかけて。早く」
はっとしてハジメはロープを握りなおした。
「二子。もしかして、これって」
「イブはちっともじっとしてないからね。慣れていない人は紐で繋いでおくほうが安心なのよ」
「でも二子、これじゃあんまりだよ。イブは犬じゃないんだからさ」
「犬のほうがらくよ」
「ひっでえ」という前に、肇はロープに引きずられて階段を転げ落ちていた。
ふつうなら、そこでロープを手放しているところだが、そこはさすがに相田家の次女二子の彼氏だけのことはある。打ちつけた腰の痛みに悶絶しながらも、よろよろと立ち上がって、握りしめたロープに引きずられるように外に飛び出した。
家の前の道路を駅に向かって急いでいる伊吹の後ろ姿が見える。キャップをかぶって、顔の三分の一は隠れてしまうサングラスをつけ、半袖のピンクのTシャツに迷彩色のふくらはぎまでのパンツをはいた伊吹が、腰にロープをくくりつけてちょこまかと歩いている様子はなんとも滑稽だ。しかし肇は笑えない。自分の手の中のロープを信じられないように見てしまう。そのロープが伊吹とつながっていることが更に信じられない。
行き交う近所の人達は、みんな伊吹になにかしら声をかけていくが、ロープに繋がれていることを見咎める人がいないのが怖いと思う。
声をかけられるたびに伊吹が立ち止まって「万札が鼻くそとデートだから追いかけているの」と、聞く方にしたら何のことかわからないことをいちいち説明しているのにも頭痛がする。そしてロープを掴んでいる肇とすれ違うごとに必ず「ご苦労様ね」とねぎらってくれるのが痛い。肇の背中に、九月の残暑のせいではではない冷たい汗が流れ始めた。
フェンスで囲った庭の中から犬が伊吹に吠えかかった。肇はハッとして五メートル先の伊吹を見た。伊吹はフェンス越しに柴犬と盛んに吠え合っていたが、話が終わったような雰囲気で再び駅に向かって歩き始めた。
肇がその犬のいる家の前を通り過ぎるとき、柴犬に「おまえも大変だな」というような目で見送られてちょっと傷ついたりした。
駅が見えはじめる頃になると、さすがに相田家のテリトリーを抜けたみたいで、じろじろ見られはじめた。なかには珍しがって近づいてくる者もいる。
駅の交番から怖い顔をした警察官が出てきて、真っ直ぐ肇に向かってきた。肇は青くなってロープを放してしまった。ロープが人の隙間をぬってするすると消えていく。
伊吹は改札に続く階段を上っていた。電車が着いたあとらしく、大勢の人が改札を抜けて階段を下りてくる。伊吹の腰に括りつけられたロープは奇跡的に踏みつけられることもなく蛇のように蛇行しながら人々の足の隙間を上っていく。
伊吹の前を、骨がかろうじて組み合わされているようなおばあさんが、よろよろと階段を上っていた。降りてくる人の肩にでもぶつかったら、骨がぱらりと分解してしまいそうな年寄りだ。手に布袋を持っていて、一段上るごとにその布袋が大きく揺れる。
伊吹はちょこまかとおばあさんの隣に並ぶと、おばあさんの腕をとって体を支え、布袋を持ってあげようとした。おばあさんの笑顔が伊吹に向けられるのを肇は見ていた。
伊吹もなかなか親切なところがあるものだと関心して見上げていると、伊吹の片足が階段を踏み外してギャッと叫んでおばあさんにしがみついた。
おばあさんは今にも骨がぱらぱらと粉になりそうな危うさで階段からのけぞった。
「うわあ、危ない!」
肇は叫んでいた。
隙間無く階段を下りてくる人々は、踊りを踊っているようなおばあさんと、おばあさんにしがみついてバランスをとろうともがいている伊吹に無関心でぞろぞろと階段を下りてくる。そのわずかな隙間におばあさんが転がり落ちてきた。
肇は人混みをかき分けてダッシュした。危機一髪で降ってきたおばあさんを受け止める。
おばあさんは驚いて入れ歯を吹き出して目を飛び出させていた。
「すみません、おばあさん。お怪我は無かったですか。立てますか。生きてますよね」
肇が伊吹の代わりにペコペコ謝っている隙に伊吹はロープを引きずったまま消えていた。
「イブ! 行くな! 待て!」
腰を抜かしてへたり込んでしまったおばあさんを置き去りにして肇は階段をかけ上った。
ホームにたどり着くと、上りの電車が停まっていて、開いたドアから大量の乗客が吐き出されたところだった。人の壁に押し戻されそうになりながら、首を伸ばして伊吹を探す。
人の群から頭一つ抜きんでた万作が、電車に乗り込もうとしているを発見して声を上げたが、混雑にかき消されて届かない。伊吹は小さいから完全に人の中に埋もれている。しかし、伊吹は万作のあとを追いかけているのだから、万作がこの電車に乗ったのなら伊吹も乗るはずだ。発射のベルが鳴る車両にもがくように飛び乗ったとき、視界のすみに伊吹の姿をとらえた。
万作が乗った車両から三つ目の車両に吸い込まれるように消えた伊吹の残像を追うように、連結車両のドアを開けて次の車両に進む。
肇は流れる汗を拭うのも忘れて息をあえがせた。クーラーの効いた車内のファンさえ今の肇から暑さを冷ますことはできない。
二つ先の車両で、キャップを深くかぶって顔のほとんどを隠すサングラスをかけた伊吹が、腰から長いロープを引きずりながら、乗客の陰に身を隠すようにして先の車両の万作を窺っていた。
その様子は怪しい。かなり怪しい。肇は泣きたくなった。伊吹の怪しさのせいではなく、伊吹に対する自分の認識の甘さにだ。
伊吹は危険だ。二子が慣れないとたいへんだからと言った理由が今ならわかる。わかりすぎる。それでも肇は半べそをかきながらじりじりと伊吹との距離を詰めていく。
なんとしてもあのロープを掴まなければ。
肇の悲壮な決意など知らずに伊吹は、まわりの乗客からうさんくさげに睨まれながらも、腰を屈めてカメのように頭を出しては引っ込めながら前の車両に近づいていく。
伊吹がドアを開けて前の車両に足をかけたとき、肇はダッシュしてロープを掴むことに成功した。ほっと一息ついてロープを握り直す。安心のあまり、肇はロープが連結車両のドアに挟まれたままでいるのに気を許していた。ロープさえ掴んでいれば安心だと思っていた。二子好みに染めた茶髪や、二子のセンスで彩られたピアスやネックレスやブレスレットが、建築科のまじめな大学生である肇を、チャラ男のシティボーイに見せているが、もともと肇は端正な好青年で、それが汗だらだらでロープを握ってハアハアいっている様子は、もしかして伊吹以上に変かもしれない。車内に乗り合わせた人々がじろじろ見ていた。しかし、今はそんなことをかまってはいられなかった。
電車がホームに滑り込み、ドアがあいた。肇は油断していた。いきなりロープが引っ張られて連結車両の頑丈なガラスドアに顔面を打ちつけた。ロープを握ったままうずくまって顔面を両手で押さえる。指の隙間から生温かいものがだらだら垂れた。
「わあああ、鼻血!」
鼻と口の周りと両手の平を赤く染める血に肇は失神しそうになった。くらくらしている間に、隣の車両にいた伊吹がピョンとホームに降りたって、先を行く万作のあとを追って改札に歩きだしていた。
鼻血に気を取られて手放していたロープが、するするドアの向こうに消えていく。
「イ、イブが、イブが!」
鼻から下を血だらけにした肇は、よろめきながらホームにおりた。ドアが閉まって電車が動き出す。
ホームの混雑の流れに乗って肇も歩きだしたが、肇の周りでは血だらけのチャラ男のせいでちょっとしたパニックになっていた。
肇を見ないようにして少しでも遠ざかろうと空間ができている。肇が出血によろりとよろけると無言の叫びがあがって空間が広くなる。改札を抜けたところで駅員に取り囲まれた。夢遊病者のような虚ろなまなざしで駅員たちをやりすごして伊吹を探す。
鼻血で真っ赤に濡れた自分の恐ろしい顔よりも、駅員の職務質問よりも、伊吹を見失わないようにしなければということしか頭になかった。
その伊吹が、駅員たちの頭越しに階段を降りていこうとするのが見えた。
「あ、イブが行っちゃう!」
電車から吐き出された乗客の群に紛れながら、伊吹の姿が飲み込まれて消えていく。
イブ、イブと譫言のようにつぶやくと、駅舎の出口の階段の中程から大勢の絶叫が沸き上がった。
青ざめた肇は、前の人を突き飛ばす勢いで階段に急いだ。階段では、伊吹の腰から垂れ下がっているロープに足をとられた一人が、降りていく人にしがみつき、その人がさらに下の人にしがみつき、左の人、右の人を巻き込んで将棋倒しのように雪崩て行った。
「イブー! イブー!」
階段の上から肇は夢中で叫んだ。
これだけの大勢の人達の下敷きになったら、小さな伊吹などつぶれてしまう。折り重なって下り階段を埋め尽くしている人々の叫び声に耳をふさぎながら、肇は焦点の合わない視線を一点で止めた。
階段を降りきったところで、伊吹はちゃっかり万作に抱き上げられていた。
駅員達が大騒ぎしているなか、パトカーと救急車のサイレンが近づいてくる。
大勢の人が起きあがれずに泣き叫んでいるのも忘れて、肇と万作は階段の上と下で見つめあった。先に我に返った万作が肇に降りてくるように合図を送った。肇ははっとして人を踏みつけながら階段を駆け降りた。そのまま伊吹を抱いた万作と一緒に駅前のタクシー乗り場に直行し、タクシーに乗り込んだ。
駅前のバス発着所は、警察車両と救急車でいっぱいになり、拡声器を持った警察官が一般人を誘導していた。
どうやら駅はテロリストに占領されたらしく、流血した被害者もでた模様で、駅は封鎖されたと拡声器ががなりたてていた。
いち早く上空には報道関係のヘリコプターが何機も旋回し始めている。
「万札、駅、なんか賑やかだね」
走り出したタクシーの中で伊吹がのんびりと言った。
二十分後、伊吹は万作と肇の真ん中で、花屋敷邸の豪華絢爛な応接間で、花屋敷のばらの両親を前に、優雅に紅茶を飲んでいた。
万作はばつが悪そうに下を向き、顔を血だらけにした肇は震えそうになる拳でしっかりロープを握りしめている。
両親とならんで座っているのばらは、一番落ち着いてリラックスしている伊吹にわなわな震えていた。
「どうしてチビ助が一緒なの。どうしてチビ助が」
「いいじゃありませんか、のばらちゃん。みんなでお茶をしましょうよ。ねえパパ」
「そうだよ、のばら。パパも伊吹君には会いたいと思っていたのだよ。だって、いつものばらは伊吹君のことばかり話しているからね。よほど気が合うのだね」
「伊吹ちゃん、ケーキ、召し上がれ。うちののばらと仲良くしてくれて、ありがとう。これからもよろしくね」
のばらの両親がにこやかに伊吹に話しかけてなにくれと世話を焼くので、のばらはぎりぎりと歯ぎしりをしていた。
「チビ助め! チビ助め! チビ助め!」
伊吹はすっかりのばらの両親と仲良くなって、おいしいお菓子をいっぱいごちそうになって楽しいひとときを過ごしたのだった。
「イブの妄想」は、もともと短編読みきりのお話でして、内容などあってないようなものです。眠れないときなど、お布団の中で読んでいるうちに、疲れた神経がおさまってきて、あくびが出るようにと思って気ままに書き綴った作品です。都合により、ひとまずここで終了させていただいて、この後は、のんびり短編で投稿していこうと思っております。引き続き、「イブの妄想」をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。