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リンゴとハチミツ  作者: モモセツバキ
5/7

最終話-最後の・・・- ・ 1

蜜がプレゼントを買いに行く日。

林檎は待ち合わせ場所に着く頃、気持ちがどうにもならずに泣き出してしまう。


願うのは、何も知らなかった、あの日に帰りたいという事。

外は朝から生憎の雨。

-…そう。あの、蜜から衝撃の言葉を聞いた悪夢の日と同じ・・・雨。


林檎は、以前は雨が好きだった。雨の匂いが好きだった。

幼い頃、雨の日には蜜の部屋で遊ぶ事が多かったから。楽しい思い出の多い雨が、今では苦痛以外の何者でも無い。

林檎は小さく溜息をついた。そうした所で、別に胸の奥の痛みがおさまる訳でも無いのだが-・・・。



待ち合わせの時間が近付いた。時計を見る度に憂鬱な気分が増すが、悩んだ所で何か変わる訳でも無い。


「行こっかな」


誰に言う訳でも無い独り言を呟き、林檎は部屋を後にした。


「あ、れ?」


待ち合わせ時間より20分程早く着いた林檎だが、既に蜜は来ていた。

二人で遊ぶのは、中学生以来だ。高校生になってからは何故か、蜜が素っ気無くなったから。


今思えば「自分の知らない誰か」に、片思いをしているのだから当然だ。


そして、この買物が最後になるかもしれない。

蜜に彼女が出来たら、今までみたいに接してはダメな事くらい分かっている。


(あの日に帰りたい・・・)


唐突に、心の中に浮かんだ言葉を噛み締めた瞬間。

林檎の中で何かが崩れ、急速に視界がボヤけて行った。

一生懸命したメイクも、無駄になる勢いで涙が零れて行った。



「林檎っ!何、泣いてんだよ!」


ちょうど待ち合わせ場所に現れた蜜が、ぎょっとしながらも慌ててハンカチを差し出す。だが、涙を止めたくても止まらなかった。


林檎はもう、どうして良いのか分からず、蜜が貸してくれたハンカチで涙を隠す事しか出来なかった。


***



「落ち着いた?」


泣き止まない林檎を、近くのカフェに連れて来た。

蜜はタイミングを見計らって問い掛ける。

林檎も、多少落ち着いた様子で小さくコクリ、と頷いた。


二人の間には、今までに無い気まずい空気が漂っている。




蜜は、飲みかけのカフェオレを飲み干すと「出ようか」とだけ言い先に店を出てしまった。


(蜜くん、怒ってるよなぁ・・・)


仕方ない事だが、何も言わない蜜に肩を落としつつ林檎は蜜の後に続いた。


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