第4話-プレゼント-
渋々ながら、蜜に鞄を届けに来た林檎。
そこで交した会話に林檎は…。
「よし!」
意を決して林檎は家を出た。
幸い、雨は上がっていたので傘をささずに出る事が出来た。
数分歩いて蜜の家に着いたが、この数分が酷く長く感じた。
玄関のベルを鳴らすと蜜の母、律子が出迎えてくれた。
軽い挨拶と母から預かった物、ついでに蜜の鞄を渡そうとした時。
「蜜なら部屋にいるし、直接渡したら?」
そう言われ、行かざるをえなくなる。
渋々と家に入り、蜜の部屋に向かう。
部屋の前に立つと、大きく深呼吸する。
そして、ドアをノックした。
「開いてるよー」
当たり前だが、部屋の中からは蜜の声がした。
幼い頃から繰り返された行為。いつも聞いてた蜜の声。
それがどうして、今は苦しいんだろう・・・。
「蜜くん、私。林檎っ」
数秒後、蜜がドアを開けてくれた。蜜の顔を見れば、蜜は眼鏡を掛けていた。
「蜜くん、ゴメンなさい・・・」
些か卑怯だが、しょんぼりした顔で林檎は謝罪した。
蜜は林檎の、この表情に一度も勝てた事が無いのだ。
案の定、渋々ながら何も言わずに鞄を受け取り「部屋、入りなよ」と言ってくれた。
「蜜くん、眼鏡だね」
「まぁ、家の中だし。・・・林檎、オレの眼鏡姿が好きだろ?」
図星を突かれ、一瞬言葉に詰まる。
だが林檎には腑に落ちない点があった。
「蜜くん・・・。他に好きな子がいるのに、私なんかに良い顔しちゃダメだよ・・・」
寂しそうに、ポツリと林檎は呟いた。
蜜にも聞こえている筈だが、関係のない言葉が返って来た。
「林檎、今度の休みは暇か?」
「え?」
全く予想してなかった返答に、瞬きすら忘れてしまう。
「そいつにプレゼントを買ってやりたいんだ」
少しだけ顔を赤らめた蜜を見て、林檎は完全に言葉を失った。
(こんな蜜くん、見た事無いよ・・・。)
蜜の表情を見る限り、余程相手の事が好きなのだろう。
…そして、そのプレゼントと一緒に、気持ちを送るのか。
蜜への恋心はもはや諦めるしか無いのか・・・。
林檎の目の前は真っ暗になってしまった。