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リンゴとハチミツ  作者: モモセツバキ
3/7

第3話-とまどい-

やっとの思いで帰宅した林檎。

しかし手には蜜の鞄を持ってしまっていて…。

幾ら普段よりも家までの距離が短いとは言え、土砂降りの中で傘をささずに帰った。


その為、林檎はずぶ濡れになって家に辿り着く。


…これではせっかく蜜が傘に入れてくれていたのに、意味が無い。

玄関に入った所でドアにもたれ掛かり、大きな溜息を吐き出す。

考えても考えても、頭の中はぐちゃぐちゃで整理が出来ない。


「林檎?お帰り。はい、タオル」


物音で娘の帰宅に気付いた母親が、風呂場からタオルを持って来てくれた。


「ありがとう・・・」


浮かない顔で、短く礼を言いながら頭を拭く。濡れた髪からは雫が垂れ落ちている。



「あら、あんた。それ、誰の鞄?」


母に指差されようやく思い出し、息を飲む。蜜の鞄を持って来てしまったのだ。



「これ・・・!蜜くんのだっ!!」


バツの悪そうな顔で呟いた娘に、母は「仕方ないわねー」と笑いながら言い、


「後で蜜君に会いに行くでしょ?煮物作り過ぎちゃったから、律子に渡して来てよ」


律子とは、蜜の母の名前だ。


「お母さん行ってきてよぉ」


困った顔で頭を振り、イヤイヤをしてみせるが母には通用しなかった。

部屋に戻り、服を着替えると溜息をつきながらベッドに転がる。


(明日、学校で渡そうかな・・・)


しかし明日、学校で渡されても、蜜的には困るだろう。

現段階ですら気まずいのに、益々気まずくなってしまう。



「よし!行こう。鞄置いて帰って来たら良いんだし!!」


立ち上がると、無駄に元気な掛け声と共に立ち上がる。



母からの頼まれ物を受け取り、いざ出かけようとするも、玄関で止まってしまう。

足が動かない。


行きたくない。

そんな気持ちが、足と床を縫い付けていた。



外は雨。

時間と気持ちの焦りだけが過ぎて行く。


林檎はただただ戸惑いの中で立ち尽くしていた。



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