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「はぐれ魔法師?」

「嗚呼、一族の者ではなく。些細な事で、魔法力が発露しなんの知識もないまま、その力を振るい、他者を傷付け利益を得る者達の事だ」

「それは知ってる。そいつらを狩れと?」

「そうだ。最近は、奴等も組織化しているらしい。だから、これ以上我々の敵対勢力とならないよう今の内に、一人残らず狩れ」

 下される命令に、静かに思案する少女。

 少女の目の前には、年は老いてこそいるが揺るぎない強い意志を讃えた瞳は、眼光鋭く少女を見遣り。

 座してこそすれども、ピンっと伸ばされた背筋。張り詰める空気は、年寄りとは思えない。

「狩れと言うなら、詳細は?」

「ない」

「……それで、狩れと?」

「適任者に、内情を探らせろ。その上で、実行すれば良い」

「手を取り合う、は?」

「有り得ん。我が一族は、古くからこの国に仕え、様々な犠牲を払いながら今日まで来た」

「それと同じく、莫大な利益も得て来たわ」

「その我が一族を、脅かす存在はあってはならん」

「勝手な言い分」

 吐き捨てる少女の言葉に、老人。

 一族の長である、日瀬七衞ひのせしちえは息を吐き出し孫ほどの少女に、言い聞かせるように話を続ける。

「良いか、翼。我々は、古くから伝わる知識の元、正しい力の使い方を知っておる。だが、はぐれである彼等は知らぬ。それが意味する事が、解らん程ではあるまい」

「………、暴走?」

「現に、報告は受けておる。真名まなも持たぬはぐれである彼等は、一度その力を暴走させてしまえば、抑えるのは難しい。それは、知っておろう?」

「………、確かにじいさんの言い分に一理ある。分かった、誰か適任者に内情を探らせる。でも、どうするかは彼等の考え等を知ってからでも遅くはない。交渉して、一族に迎えてもいい。正しい使い方を教え、真名を持たせればいい話。そして、彼等の真名は私達が管理者となり管理すれば、問題はない。そうでしょう?」

「………ふむ。良かろう、我が一族の当主である翼の意見を尊重しよう」

「なら、後は私の好きに?」

「構わん」

 その言葉に、スッと優雅に一礼をすると音も立てずに座敷を離れる。

 あどけなさの残る表情は、引き締められ冷ややかな光が瞳に宿る。




 広大な敷地を誇るのは、魔法師一族を束ねる日瀬家。

 長である七衞の孫娘、翼は日瀬家当主。両親は、生後まもなく仕事を失敗して亡くなったという話だが。それが事実かどうかは、疑わしい。

 祖父と呼んではいるが、七衞との繋がりすら怪しい。

 だが、一族随一の実力者である事が翼の現在の地位を確立させていた。

 いくつもの部屋が並び、優美な庭を眺められる廊下を足早に通り過ぎ、母屋から自身の部屋がある離れに着くと。

「お帰り翼」

 優しい声音で、出迎える青年。

 その声に、翼の表情が緩む。

「ただいま」

 微笑み答えれば、温かな腕に抱き締められる。

 慣れ親しんだ温もりに、安堵の息を漏らし。甘えるように擦り寄れば、優しく髪を撫でられる。

「茶を用意してある」

「んっ」

 頷きながらも、抱き締める腕から離れようとせず。翼はより温もりを求めるかのように、背に腕を回す。

 そんな翼に、抱き締める青年蒼柳は、翼を抱き上げ室内の奥に向かう。

 部屋の奥には、外界の音は何一つ届かない静けさがあり。

 室内を照らすのは、柔らかな陽の光。

 窓際に座り、膝に翼を座らせキツく抱き締めれば、嬉しそうに甘えて来る。

 そのまま、翼の気がすむまで抱き締め髪を撫で続けていると。

「厄介な話」

 小さな声で、ポツリと呟く。

 先を促してやると、胸元に顔を埋めたまま先刻のやり取りを翼は、話す。

 全ての話を終えると、翼は一息吐き。

 蒼柳あおやぎの差し出すお茶を口にする。

「確かに厄介な話、だな」

「でしょう?とりあえず、何の情報もないからね。情報部に探らせて、そこから潜入方法とか誰にするかを考えないと」

「そうだな」

「今動けるのに、情報収集。幹部を集めて、今の話を」

「承った」

「時間は、今から2時間後に集合」

 お茶を飲み干し、立ち上がりながら矢継ぎ早に指示を出して振り向く。

 身長の差があるので、見上げる形になる蒼柳を見詰めると不敵な笑みを浮かべて。

「全て、有利に働くようにするわよ」

「仰せのままに、玻璃はり

瑠璃るり

 腕を伸ばして、触れるだけの口付けを交わして2人は部屋を後にする。

 厄介な問題を早々に片すべく、それぞれが動き出す。


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