妹の身代わりで嫁いだら、冷血公爵の家計簿が泣いていました
冷血公爵より、家計簿のほうが先に泣いていました。
妹が泣いたので、わたしが嫁ぐことになった。
相手は冷血公爵と呼ばれるエリオット様。愛など期待していない。そう思って馬車を降りたわたしを迎えたのは、本人ではなく、厚さ三寸の家計簿だった。
「奥様、どうか見なかったことに」
執事は震えていた。だが、数字を見なかったことにすると、人が泣く。
使用人の給与は三か月遅れ。薬草園の費用は削られ、代わりに親戚筋の夜会費が膨らんでいる。冷血公爵の名で恐れられていた屋敷は、実際には親族に食い荒らされていた。
「まず夜会費を止めます」
親族たちは怒鳴った。妹は「そんな家に行かなくてよかった」と笑った。けれど公爵は、黙ってわたしの組み替えた予算表を見ていた。
「君は、私を怖がらないのか」
「怖いです。でも赤字のほうが怖いです」
公爵は初めて笑った。
翌月、使用人の給与が戻った。薬草園も再開し、領民の診療所に灯りがついた。親族たちは屋敷から去り、妹の家には使い込みの請求書が届いたらしい。
結婚式の日、公爵は小さな声で言った。
「身代わりではなく、君を妻に迎えたい」
わたしは家計簿を閉じて答えた。
「ではまず、結婚式の予算から一緒に見直しましょう」
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