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クール?な君を放っとけない  作者: けものさん
第一章『気にする俺と気にしない君』
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第七話『未来があるなら気にしない』

 どうしてか、学校というのは急に動物なんてのを飼い始める。


 小学校くらいの頃なら当たり前にあったニワトリ小屋も、情操教育の一環だったのかな、なんて思えるけれど、高校になってまでそれが必要かと思えば、それは別の話。

 ウサギ小屋爆誕とは、なかなかうちの高校も思い切った事をするものだ。どういう意図かはあえて考えまい。情操教育は俺達にも必要なのだろう、きっと。それにしても、担任が高らかに「担当を引き当てました!」というのもどうなのだろう。校長先生の提案だかって話が耳に入ったから、喜ばしい事なのかもしれない。

 ただ、それだと我がクラスだけ情操教育が発達してしまう。良いことか、良いことかも。

 

 しかし事実として、発表された時はクラスの女子数人から喜びが混じった声が漏れ聞こえていた。

 とはいえ、ウサギというのはなかなかに難しいチョイスではなかろうか。可愛いけれども、見ている分には可愛いけれども、動物の飼育のリアルは厳しいと、猫三匹が飛び交う我が家を想う。


 しかし、目の前の与田さんは可愛さに負けて飼育委員に立候補している。

「私としぐちゃんでやりたい!」

 元気良く手をあげる与田さん、時雨さんは既にセットなのだなと思いつつ、時雨さんの方を見ると、彼女もコクコクと頷いていた。ウサギの誘惑は強い。


 与田さんのテンションに圧されたのか、結局飼育委員は時雨さんと与田さんに決まって、まばらな拍手が起きる。こういう、委員決めの時の熱量は正義なのだと思い知らされた。とはいえ時雨さんに熱量があるのかは不明だ。与田さんと時雨さんはホームルームの後、担任に説明のプリントを渡されていた。

「よだかちゃん、良かったの? アレルギーとかない?」

「あったら立候補なんてしないってば! それよりしぐちゃんも強引に誘ったけど大丈夫?」

 強引に誘ったという実感があるなら良かった。ある程度までは常識人でいて欲しい。テンションは高いけれど。それにしては、存外時雨さんは嬉しそうにしている。やはり時代はウサギなのだろうか、確かにペットショップでもなきゃ見る事も無い。


「うん、私は平気、ウサギ可愛いし。でもさ、これってどのくらい続けるんだろ?」

「んー、プリントには夏休みの事も書いてるし、半年くらい? 冬は冬で変わりそうだよね」

 夏も飼育と考えると、情操よりも根性が鍛えられるのではないだろうかと思うけれど、二人はそんな事気にも留めていないみたいだった。

「冬は結構大変そうだね……」

 この地域は雪こそ滅多に降らないにしても、しっかり寒い方だ。そう考えると、同じ人達が二連続で委員を務めるという事も無いだろうから、良い位置におさまったのかもしれない。

「私は冬でも平気だよ? よだかちゃん絶対さみしくなるし、冬もやる?」

「んんんー、大丈夫! 今度は平気!」

 なんだか時雨さんが巻き込まれた側だというのに、主導権が妙に時雨さんにあるような。

 ただ熱心に手を上げていたのは与田さん、妙なすれ違いが、気になる。

「今度はって?」

 流石に、もうこのくらいの話なら、踏み込んじゃいけないなんていう間柄でもないだろう。

 俺はさりげなく、与田さんにではなく時雨さんの方に話を振る。

「あのね、よだかちゃんは動物が好きなの」

「うん……? うん」

 そりゃ、好きだろう。好きじゃなきゃあの熱量で手をあげることもない。

 それは分かるのだが、やはり時雨さんの言う事は独特で、彼女の中で言いたい事は完結しているのだろうけれど、俺にはすんなり伝わらない。

「よだかちゃんは、動物が好きだからね。別れる時に凄い泣くんだよね……」

 時雨さんが珍しく少しだけ困った顔をしている。与田さんのテンション感を考えると、感動的なシーンよりもこの世の別れのような号泣が思い浮かんだ。

「そこまで言わなくても?!」

 しかし、言われてしまったなら仕方がない。俺も考えてしまったから仕方がない。さぞ引き離すのに困っただろう事は、時雨さんのやれやれという表情で理解できる。しかもこの感じ、一回や二回じゃ無さそうだ。

「それはまぁ……大変……なのか?」

「大変だよう、人も集まるし、せっかく懐いてくれた子達も驚いちゃうし」

 それはなんとも、激情が過ぎる。さては与田さんは構いすぎて逆に懐かれないタイプと見た。

 しかし、時雨さんの温度は軽い。何度も付き合っていそうなあたり、動物は好きなんだろうけれど、彼女はそういう事を気にしないのだろうか。

 意外と情には熱そうというか、与田さんをよだかちゃんと呼んで、よだかの星を思う程の情緒はある人なのは間違いない。

 であれば、やはり半年やそこらとはいえ、世話をした動物と別れるのは寂しいと思うのは当然なような気もする。俺であってもやはり多少寂しいとは思うだろう。

「与田さんは仕方ないとして……時雨さんは悲しくならないの?」

 時雨さんは少しだけ間を開けてから、ゆっくりと頷く。

「うん、私はね。大丈夫なんだ、だって一生さよならするわけじゃないからね」

 その言葉に、与田さんが「それでもさあ」と食い下がる。

「私だって、もしその子が死んじゃったりしたら悲しいよ? 泣いちゃうかもしれない」

「やめてよ……考えただけで泣けるから」

 表情を変えずに淡々と可能性をあげる時雨さんに、それを受けてコロリと哀しそうな顔をする与田さん。

 しかし、時雨さんと与田さんの間にある温度感は安定している、少し熱すぎる気もするけれど。

「けれどさ? そんな事なんて早々起こらない。だから、私達が一緒にいられたねーってばいばいできるの。頑張って生きていこうねーって」


 それで、何となく彼女の、死生観と言うには大げさすぎるかもしれないけれど、関係の取り方が分かった気がした。きっと、彼女はドライなわけじゃない。その時々を楽しみながら、自分がいない未来も、考えていられるのだ。


 だから、きっと彼女は未来があるなら気にしない。

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