表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

第六夜 二つ目の穴

 こらこら、神木を傷つけるんじゃない。

 藁人形に釘を打ちつけたって、なんの解決にもならないんだよ。


 まぁ、こういう人間には何を言っても聞こえないだろうけどね。きっと、すべてを承知の上で愚行に及んでいるのだろう。

 人を呪わば穴二つ——。こんなのは百も承知だろうけど、念のため確認しておくよ。

 一つ目の穴は、呪った相手を埋めるための穴。

 二つ目の穴は自分の……、え、そんなことわかってるって? 聞きたくない? あ、そう。じゃあ、もう教えてあげない。


 あなた、自分の命なんかどうなってもいいと思うほど相手を憎んでいるんだね。相打ち覚悟ってやつ? 相手さえ不幸になってくれれば、自分が二つ目の穴に入ることも厭わない。

 でもさ、本当にそれでいいの? 本当に後悔しないならあなたの望み、叶えてあげてもいいよ。約束する。断言する。自慢じゃないが、私は嘘をついたことがない。


 さぁ、夜が明ける前にお帰り。そろそろ神主たちが動き出す。神木に藁人形を打ち付けている姿なんか見つかったら、あなたの望みが水の泡だ。




 さて、そろそろ家に着いたかな。きっと今頃、びっくりしているに違いない。望みが叶った証を見つけているだろう。私はやるときはやるってこと、わかってもらえたよね。


 ん? 何を怒っているのかな? せっかく望みを叶えてあげたのに、何が不満なんだい? だって、私の話を最後まで聞かなかったのはあなただよ。私はせっかく教えてあげようとしたのに。


 二つ目の穴は、自分の大切なものを埋めるため、ってさ。


 あたりまえだろう。人を呪うってそういうことなんだ。人の不幸を願うなら、自分の幸せと引き換えにしなくちゃ割に合わないよ。


 心配しなくていい。あなたの大切なワンちゃんは、私が可愛がってあげるから。

 ほら、虹の橋でお友達と楽しそうに走り回っている。

 よかったね。とっても幸せそうだよ。

 他人を羨んでばかりで自分のことしか考えない人間と一緒にいるよりは。




 ……でも、どこか寂し気だ。あなたのもとに帰りたがっている。

 仕方ない、今度ばかりは見逃してあげるとするか。


 ワンちゃんのためだよ。あなたのためじゃない。

 勘違いするな。

次回は「第七夜 知っているよ」です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ