第四夜 苦手な子供
※残酷な描写が含まれています。ご覧の際はご注意ください。
実は子供、苦手なんだよね。
私の仲間はみんな子供好きで、無条件に可愛がっているけれど、私はちょっと……ね。
だって、どんなに上手に隠れても、彼らは私のことをすぐ見つけてしまうんだもの。この世に生まれてから日が浅ければ浅いほど、たやすく私を見つけるんだ。
ほら、あの赤ん坊みたいに純真無垢な瞳で見つめられると、なんだかこっぱずかしくなってしまうのさ。
きみもそんな子だったね。
がりがりのやせっぽち。いつもお腹を空かせていて、ひとりぼっちで遊びに来ていたっけ。
友達がいないから、ちょっぴり可哀想に思えてうっかり話しかけちゃったんだ。そうしたら、きみ、純真無垢な瞳でものすごく嬉しそうな顔してさ。まいったよ。それから毎日遊びに来るようになったんだ。夜遅くまでひとりきり。
だけど、ある日ぱたりと来なくなった。近くを探したけれど見つからなくて。その日は夏祭りがあったからここを離れるわけにはいかず、遠くまで探しに行けなかった。
きみがふたたび現れたのは、夏祭り二日目の夜だった。
いつものようにひとりぼっちで、青白い顔をしている。それどころか全身血まみれの姿でやってきたから驚いたのなんのって。
夏祭りの夜、人込みでごった返す中、血まみれの子供が一人でさまよっているなんてどう見てもおかしいじゃないか。なのに誰も気づかない。
そうだよね。だってきみはもう……。
お囃子の笛太鼓に混じって、パトカーと救急車のサイレンが鳴り響いている。親子3人を乗せた軽乗用車は見るも無残に潰れていた。
私は傷だらけのやせ細った体を見つめたまま訊ねた。
きみはどうしてそんなひどい親を選んだんだい?
きみは笑ってこう答えた。
連鎖を断ち切るためさ、って。
だから子供は苦手なんだ。
ごくまれに私の仲間がまぎれているんだもの。
次回は「第五夜 御神籤を見誤ると」です。




