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第十二夜 連れてこられただけなのに

※ホラー要素あります。

苦手な方はご注意いただきたいのですが、万が一巻き添え食ったとき用に参考にしていただけたら幸いです。

 修学旅行から帰ってきてから元気がないね。

 まぁ、だいたい察しはつくけど。撮っちゃったんだろう? 心霊写真。


 きみの中学はスマホの持参禁止だから使い捨てカメラを持っていったんだっけ。それで帰宅してから現像するまで気づかなかったんだね。


 観光地のタクシー運転手って、たまに意地悪な人間がいるんだ。面白がって修学旅行生を心霊スポットに連れていく。そうやってわざと遠回りして運賃を吊り上げるのさ。

 きみたちもまんまとカモられてしまったね。

 あそこに霊がいるから撮ってごらん、とでも言われたんだろう。

 そうしたら一枚だけ本当に写っちゃったもんだから、今になって震え上がっているんだ。


 毎晩眠れないんじゃないのかい。寝ようとして電気を消すとなんだか寒気がして、いやな冷気に包まれる。背筋はゾクゾクしっぱなし。布団を被っても誰かに見られているような視線を感じるんだ。

 突き刺すような視線。それはえもいわれぬ悲しみと激しい怒りを含んでいる。


 そう、彼女、怒っているんだよ。その一枚に写ってしまった女性は。


 きみだったらどう思う? 突然、勝手に見ず知らずの土地に連れてこられて、たったひとりで心細い日々を送ることになったとしたら。きっと怖くて不安でたまらないだろう。

 彼女も今、そんな心境なのさ。


 大丈夫。彼女もきみが悪いわけじゃないことはわかっている。ただ、やり場のない怒りをきみに向けているだけなんだ。


 写真を下に伏せてごらん。ちょっと落ち着いただろう。落ち着いたら封筒に入れてあげるんだ。一握りの天然塩と一緒に、やさしく、そっとね。

 これでもう眠れるようになる。朝起きたら、親御さんと一緒に私のところへ持っておいで。お焚き上げしてあげるから。


 それで彼女は本来逝くべき場所へ逝ける。

 彼女はきっときみに感謝するだろう。




 さて、あのタクシーの運転手、どうしたものかな。

 おふざけが過ぎたようだから、お仕置きが必要だね。


 こう見えても見えなくても、私はけっこう怒っている。

次回は「最終夜 風鈴の知らせ」です。

ひとまずここで区切りといたします。


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