5、よろしくね!
「…天」
「どうしたの?」
「あの…」
バンッ
いつものように教室について凪ちゃんと話していたところ、凪ちゃんがなにか言おうとした瞬間に勢いよく扉が開かれた。
「おはよございまーす!夏風 天さんはいますかー!」
それから綺麗な銀色の髪を靡かせた女の子が大きな声で私の名前を呼んだ。
「え、烏一さんがなんでここに…」
「言いましたよ?同級生だって」
「天にフラれたのによく来れましたね?烏一さん?」
凪ちゃんが全く目が笑ってない笑顔を見せながら大変不満そうに言った。
…少し語弊があるけど凪ちゃんの言う通り私はあの時烏一さんの提案を断ったはすだ。
「フラれた訳では無いですよ?狂犬に少し邪魔をされただけですから」
烏一さんは少し見下すようにそういった。
何か二人の間にピリピリとした雰囲気が流れている気がする…
「どういうこと?」
「あの子、烏一さんに告白されたの!?」
「え、いいな…」
クラスがざわざわとしてくる。
恥ずかしいから!2人ともやめて!
「ふ、二人とも?」
「どうしたの、天?」
「恥ずかしから、喧嘩はやめて…」
「恥ずかしがってる、天可愛い」
「からかわないで!」
「確かに恥ずかしがっている天さんは可愛らしいですが…」
凪ちゃんに変なことを言われたので反論すると、烏一さんにまで言われた。
「は?可愛い天が減る見るな。」
そう言って凪ちゃんは私を後ろから抱きしめて引き寄せた。
「好きな子に別の人とのイチャイチャを見せつけられて悲しいです…」
烏一さんは悲しそうな演技をして白々しくそう言う。
「あの子、夏風さんだっけ?」
「学級の2大美人を独占してるよ」
「百合だァ…」
クラスの皆から視線を向けられている。
恥ずかしい、穴があったら入りたい…
「凪ちゃん、離してくれない?」
「無理」
「私にも、天さんを抱かせてください!」
「絶対にやだ。」
凪ちゃんは頑なに離そうとしない…これはしばらく離してくれないやつだ
…あっ!いいこと思いついた!
「…凪ちゃん、離してくれない?」
振り返って、上目遣いで後ろにいる凪ちゃんの顔を上目遣いで見上げた。
「かわッ」
凪ちゃんは眩しそうに両手で目を覆った。
よしっ、作戦成功!
「えっ!なんですかそれ!?私にもやってください!」
少し興奮気味に烏一さんは言った
「ダメです!それより早く烏一さんは自分のクラスに戻ってください!」
「見せてくれたら、帰ってあげますよ♡」
「気持ち悪っ。ダメだよ、天。こんなキモイやつの言うこと聞いちゃ、ていうか視界に入れるのもダメ。」
いつの間にか復活していた凪ちゃんにまた後ろから引き寄せられて目を覆われた。
視界が真っ暗になる。
「…せっかくやってもらえる機会だったのに、邪魔な犬ですね。はぁ、わかりました今回は戻ります。」
不機嫌そうな声で烏一さんはそう言ってから、離れていく足音が聞こえた。足音が遠のいくのを確認してから凪ちゃんは手を話してくれた。
「あっそうだ!天さん!ギルドに入る気はありませんか?」
離れていったかと思えばまた烏一さんがまた戻ってきた。
「ギルド?」
「そうです!それと遠藤さんも。どうですか?」
烏一さんはちらりと視線だけを凪ちゃんに向けた。
「無理、天もダメ」
凪ちゃんが即答で返した。
「遠藤さんはダメでしたか、天さんはどうですか?」
「うーん、ギルドってどういうところですか?」
烏一さんは待ってましたと言わんばかりに話し始めた。
「ギルドはですね。最近広まり始めたものですが、探索者達が集まって交流したり、チームを組んだり。情報を交換し合ったりする場です!それにギルドに入るとより強い敵を倒すほどにお金が貰えたり、ギルドから出されるミッションなどをクリアすればそれに見合った報酬を貰えたりしますし、ミッションをお金を出して張り出すことも可能です。あ、ミッションはギルドに設置されている広報板みたいなものに貼ってありますよ!ミッションをクリアしたりしていけば次第に階級が上がっていくんですが階級が上がるとその階級以上しか出来ないというミッションもありますし、自分自身の強さを示すことが出来ます!それに、必要ならば武器や服などを支給してくれたりもするんですよ!つまり、ギルドに入ることでお金や交流など様々なメリットが得られるんです!」
一生懸命に言ってくれたけれど長くて理解出来なかったな…多分凄いところなんだろうけど
「なんか凄いのかな?」
「長くて分かりにくい、簡潔に説明してくれます?」
「あぁ、おつむが足りないあなたには分かりにくかったですか。」
2人とも挑発しあっている。
「私は優しいので言って上げましょう。敵を倒すだけでお金を手に入れられ、無償で武器や服などが貰えるという事です。」
「最初からそう説明しろよ、分かりにくい」
凪ちゃんがボソッと吐き捨てるように言った。
「考えといてくださいね。ではさようなら!」
烏一さんは満足そうにしながら離れていった。
足音が完全に聞こえなくなる。
「天、あいつとは関わっちゃダメ」
「なんで?」
「天が何されるか分からないから」
「そこまで心配しなくても…」
バンッ
またしても勢いよく扉が開いた
「すみません!さっき烏一 千日を見ませんでしたか?」
扉を開けたのは黒髪の男の子だった。
「あっちに行ったよ。」
凪ちゃんがそう言って教えてあげていた
「ありがとうござ、はっ!君、昨日の!」
「チッ、話しかけないの方が良かった。」
…2人は知り合いらしい。凪ちゃんは烏一さんがいた時同様に不機嫌そうだ。
「君、名前を聞いてもいいか?」
「はぁ、教えたら帰ってくれますか?」
「わかった!」
この男の子押しが強いな…
「遠藤 凪。」
「凪か、いい名前だな!…そこの君は?」
そう言って私の方をちらりと見た、
この人も烏一さんと同じ青い目だ。
「先に、あなたの名前を聞きたいです…」
「あ、済まない、忘れていた!俺は光月
輝!千日の開いたギルドにいる!一応配信者をしている者だ!」
「光月さんですね。」
「そんな畏まらなくていいぞ、輝とでも呼んでくれ!」
「はい、わか…」
「早く帰ってくれない?」
そう言って凪ちゃんはまた、後ろから抱きついてきた。
「あぁ、すまんな!では、また会おう!」
「二度と来ないでください」
彼は早足で凪ちゃんの教えた烏一さんの向かっていった方向に歩いていった。
キーンコーンカーンコーン
始まりのチャイムがなった、生徒たちが各自の席に戻っていく、凪ちゃんもそれと一緒に自分の席に戻って行った。
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…キーンコーンカーンコーン
最後の授業の終わりを知らせるチャイムがなった。
「やっと終わった」
「天、言いたいことがあるんだけどいいかな?」
「どうしたの、凪ちゃん?」
授業が終わるとすぐに凪ちゃんが声をかけてきた、少しだけ気まずそうにしている。
「天、ごめんね。」
そう言って凪ちゃん深々と頭を下げた
「…」
「あの時、天が怪我をしたこともあるんだけど最近ニュースで地上にも敵が出るようになったって聞いて、神経質になりすぎちゃった…本当にごめんね。」
「…いいよ、許してあげる。」
そう言って凪ちゃんに向かって微笑んだ。
「っ!天、ありがとう!」
「でもね、次やりすぎちゃったらほんとーに嫌いになっちゃうかも」
そう言って、少し悪い顔をしながら凪ちゃんの顔を見た。
「もうやらないから、ごめんね…」
「凪ちゃんは1度言われたら出来る子って言うのは知ってるから。それに、私もあの時、怒ってごめんね」
そう言って私は凪ちゃんのサラサラの髪を撫でた。
「天は悪くないよ。」
「そう?」
「うん。」
「凪ちゃん…」
凪ちゃんの顔を見て視線を合わせる。
「ん?」
「これからも、よろしくね」
私は凪ちゃんの頭を撫でながら笑顔で言った。
「かわっ」
「凪ちゃん、雰囲気壊した!」
「ごめんね、天が可愛すぎて…」
「もう!またそんなこと言う!」
「ふふっ、天、これからもずっとよろしくね」
凪ちゃんは綺麗な笑顔でそういった。
…キラキラしてる
「よろしくね、凪ちゃん!」
それに応えられるように私も笑顔を向けた。