2、ダメ!
「凪ちゃん、私にも少しは戦わせてくれない?」
「危ないからダメ。また天の体に傷が着くなんて考えたくもないから」
私が怪我をした日から、凪ちゃんの過保護が悪化した。日常生活の中でもいつにもましてベッタリだし、ダンジョンでも戦わせてくれない。
前は少しだけど戦わせてくれたのに…
凪ちゃんが私のことを思ってくれるのは嬉しいんだけど、私だってある程度は戦えるもん!…凪ちゃんよりは弱いけど
凪ちゃんは華麗に敵をなぎ倒していく、私が前に出ようとすると、凪ちゃんはすごい速度で私の前に出る。
「ダメだよ、天」
「…むーっ」
もうっ、戦わせてくれないなら着いてきた意味ないじゃん!…
そう思って凪ちゃんを睨みつける
「…」
「天、ごめんね、怒らないで。」
「やだっ」
耳としっぽがしょんぼりと垂れている幻覚が見えるほどに凪ちゃんは悲しそうな目の前で見つめてくる。
「むーっ…許さないっ!たーたーかーわーせーて!そうじゃないと来た意味ないじゃん!」
「いや、天は私がついてないと家でも何があるか分からないから。」
「寝る時とかは別じゃん!」
「じゃあ、今度から一緒のベッドで寝ようか?」
「一緒に寝たいの?」
「まぁ、当たり前だよね」
「…戦わせてくれるならいいよ?」
「ダメ」
私が駄々を捏ね続けても、凪ちゃんは許してくれない。それに私は少しムッと来てしまった。
「もう、いいもん!私、帰る!」
「帰る?わかった、行こっか。」
「1人で帰れるから大丈夫!」
「危ないって言ってるでしょ?天、分かってくれる?」
「ヤダヤダ!1人で帰れるもん!」
私は駄々をこねる子供みたいに、凪ちゃんに向かって言った。
「天。」
凪ちゃんはいつもより少しだけ低い声で私の名前を呼んだ。
あ、これ怒ってる。
凪ちゃんは私にはいつも優しいが、その分怒ると凄く怖い。
でも、私は止まらなかった
「やだ!」
「天?分からない?」
「わかんないから!1人で帰れるもん!凪ちゃんは過保護すぎるの!」
「はぁ、天。駄々こねちゃダメ。」
凪ちゃんはそう言って私の頬を撫でた。
少しだけだけど威圧的な声…
それに更にムッと来て
「もうヤダ!凪ちゃんなんて嫌い!」
それだけ言い残して凪ちゃんの手を振り払って、全力でダンジョンの出口まで走った。
凪ちゃんは私に初めて言われたことに驚いたのか放心状態で追いかけて来なかった。
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「はぁはぁ、疲れた。」
幸い、出口まで敵に出くわすことは無かったが、全力で走ったからもう既に限界だ。
「お疲れ様です!あれ?夏風さん、今日は遠藤さんと一緒じゃないんですね。」
さすがに誰でも自由にダンジョンに行けてしまうと問題が起こるため、ダンジョンの出口には受付があり、入るにはライセンスが必要になる。
受付があるということは勿論受付嬢がいるということ、そしてこの人は受付嬢の鶴見さんだ鶴見さんはずっとここの受付の仕事をしているベテランであるため、私達がいつも一緒にいることを知っているのだ。
「そのー…ちょっと、喧嘩をしてしまって。」
「そうだったんですね、でもお二人が喧嘩するなんて珍しいですね?」
「色々ありまして…」
「そうですか…仲直りできるといいですね!」
「はい」
「あ!そういえばですよ、最近、敵がダンジョン外にも出没するようになったんですって。」
「えっ、本当ですか?」
「本当です。ですがとても低い確率だと思うのでそこまで心配しないでください。それでも、注意はしてくださいね」
「わ、わかりました。」
「では、お気を付けて」
鶴見さんとの会話を終えて私は家へ向かった。
さっきの会話もあって少し早足気味で歩いていると、
バーンッ
突然後ろから何か大きな音がなった。音の正体を知るために振り返ると…