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「リアル彼女?」  作者: でふ
最終羽

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13/13

カナリアの祝祭

 真っ暗な体育館。

 その体育館のステージにスポットライトが当たっていた。ステージでバンド演奏をしている中高生グループは全員で四人だった。その四人のバンド演奏に鳥たちが群がり、声援という名のペンライトを振っている。赤、白、黄色。その三色のペンライトが暗闇の中踊っていた。

「あ、北高生ですよね?」

 体育館の入り口では中高生の女の子たちがペンライトを配っていた。

「はい、これ。楽しんでくださいね」

 女子生徒はそう言って赤色のペンライトを渡してくれた。右腕には腕章が巻いており、「文化祭実行委員」の文字が見える。

「ありがとう。んじゃ、僕らからも」

 そう言って僕たち四人のサンタは背負っていた白い袋からプレゼントを取り出した。メリークリスマス。ステージの方向から歓声と拍手が聞こえる。どうやら一曲目が終わったようだった。僕たちも各々ステージ前の群衆の列に加わった。


 懐かしの楽曲から最新のロックまでグループバンドは演奏し、歌い上げる。僕も自然と赤いペンライトを振っていた。ステージのバンドグループを見るその目の端に、赤いペンライトを振るサンタ帽子の北高生たちが目に付いた。どう考えてもサンタさん目立つよな。僕はペンライトを振りながらちょっとばかし気恥ずかしくなってきた。

 周囲を見渡した時、その目の端に、見覚えのある横顔があった。少し離れてはいたが、間違いなく彼女だ。彼女は夏の学園祭で見たことのある女性生徒たちと一緒にバンド演奏を見ていたのだ。

「おいあそこ、見てみ」

 いつの間にか隣に中谷が僕に近寄っていて、僕の背中を小突いた。中谷は目線を彼女たちに向ける。知ってる知ってる。カリンさんと彩花さん、花音さんと沙良さんだろ? 彼女たちって仲良かったんだな…。

 僕たち二人はバンド演奏の最中、サンタたちに目配せを送った。無論、長代と短澤だ。彼らも気づいたのか、暗闇の中ペンライトを振りつつ、僕たち二人に近寄ってきた。

「ありがとありがと」

 長代と短澤はそう言って僕らの側にきた。男同士、意中の子がどこにいるのか教え合うのが礼儀だ。僕たち四人は変わらずバンド演奏に向かってペンライトを振る。が、どうしても僕の意識は斜め前にいるカリンさんにしか向いていなかった。


 ステージに当たったスポットライトの色が変わった。演者がギターとベースを持ち直し、ドラマーがスティックをドラムから離す。

「次で、最後の曲にしようと思います!」

 ボーカルの男子がそう言ってマイクに口を近づけた。

「聞いてください。GLAYで、Winter,again」

 周囲から爆発的な歓声が上がり、演奏が始まる。僕もその演奏を楽しみにペンライトを振った。しかし、演奏が始まるステージを見る目の端に、なんとなく嫌な違和感があった。カリンさんが他校生の男子に話しかけられているのである。

 僕はその様子が気になって仕方がない。周りを見ると、長代や中谷、短澤は演奏に夢中でこの非常事態にまるで気づいていなかった。

 落ち着け、他の男子に話しかけられるという事は、あまり考えたくはないが、もしかしたらカリンさんの彼氏かもしれない。カリンさんが他の男と一緒に文化祭に来ていた、そのためラインで一緒に行く相手がいると教えてくれた、そう考えてしまうのが一番手っ取り早い結論である。しかし、僕はその結論に納得ができずにいた。

 そわそわしている僕を尻目に、カリンさんの周りの女子生徒たちは、他校生の間に入って割り込んでいるように見える。しかし本当にそうだろうか。そう見えるだけで、実態は彩花さんも花音さんも沙良さんも、みんな他校生の男子と友人なのではないだろうか。とてもそのようには見えないが、僕には踏ん切りが付けずにいた……。

「…⁉︎」

 その時、僕の右肘の制服の端に、誰かが引っ張ったような感触を覚える。僕はこんな時に一体誰だと後ろを振り返る。

「…檸檬さん⁉︎」

 檸檬さんはペンライトを降らずに僕を真剣な目線で見てくる。

「早く、助けに行きなよ」

「え?」

 檸檬さんの瞳は真剣だった。

「前からカリンを付けてる男なんだよ。カリンが働いているファミレスもそうだし、学園にも付けていたの」

 僕は戸惑った。カリンさんの方を見ると、彼女の腕を他校生の男が引っ張っているように見える…。

「早く!!!」

 僕は群衆をかき分け、カリンさんたち南中学園のグループに近づいた。気づいたら僕はカリンさんの腕を引っ張り、体育館の外の中庭へと連れ出していた。額から汗が滴り落ちる。僕はカリンさんを見た。引っ張っていた腕は想像以上にか細く、それでいて儚く感じた。

「ごめん、居ても立ってもいられなくて…」

 僕はそう言って、カリンさんの腕を離した。二人の間に沈黙が流れるのが怖くて、僕は何も言えず、その場を後にしようとする。

「…待って」

 カリンさんは静かに、そう言った。僕はカリンさんの瞳を見る。僕は急いで白い袋をその場で開けて、プレゼントを取り出した。プレゼントは、羽休め喫茶でマスターからいただいた、あの日の珈琲だ。

「メリークリスマス」

 僕はそう言った。プレゼントをもらったカリンさんは、珈琲パックを抱きしめて、にっこりと微笑んだ。

「ありがとう。また、淹れるね」



 その日、僕はカリンさんと一緒に文化祭を回った。カリンさんと食べるクレープやタピオカドリンクはどれもピカイチの美味しさであり、校内のゲームブースやミニ脱出ゲームは白熱した。そして、一緒に見たダンスパフォーマンスや劇団員の舞台はとても華やかで、印象的だった。ただ、そう目に映るのは、好きな人と一緒にいれたからだと思う。僕はその時間を他の何よりも楽しく過ごした。そして、しっかりと告白をしようと夕方にライトアップされたクリスマスツリーの下に、カリンさんを誘ったけれど、カリンさんはうーん、という表情をしつつ、小首を傾げてみせた。

「まだ、だめかな」

 サンタは、沈黙した。沈黙して、その日はすごすごと北の国に帰っていった。



 年の瀬の最後の登校日、僕らはあいもかわらず北高の校舎裏でタバコを燻らしていた。結局、恋愛ってマジで難しいな。僕ら四人はその結論に至る。結論には至るが、納得はできない僕ら四人は、またも懲りずに作戦会議を実施するのだ。そして、次の大作戦の決行日を決めるのである。

「また制限時間付きか」

 短澤がそう言ってタバコをふーっと吹く。

「制限時間がないと、面白くないっすからね」

 長代が丸眼鏡をクイっと上げた。中谷もそりゃそうだ、と頷く。

「で、次の期限はいつですかい?」

 おどけた表情で言う三人の目線を他所に、僕はライン画面を開いていた。ライン画面にはピンクの桃アイコンが表示されていた。

「カリン:会って話したいんだけど、何時ごろ予定空いてる?」

 僕はいそいそと文字を画面に打ち付けつつ、「悪い、ちょっと予定あるから」と言って校舎に戻って行った。

 後方の校舎裏では男たち三人の乾いた声がこだました。


〜Fin〜






最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。


ぜひ、感想をお待ちしております。

次回作は秋・冬のテーマが終わったので、春のテーマで書こうと思います。

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