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「リアル彼女?」  作者: でふ
第十二羽

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12/13

真っ赤な帽子のサンタさん

「おーい、こっちだこっち」

 カナリアの門に近づいていった時、門のそばから声が聞こえた。僕は人混みの中にその声を探しつつ、ある異変に気付いた。カナリアの門の前に七人の中高男子生徒たちがずらっと横並びに立っている。そして、その周囲を北高生徒が取り囲んでいた。並び立つ七人の中高男子生徒の中央に見知った顔があった。

「…横田先輩!」

 そう、横田先輩が手を振っていた。僕は北高男子生徒たちの群れを掻き分け、先輩の前に立つ。

「事情はお前の友人たちからさっき聞いたぞ」

 横田先輩はそう言って目線を北高男子生徒に向けた。北高男子たちの中に、長代、中谷、短澤がすくっと立っている。彼らは僕を見て頷いた。僕は再度、横田先輩を見る。横田先輩の右腕には腕章が巻かれていた。「中部中心高校生徒会長」。そう書かれていた。

「紹介するよ、うちの生徒会のメンバーだ」

 横田先輩はそう言って、横一列にずらっと並んでいる中高男子生徒たちを見渡した。皆、一様に右腕に腕章を付けている。

 右から順に、

「中部中心高校生徒会広報」、

「中部中心高校生徒会書記」、

「中部中心高校生徒会副会長」、

「中部中心高校生徒会長」、

「中部中心高校生徒会会計」、

「中部中心高校生徒会企画担当」、

「中部中心高校生徒会福祉担当」、

と書かれた腕章を付けていた。そして一様に皆、腕を後ろで組んでいるようだった。僕は一体これから何が起こるのか、まるで想像ができなかった。

 すぅ、と横田生徒会長が息を吸って、周りを囲む北高生徒たちに向かって声を発した。

「皆、聞いてほしい。今からこの帽子と袋を配るから、それぞれ身につけてほしい」

 先輩の隣にいた生徒会メンバーたちが背中に回していた腕を前に移した。腕には赤い帽子と真っ白な袋の束を持っていた。

「これって………」

 僕は思わず、唾を飲み込んだ。

「今日はクリスマスイヴだろ? 皆がサンタに扮して思いの丈をプレゼントしてくるんだ」

 彼はそう言って、自身も背中に回していた腕を前に移した。真っ赤なサンタ帽子と真っ白な袋を取り出して、僕に渡してきた。

「今日は俺たちがサンタになる日だ」

 僕は目を見張った。周りの北高生徒たちを見ると、一様に目を丸くしている。そして男たちは周りの男たちを見渡した。見渡したのち、事態を飲み込んだのか、男たちはサンタに扮する決心をした。男たちは生徒会メンバーから帽子と袋を受け取り、身に纏う。カラスたちがサンタに扮した瞬間である。

「事前に北高一年生には北高の先輩たちを通じてうちの生徒会メンバーから通知しておいたんだ。通知が遅れたのが、北高で不良グループと言われる四人、君たちだったのさ。…ただまあ、間に合ってよかったけどね」

 横田先輩はサラッとそう言って微笑んだ。僕たちいつメン四人は困惑しつつ、各々頭を掻いたり遠くを見たりなどした。

「と言うわけで、一同解散!」


 この瞬間、中部中心高校に四十人のサンタたちが放たれた。放たれたサンタたちは白い袋に各々持ち寄ったプレゼントを入れ、意中の相手を探し出す。時刻は昼の十二時半を回ろうとしていた。サンタたちが動き出すには早すぎる時間帯だが、今日ばかりは致し方ない。昼のサンタたちはそれぞれ、いきなりアタックを仕掛けようとするが、時間帯が時間帯なだけに小腹が空く。腹が減っては戦はできぬ、と言うことわざのある通り、サンタたちは三々五々に散らばっていく。目的地はもちろん、校内から商店街に伸びる屋台の群れだ。


「それにしても俺らがサンタになるとはなー」

 中谷がそう言って頭に被ったサンタ帽子を触っている。

「全くっす。袋の中身見てみたら、たんまりとお菓子が入ってるし」

 長代が袋をこじあけてしげしげと入っている中身を見る。

「プレゼントを買い忘れた人たちに向けての粋な計らいなんだろうよ」

 短澤がそう言って自身の買ってきたらしいプレゼントを袋に押し込む。

 僕らはタピオカドリンクを片手に商店街から中高に向けてをぶらついていた。先ほどまで目に余っていた赤や緑、金色のような原色使いの風景は、まるで違った見え方をしていた。校内で打ち上がるバルーンアートでさえも気分を高揚させる。

「この後の文化祭のスケジュールってどうなってたっけ?」

 僕はタピオカドリンクをずーずー飲みながら、三人に質問した。

「さっき生徒会メンバーと話しをしたんだけど、十四時から体育館でバンド演奏とダンスパフォーマンスなんかがあって、同時並行でゲームブースや脱出ゲームが校舎内で開かれているらしいぜ。んで、十七時には中庭がライトアップされるってさ」

 中谷はサンタ帽子がお気に入りなのか、帽子の被り方を色々調整していた。

「んじゃあ、そろそろ体育館向かわないとな」

 僕たちはそう言ってカナリアの門に向かって歩を進める。道中、ちらほらと他県の高校生や高校生以外の人たちが屋台のそばで見かけるようになってきた。

「結構他校生も見かけるようになってきたっすねー」

「南中学園と違ってチラシが招待状になっているわけでもなさそうだし、商店街を貸し切っているわけだからそりゃあな」

 短澤がいつになく饒舌になっていた。

「あのー、写真いいですか?」

 中高女子生徒と南中学園女子生徒の二人組が、そう言ってスマホを片手に声をかけてきた。僕らはもちろんもちろん、と言って写真に写った。

「はい、これプレゼント」

 サンタたちはそう言って袋からお菓子を取り出し、女の子たちに渡していく。女の子たちは嬉しそうにキャッキャしていた。僕たちサンタも、心が何度か揺れ動きそうになる。が、それを必死に堪えて、言葉を紡いだ。


「「「「メリークリスマス」」」」


 僕も含めて男たちはサンタも満更でもない気持ちになってきた。

 その群衆の中で、僕は誰かさんに似ている女の子の後ろ姿を目で追ってしまう。遠巻きに数歩だけ近づいて違うことがわかると、僕はスマホを取り出し、ラインを起動した。もちろん、ピンクの桃アイコンの貴方に返信をするためである。

「僕:カリンさんのこと、ずっと好きだったよ。メリークリスマス」

 後になって思わず送ってしまった!! ということに身悶えするるのだが、やっぱり好きなものは好きだから致し方ない。僕はサンタたちと一緒にカナリアの門を潜り、体育館へと向かった。バンド演奏は既に始まっているらしく、体育館の外から歓声と熱気を感じる。四人のサンタは、道中プレゼントを渡しつつ、館内に足を踏み入れた。




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