表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/19

02. 世界の終わり────暴走と断罪

王が倒れ、すべてが静止した。

――と思ったのは束の間。

怒号と悲鳴が飛び交い、憎悪の視線が海詠人(ポエシア)の王へと集中する。


「……王を毒殺したのは、お前たちだ!」


海駆人(ロウファ)の側近が叫んだ瞬間、空気が変わった。

海詠人(ポエシア)の王は、目を閉じたまま何も言わない。

沈黙の裏にあったのは、深い悲しみか、それとも絶望か。

……そして、次の瞬間だった。


────世界が、揺れた。


理性が、ひとつ崩れる。

そのたった一瞬で、すべてが狂い始めた。

王族というだけで桁違いの魔力量を持つ海詠人(ポエシア)の王。

その魔力は普段、冷静な知性の元体内で緻密な魔力制御により完璧にコントロールされているはずだった。

だが、怒り、憎しみ、後悔、絶望。

あらゆる感情が一気に溢れ出した時──

制御を失った魔力が、空間を割くほどの“暴走”を始めた。


最初に気づいたのは、海詠人(ポエシア)王の側近と海駆人(ロウファ)の宮廷魔術師だった。


「──ダメだ、このままでは……!」


魔力の奔流は、まるで嵐のように世界を包み始める。

誰もが身をすくめ、祈るように立ち尽くす中────


ひとり、動いた者がいた。


「世界の崩壊など、させてなるものか!」


オーケリウムの王弟である。

彼は剣を抜き、光の壁(魔力)に包まれた海詠人(ポエシア)王のもとへと飛び込む。



最初の一撃は、跳ね返された。


「……まだだっ!」


彼は再び剣を構え、身体強化と重力操作の魔法を重ねがける。

全身の力を込め、最後の一撃を振り下ろした。



────剣は、王の首を貫いた。


ごとり、と何かが落ちる音。

防げなかった魔力は空へと放たれ、爆風のように広がっていく。

その場にいた魔術師が慌てて結界を張る。

けれど、すべてを守るには遅すぎた。

まばゆい閃光と、大地を揺るがす衝撃。

その場にいた者の半数は命を落とし、残る者たちも意識を失った。



────目を覚ました時、そこにあったのは、荒廃だった。

かつて魔法に満ちたこの世界は、

海詠人(ポエシア)の王が暴走させた魔力の奔流によって焼き尽くされていた。



こうして、ふたつの国の関係は断絶され、

世界は、決して戻らぬ分断と悲劇を抱え込んだのだった。




歴史は溶ける


永く、永い時の中で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ