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01:分断の始まり────毒と宴



────ハヴスボトム。

魔力が海に満ち、尾鰭を持つ種族が暮らす、美しくも儚いこの世界。

かつて、ここにはふたつの種族がいた。

ひとつは、優雅な尾鰭を持ち膨大な魔力量を誇る“海詠人(ポエシア)

もうひとつは、二股に分かれた尾を持ち俊敏さを誇る“海駆人(ロウファ)

それぞれの国────海詠人(ポエシア)の住まうスヴァルトシェレナと、海駆人(ロウファ)の住まうオーケリウムは、国こそ分かれていたが互いを尊重し、平和に共存していた。

……それも、歴史の遥か彼方に置き去りにされた昔の話である。

今となっては、両国は憎しみに満ち、互いの喉元に刃を押し当てこめかみに銃口を向けるような一触即発の状態のまま、対峙しているのだ。


始まりは────遥か数万年前の、とある事件だった。


その日、海詠人(ポエシア)の王はいつも通り、オーケリウムの海駆人(ロウファ)の王を訪ねていた。

杯を交わし、くだらない話に笑いあう──それが、いつもの光景だった。

けれど、静けさは一瞬で破られる。

「────ぐっ、う……!?」

ロウファの王が突然、血を吐いて倒れた。

「おい……!どうした!?」

鮮やかすぎる血が床を染める。

その異様な赤は、まるで海の底を切り裂いたかのようだった。


側近たちが悲鳴と共に駆け寄り、王の身体を抱える。

医師たちが呼ばれ、応急処置が始まるも──手遅れだった。

騒然とする中、海詠人(ポエシア)の王は別室へと隔離された。

そして、やって来たのは──武装した海駆人(ロウファ)の兵たちだった。

「何事ですか。王の御前でその格好は……あまりに無礼では?」

海詠人(ポエシア)の側近が抗議するも、海駆人(ロウファ)の兵は容赦なく剣を突きつけた。


「無礼で結構。我らが王は────……、つい先ほど崩御された」

「────なっ」

「よって、そちらの王を拘束させていただく」

「……理由を、お聞かせ願えますか」


突然の出来事に動揺するも、冷静に問いかける海詠人(ポエシア)の側近に、海駆人(ロウファ)の兵が怒りのままに叫ぶ。


「そちらが持ち込んだ酒に、毒が入っていたのだ!」

「……!?」


衝撃が部屋を走った。


「まさか……そんな……!」

「言い逃れはさせん。我が王を毒殺し、この国を手中に収めようとしたのだろう!」


こうして、誤解と怒りが連鎖し──

ふたつの国は、決して交わらぬ敵となった。


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