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王子様とオオカミお姫様  作者: 昼飯
3/3

八房視点


 じゃあ仕事終わったらすぐに連絡するねと言って教室を出ていったかおるを見送って、ため息をつく。

 仕事だって俺と付き合う前からやっていたし、かおるの両親が出した「モデルでも役者でも一番になれたら交際から結婚までを許す」という条件をクリアするために必死なのはわかる、俺だってかおると結婚したいって思ってるし。

 ……かおるは学業は最低限の出席率でも毎回成績は上位に入るから、俺だって婚約者としてしっかり勉強をしないといけない。

 なんていったって、かおるの素敵なお嫁さんになるには勉強だって大切なことだ! 知識として無駄になることはないから真面目に授業は受けてかおるに迷惑をかけないようにしないと。


 面倒だけど大切な授業が終わってから放課後になっても連絡がこない、真尋姉さんに連絡したら「インタビューは終わったけど急遽別の仕事が入った」らしい、確かに最近のかおるは仕事が急に入ったりして忙しそうにしてる。

 かおるの良さが周りに伝わるのはいいのだけど妬ける、妬けるしかおるがすごいって当たり前のことをさも自分が初めて発見したみたいに自慢する人に俺は昔から知ってるんだぞとかなりもどかしい気持ちになる、それにファンには優劣はないってかおるが言っていたので古参ファン面はしたくない。

 かおるの仕事現場に合流するか、それともかおるの夜ご飯の用意をするか……と悩みながら教室から出ると、ざわざわと玄関の方が騒がしくなっているのに気が付いた。

 かおるからメッセージは届いてないからこの騒ぎはかおる関係じゃない、ならなんだってこんなに騒がしいんだか。

 騒がしいのは苦手だからうんざりしながら玄関に向かうと、確かに人だかりができていてそこが騒ぎの原因のようだ。

 騒ぎの中心にはまぁまぁ顔が整っている女がいた、周りの声から相手はかおるも知らなかった逸美真央ってやつなんだろう、興味なんてない(かおるは気にした方がいいのかなって苦笑いしてたが)が騒いでると耳に入ってくるもんだ。


「逸美さんってモデルの逸美さんなんだよね?」

「ええ、そうなの……まだまだ駆け出しだけど……ね」


 なにがまだまだ駆け出しだ、自慢が滲んでるし上っ面に騙されてる周りの人には呆れることしかできない。

 あんなのに騒ぐほど大物でもないだろうに、とっとと帰ってかおるのためになにかした方がいいに決まってる、通り過ぎようとした時にあっ! と大きな声が玄関に響いた。


「あっ、あの!あなたは……!?」

「……あ?」


 話の輪の中心にいた逸美は唐突に俺に声をかけてきた、かおる以外に時間を使うのがもったいないというのになんなんだ。


「あの、お名前聞いても?」

「言ってなにか得なことあんのかよ」

「えっと、その、」

「逸美さん!その人は……!」


 周りを囲んでた女子生徒は慌てたように逸美に声をかけている、どうやら俺のことをただの不良だとして距離を置くようにと忠告しているみたいだ。

 別に俺のことはどう言われてもいいがかおるに悪評がつくのだけは許せない……だからって名乗る必要はないだろ。

 無視して帰ろうとした瞬間スマートフォンから着信音が流れた、この音はかおるだ!


『姫、今晩は外食にするかい?』

『俺が用意するから家で食べよう』


 些細なやりとりでも嬉しくなって気分が上がって、頬を緩めて下駄箱の靴を履き替えて夕飯のメニューを考える……今日はなにがいいだろう、中華はこの前出したから和食とかでもいいかな。

 そういえば近所のスーパーの特売は、と考えていると「ちょっと待ってよ!」と叫び声と共に右腕を掴まれる。

 なんだと思ったら逸美が俺の腕を掴んでぎゅっとまるで彼女かのようにすり寄ってきていて、ぞっとした。


「ねぇもう少しお話しませんか?」

「話すことはねぇよ、離せ」

「……姫?」


 ばっと声の方向に視線を向けるとそこにはかおるが立っていた、目はひんやりしていて冷たい。

 つかつかと周りの女子生徒がおびえるような顔のまま歩み寄ってきたかおるは俺の顔を覗き込むとふわっと微笑んで「帰ろうか?」とつぶやいてきた、この緩急のつけ方……さすがだ。


「……あんたは……!」

「おや?君は……誰かな?」

「……!!」


 ぐっと悔しそうな顔をした逸美は俺の腕を掴む力を強めて「勝手に決めないでくれます!?」と叫んだ、耳が痛い。


「ふふ、噛みつくつもりかい子犬ちゃん?」

「なっ!なにが子犬よこの性悪!!」

「……性悪?」

「自分は中性ですみたいなフリして、こんな男捕まえてさぁ!」

「ちょっ、逸美さん!?」


 ファンが知ったらどう思う!? とわめく逸美は本当にわかってない、ファンは全員俺との交際について知っているはずだ。

 それを聞いたかおるは困ったように眉を下げて苦笑いしていた、世間公認の交際関係だよと言ってするりとごく自然な手つきで俺の腕から逸美の手をはがした。


「そんなわけないでしょ!」

「あ、あの、逸美さん……それ、本当です……」

「はぁ!?」


 近くにいた一人の女子生徒がスマートフォンの画面を見せる、それはかおるのインタビュー記事で俺と一緒に撮ってもらったものの記事でそこには「高校を卒業した時に彼がいいと言うなら結婚したいと思っている」と大きく書かれている。

 その記事を見た逸美は目を見開いて愕然としていた、多分知らなかったんだろう。


「な、だって……それだったらなんでジェンダーレスモデルなんてしてんのよ……!!」

「それは私がそうしたいだけだよ」


 「性を超えた美しさを表現したい」、それはかおるが各所に言っていることでかおるの目標らしい。

 世間でもそれが受け入れられていて、時々俺もインタビューに番組にと連れられて話をすることが増えてきたのだが、そのプロポーズされる卒業の日までもうあと半年しかないってのにまだ花嫁修業はまだ終わってない! まだ学ぶことも多いのに!

 かおるは完璧だと言ってくれてるけど姉さんはまだまだだと言う、だからこそもっと頑張らないといけない。


「さ、姫……帰ろうか」

「おう」

「……」


 完封された逸美は俺らを睨むことしかできないようで、この隙に帰ってしまおう。


「……あ、かおる!近所のスーパーの特売わかるか!?」

「ああ、今日は魚が安いみたいだよ」

「それだったら和食の方がいいか」

「姫の料理は好きだからなんでも嬉しいね」

「だめだ、最近脂っこいのが続いてるからそろそろ食生活を整えないと」


 かおるの美肌を守るためにもしっかり管理しないといけない、それはファンたちにも言われているのできちんと締めるところは締めないといけない。

 けっこう食べるかおるは少し残念そうにしているけど、少しだけ肌の調子が変わったこともあって普段よりごねなかった。


「そういえば仕事は?」

「嫌な予感がしたから早めに切り上げたんだ」

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