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茫乎  作者: 犬冠 雲映子
7/9

際限2

「もういないよ。」


 あろうことか-唯々が眼前にいた。「唯々…?」

「バケモノも皆いなくなったよ。」

「ど…どういうこと…?ね、え」

 おかえり、今すぐにもそう言いそうな気色で彼女は言った。


「私が食べちゃったの。」


 食べた?理解出来ずに復唱してしまう。何を?何を言っている?

「三津子に記憶がないのは唯々が食べたから。お母さんもお父さんもペットも食べてあげた。」

 唯々は見慣れた朗らかな笑みを貼り付けたまま続ける。

「三津子がバケモノに襲われないのは唯々がいちばん強いから。」

「う、嘘だよね…?」 


「バケモノはね、みんなね。私が食べちゃったの。」


 三津子は弾かれたように、唯々から離れた。その足のまま走り出した。血と汚水と食べ物が入り交じる悪臭を振り払い、階段を駆け上がり-走って走って都市の合間を()う。

 このまま自分がバケモノになってしまったらどんなにいいだろう。理性を失い、何もかも忘れてしまえたら。

 感情に身を任せ、声をはりあげ-三津子は疾走した。


「はあ…はあ」

 かつて駅と呼ばれた建物にたどり着き、壁に寄りかかった。5本の指、擦り傷のついた皮膚、黒い髪…自身は「まだ」人間のままだ。

「どうしてよ…!どうして!」

 三津子は人間だった。今までも、これからも。

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