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ガラスめんこ

 パリーン


 窓割りゲームの時と同じ服装の鈴音先輩は、学校の駐車場に止めてある剛田先生の車の窓ガラスに、金づちを強く叩きつけた。車の窓ガラスは、蜘蛛の巣状の傷ができて、細かく割れた。鈴音先輩は、窓に割れずに残った大きなガラスを綺麗に割った。


「よし、いい感じの大きさのガラスができたわね。これを地面に置いてと。


 それじゃあ、淡島君、ガラスめんこのルールを説明するわ。ガラスめんこは、地面に置いたガラスを自分の持っているガラスを叩きつけて、ひっくり返すゲームよ。地面のガラスが割れたら駄目だから、そこを気を付けて、プレーすることね。


 ヘルメットと防護用の服、ゴム製のグローブに、厚底の靴。……オッケイ、淡島君も準備万端だね。じゃあ、私からやってみるね。」

 鈴音先輩はそう言うと、剛田先生の車のガラスをもう一枚割って、先ほどと同じ要領で、手ごろなガラスを作った。


「よし、いきまーす。」

 先輩は手に持ったガラスを地面に置いたガラス目掛けて、叩きつけた。


 ガッシャーン


 鈴音先輩が叩きつけたガラスは、地面のガラスに命中してしまい、どちらのガラスも粉々に割れてしまった。


「やっちゃった。淡島君は、私みたいに地面のガラスに当てないように気を付けてね。じゃあ、交代。好きなだけ窓ガラス割っちゃって。」


 僕は先輩から金づちを受け取ると、先輩が割った反対側の窓ガラスの端の方を上手いように金づちで叩いて、両手で持たないといけないほどの大きいガラス片を作った。その後、先輩が割った方の窓から小さなガラス片を選び取った。


「よし、先輩、見といてください。まず、この小さいガラスを地面に置いて、この大きい方のガラスを叩きつければ、地面のガラスがひっくり返りやすいはずです。いきますよ!」


 僕は小さいガラスをガラスの飛び散っていない地面に置いて、大きなガラス片を小さなガラス片に当たらないように、思いっきり叩きつけた。


 ガッシャーン


 上手いように、小さなガラス片に当てることなく、大きなガラスを叩きつけることができたが、大きなガラスが粉々に割れたことで、小さなガラスがどこに行ったか分からなくなってしまった。


「策士、策に溺れたね。地面のガラスがひっくり返ったか分からなくなっちゃったね。残念。


 もう、私の勝ちはもらったよ。」


 先輩はそう言うと、僕から金づちを奪い取った。


「君の作戦を参考にさせてもらうよ。君の作戦の唯一の弱点である叩きつけるガラスが割れることをどうにかすれば、勝利は確実ね。」

 先輩はそう言うと、フロントガラスに金づちを叩きつけた。フロントガラスはひびが入るだけで、穴が開かなかった。


「フロントガラスは車の横の窓ガラスよりも割れにくいようになっているの。だから、地面に叩きつけても、粉々にならない。」

 先輩は何度もフロントガラスに金づちを叩きつけ、かなり大きなガラス片を手に入れた。散らばったガラスのない綺麗な地面に、小さなガラスを置いた。そして、大きなフロントガラスを叩きつけた。


 大きなフロントガラスは、地面に叩きつけても粉々に割れることはなく、地面の小さなガラスに大きな風を送り込んだ。小さなガラスは空中で一回転して、見事にひっくり返った。


「やったー!私の勝ち~。やっぱ、私、ガラス系の勝負は強いなあ。」

「負けました。まさか、鈴音先輩に二連敗してしまうとは。まいりました。」

「ふふーん!お世辞でも、鼻が高くなっちゃうなあ。」

 先輩の顔は、ヘルメットでよく見えなかったが、胸をあからさまに張っていて、とても喜んでいる顔が容易に想像がついた。


「コラッ、そこのヘルメットの二人、何してる?」

 剛田先生だ。


「やば、先輩、逃げまs……」

 先輩はヘルメット越しに、自分の口に人差し指を当て、静かにするように言った。僕はその合図の通り、静かにすると、先輩は近づいてくる剛田先生に向かって、走っていった。先輩は剛田先生にかなり近い所で、右足を踏み切って、飛び上がった。


 先輩は身長が180cmある剛田先生を飛び越えるのかと思う程の高い跳躍を見せた。先輩は空中で、左ひざを曲げて、剛田先生の顔に飛び膝蹴りを食らわせた。剛田先生はそれを鼻にもろに食らい、後ろに倒れこんだ。


 着地した先輩は、その力なく倒れこんだ剛田先生のみぞおちに何発か拳を入れた。そして、先輩は剛田先生の目を無理やりこじ開けた。こじ開けた剛田先生の目は、白目をむいていた。


「よし、気を失ってるね。淡島君、逃げるわよ。」


 僕は一瞬の出来事に、頭が追い付かなかったが、とりあえず、先輩の言う通り逃げることにした。僕と先輩は、駐車場から逃げて、部室の窓から部室に入った。


 僕と先輩は走って、体が熱くなったので、防護用の服を脱いだ。先輩はヘルメットを取った後、そのジャンパーをじっくりと見て、僕に話しかけてきた。


「このジャンパー、玲奈ちゃんに似合うと思わない?」

 

 僕はこの時、鈴音先輩から底知れぬ狂気を感じた。

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