先出しクイズ
「答えは簡単です!」
机を挟んで僕の反対側に座っている結実が机に身を乗り出して、僕に顔を近づけながら、元気よく言った。
「昔は木や竹の札に書くためには、余計なことを省かなくてはいけないことが起源となる漢字が使われている物事が単純、時間がかからないことなどの意味を持つ熟語を何というでしょう?」
僕の答えを催促するように、結実は顔を近づけてくる。その顔からは、お前はどうせ分からないだろうという嘲笑が見て取れる。
「簡単。」
「……正解。」
結実は悔しそうな顔をして、その顔を遠ざける。
「じゃあ、二問目。まあ、まだ本気じゃないからね。次は容赦しないわよ。この問題の解答は紙に書くこと!」
そう言うと、結実はカバンからルーズリーフの紙を一枚とシャーペンを出してきて、僕の前の机に置いた。
「古代エジプト文明において使われたナイル川周辺に繁殖していたパピルスを加工したものやメソポタミア文明において使われた柔らかく湿った土を薄く成型した粘土板の代わりに、紀元前二世紀に、中国で発明された発明品とその用途を一文にして答えなさい。」
結実は先ほどのように、顔を近づけることなく、腕を組んで、自信満々な顔で、僕の答えを待っている。僕は机の上に置かれたルーズリーフとシャーペンを結実の下に返すように、置いた。
「紙に書くこと。」
「……正解。」
「なら、最終問題よ。このクイズは難しすぎるから、出すかどうか迷っていたんだけど、ここまで来たら、出してやるわ。今まで今言った二問のクイズを解いてきた人はたくさんいたけど、このクイズを答えら他人はいない。きっとここまで答えてきた淡島でも、今までの挑戦者と同じように、正解は分からないんだろうけど、まあ、このクイズを出してやるわ。
問題!
とあるサーカス団では、十匹の虎を飼っています。その虎は全員兄弟です。サーカス団の団長は、その虎たちに芸を仕込むために、火の輪くぐりをさせようとします。団長は、十匹の中からある一匹の虎を選び、火の輪くぐりをさせました。団長はなぜ一匹のある虎を選んだのでしょう?」
結実はもう僕が口を開く前から勝ちを確信したように、顔から笑みをこぼしている。僕は既に分かっている答えから理由を逆算する。しばらく考えて、僕は口を開いた。
「団長が選んだ虎は、十匹の虎の内、九番目に生まれた虎だろう。団長はとあるダジャレからその虎を選んだんだ。ここで重要なのは、輪をくぐるのは九の虎でないといけなかった。
では、簡潔に答えを言おう。
答えは、輪からナイン(9)だ。」
結実はその答えを聞いて、驚くように、口を押えた。
「正解。」
結実はしばらく驚いた後、僕に対して、拍手を送った。
「完璧だよ。淡島。君がこの先出しクイズの初めての完全制覇者だ。」
「それはとても光栄なことなんだが、一ついいか?」
「何?」
「この先出しクイズは、一見ゴミゲーのような体裁をしているが、普通に面白いゲームになってるぞ。なんか最初の二問は、教養になったし、最後の一問なんて、普通に良問なぞなぞになってる。ゴミゲーは、価値を生み出しちゃいけないんだ。ゴミゲーをやって残るのは、なぜこんなことをしてしまったんだという虚無感だけでいい。」
「なるほど、確かに、このクイズを友達にしたら、喜んでたわ。」
「八神先輩が言ってたんだが、世間のゴミゲーは、、俺たちの神ゲー、俺たちのゴミゲーは世間の神ゲーだそうだ。」
ゴミゲー同好会は、今日は神ゲー?を生み出してしまった。