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王立学園と少年剣士 1


 ***


 ところで、どうしてこうなった? というのが、正直な感想だった。


 会場はざわめいている。

 集められた、ガスールと同じような年齢の少年少女。


 明らかに裕福な家の出身だとわかるが、周囲の雰囲気に呑まれておどおどしている少女もいれば、一目で高貴な出身と分かる縦ロールの少女と表情の死んだ少年。


「……大商会の末娘に、公爵家令嬢、そして王太子殿下か」


 どの子どもにも共通しているのは、魔力値が異様に高く、何かしらの才能にあふれていることだろう。

 ここには、ガスールが大神官レザールから得た情報に記されていた、特異な祝福を受けた子どもたちが集められている。


「魔導の深淵、物語を分岐する令嬢、運命を左右する王」


 それにしても、幼い頃に夢見たような二つ名のような祝福だ。大人になって名乗るのは、あまりにも恥ずかしい……。


 ガスール本人は、大聖女を守る神託の騎士、だということからは、目を逸らしておく。


「神は遊び心で祝福を決めているに違いない。……まあ、死後英雄になる、よりはましか」


 少し離れた場所から子どもたちを観察していたガスール。

 ここに集められたのは、王国の命運を分ける可能性がある祝福を受けた子どもたちだ。


「しかし、学園に新たなクラスを作るとは……」


 そんな子どもたちを一カ所で管理することは、正しいのかもしれない。

 そして先ほど読んだ学則によれば、ここには、身分の隔てもない。


「それで、どういうつもりだ、レザール?」


 誰にも聞こえないように、ガスールは、隣に立つ大神官レザールに小声で問う。


「国王陛下は、以前から生まれによらず才能のあるものを登用したい、と王立学園の改変を計画されておられた」

「それと、俺がここに入学することに、なんの関係がある」

「……聡明な国王陛下が、秘密に気がつかないはずなかろう? それにあの魔法、酔った勢いで陛下と俺に、披露したことがあるではないか」

「ふむ、そういえば?」


 ガスールは、レイブラント辺境伯領で雇われる数年前、王位継承権争いで命を失いかけた現国王陛下を助けたことがある。

 その後、即位した陛下にガスールは妙に気に入られ、呼び出されてはレザールとともに酒を飲み交わす仲だった。


 ガスールが、レイブラント辺境伯領に雇われることになったきっかけも、陛下から当時の聖女、ファリーナの母親を護衛するように命じられたのが切っ掛けだった。


「それで? 今回の任務はなんだ」

「……子ども時代を満喫するように、と」

「は?」

「ついでに愚息を頼む、と」


 目の前に立つ子どもたちは、誰しもが個性豊かで、才能にあふれている。

 しかし、先ほどの3人は明らかに異質で別格だ。


「そうそう、一応入学試験があるが、ほどほどで頼むぞ?」

「……わざと落ちるという選択肢は」

「ガスール少年の推薦人は、ファリーナ様だ。恥をかかせることのないように」

「はぁ。なるほど、では三位あたりを目指すとするか」


 のちに王国で語り継がれることになる、学園の特別クラス、栄えある一期生。

 神託の騎士が、その一番初めに語られる生徒になることをまだ誰も知らない。


最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「魔導の深淵」はカッコいいし、「物語を分岐する令嬢」にはワクワクします^_^ 特に気になるのは「運命を左右する王」の魚の目!をした王太子殿下です♪ ガスール様とどう関わっていくのか楽しみで…
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