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12 Gates City ワールドガイド  作者: 澤群キョウ
職業あれこれ
6/50

迷宮都市の仕事

 迷宮都市には様々な商売をする人間が集っている。

 調査団が大きくなるにつれ、商売をする人間も増えていき、迷宮都市は大きく成長し続けている。

 

 ラディケンヴィルスで見られる主な仕事や業界事情は以下の通り。



・宿屋


 北東の大門付近には、初心者や貧乏商人向けの安い宿屋が。

 南の門付近には、富裕層向けの高級な宿が多く立ち並んでいる。

 安宿はほとんどが素泊まりで、一部屋に四~六人が泊まれる造りになっている。

 高級宿は部屋ごとに滞在できる人数は違うし、食事を運ぶサービスもある。

 体を洗う水場も部屋についており、外出しなくてもすべてがこと足りるが、安宿は共同の水場を外に設けているので、特に女性は利用を躊躇うのだと言う。

 良心的な宿ならば、衝立などの用意があるだろう。値段はピンキリで、かなり古い宿ならば一泊十五シュレール程度で済むだろう。

 安宿の呼び込みの仕事は競争が激しくシビアで、離職率が高い。



・食堂


 若者の多い迷宮都市では、安くて量が多い店が好まれる。

 迷宮で採れる兎肉を使う料理が最も多く作られており、鹿や猪は値段も高め。

 野菜や果物は街の外から持ち込まれるものなので、不作の年には値段が高騰する。

 近くに水辺がないため、魚料理は基本的には出てこない。

 様々な地域から商人がやってくる為、意外な珍品に出会えることもあるのが迷宮都市の良いところだ。



・食料品店


 迷宮で採れる肉を買い取る店は数多く存在しており、肉屋は多い。

 食堂に卸される他、保存食用に加工する工房も多く存在している。

 街の外から持ち込まれる青果や菓子、迷宮で採取される以外の肉類は、主に市場で取引されている。

 南門のそばは一日中なにかしら売る店が出ていて賑わっており最も有名だが、西側、北東にも小さな市場は存在している。



・花屋


 迷宮都市は探索者だけではなく、出稼ぎにくる若者も多い。

 特に店舗で働く少女は数多くいるので、出会いは多く、恋が多く生まれる街でもある。

 愛らしい少女に出会った時には花を贈ろうと考える青年は多く、市場には花屋も多く出店されている。

 大抵は近隣の農村からやって来た少女が店番をしていて、花屋の娘に恋をする若者も多いんだとか。

 裕福な商人のための豪華な花を用意する店もあるが、こちらは市場ではなく、専門の業者が存在している。



・薬草業者


 迷宮で採取された薬草、毒草を管理保管し、加工する専門業者。

 地上には存在しない効能のある薬草が発見されるため、業者たちは新たな薬品の開発に励んでいる。

 採取のためには迷宮を歩かなければならず、「緑」と「紫」の歩き方を日々研究している。



・衣料品店


 街が出来た当初は完成した服が持ち込まれて売られていたが、発展に伴い、デザインや縫製まで請け負う衣料品店が増えて居る。

 金のない若者向けに安い衣料品店は数多く存在しているが、商人や神官、腕の良い探索者たちのためのオーダーメイドの店も少なくない。

 恋の町である迷宮都市では、ライバルに差をつけようと着飾る娘が多くいて、女性向けの衣料品店はそれぞれに特色を出そうと工夫をこらしている。

 女性は華やか、男性はもっさり。若者に関してはこんなファッション事情があり、おしゃれな男性は一目置かれる。



・武具店


 探索者向けの武器や防具を売る店は数多く存在している。

 迷宮の中で発見される特殊な道具は、魔術師の鑑定が必須なので主に高級店が取り扱うようになっている。

 珍しい魔法生物の皮を利用した防具の作成を請け負う店もあり、人と違ったファッションに身を包みたい者は覚えておくといいだろう。

 女性向けの護身用ナイフの専門店もあり、価格帯は様々。

 希少な品が持ち込まれた時には周辺の店と情報を共有し、お互いに参考にしあう文化がある。 



・家具店


 貸家や売家、商人や商店を相手に家具を売る店は東と南側に集中している。

 店のマークや神殿の印などを入れた家具を作るオーダーメイドの店は多くあり、値段も高い。

 駆け出しの商人や貸家向けには中古品の販売も多く行われている。

 探索初心者や出稼ぎ労働者は、滅多に足を踏み入れることがないお店。



・不動産業


 腕の良い探索者や、裕福な商人向けの売家、貸家を販売している業者。

 建設業もセットで行っており、迷宮都市周辺や王都から職人を呼んで家を作らせている。

 探索者向けの不動産に関しては、住人が行方不明になった時の後片付けなども請け負う。

 貸家は入居時に数か月分の賃料を先払いする必要がある。

 売家は単純に高い。探索者向けは少人数用で小さく、商人用は使用人が住むスペース付きで大抵豪邸になるらしい。



・娼館


 街の北西にぎゅっと集まっており、娼館だけは他の地域には存在していない。

 娼婦や下働きを逃がさないよう、高い壁が建てられているのが大きな特徴。

 大抵は周辺の町や村から、借金のかたに売られた娘が働かされている。

 下働きは借金を背負わされた若者で、大抵が計算をごまかされて余計な労働をさせられている。

 娼館街向けの薬品開発を請け負う業者がおり、元気になったり、子供ができないようになる薬が売られているんだとか。

 大金を積めば、好みの娘を引き取ることができる。

 街の拡大にあわせ、マニアックな店も増えつつあるらしい。



・用心棒


 大抵の店が雇っている大男。強面で体格がよければ、本当は弱虫でも採用される。

 小さな店は共同で雇って、窃盗などの被害を未然に防いでいる。

 実際に窃盗犯が現れた時には、相手がどんな人間でもボコボコにしなければならない。

 女子寮や娼館にも用心棒は置かれている。ちょうどいいなり手が少なく、よその町でスカウトされる者もいるんだとか。 

  


・魔術塾


 魔術師が開いている私塾で、魔術を習うことができる。

 非常に専門的な授業の為、値段は高額。初歩的なものから、秘術である「脱出」まで教える店がある。

 これさえ覚えればくいっぱぐれない「湧水」の魔術なども教わることができるが、魔術を習得するには生まれ持った素質が必要。

 素質があるかどうかは魔術師は教えてくれないので、自身での見極めが重要になる。



・神官


 神殿に勤める神官たちの仕事は、神殿の維持や怪我人の回復などを請け負う。

 それ以外に、神殿の維持と、周辺の見回り、行き倒れの保護も行わなければならない。

 探索や仕事がうまくいかずに街の隅で倒れている者がいると、神殿に連れ込まれる。

 神官は彼らを休ませ、食事をとらせ、清潔な服を与えた上で、故郷へ戻るか新しい仕事に就くか世話をする。

 行き倒れが最も多いのは皿の神殿周辺であり、ついで石の神殿付近も多い。

 西の荒れ地で暮らす脱落者たちの支援もしており、神殿の位置によって負担は違う。



・医者


 怪我や病は神官が癒すものだが、迷宮都市では「迷宮で負った傷しか癒さない」というルールがあって、それ以外の困りごとは医者にかかる必要がある。

 建設現場での怪我人が主な患者だが、急な病や精神的な落ち込みなど、医者の世話になる者はそれなりに多いらしい。

 他の都市に比べて薬品の開発が盛んなため、効果の高い薬が用意できるのが迷宮都市の良いところだ。

 医者は街のあらゆるところで開業していて、住人たちの最後の砦として信頼されている。



・貸金業


 主に探索者になろうとした若者がなんらかの失敗をした場合、世話になる業者。

 仲間の怪我や死などを理由に金を借りる者が多く、特に生き返りの資金を借りた場合、ごく普通の労働で返すのは困難になる。

 娼館街などで強制労働をさせられることになった場合、外部との連絡は取れなくなる。

 髪が金色で美しい容姿をしていれば、専門の業者に引き渡され、魔術師の館に裸で並べられたりもする。



・回収業者


 数は少ないが、迷宮の中に落とした物を代わりに回収してくれるサービスが存在している。

 せっかく手に入れたのに諦めざるを得なかったもの、仲間の死体など、迷宮と階層によっては回収を頼める。

 回収業を始める為には探索の経験が必要で、頼む為にはあまり深い層ではないこと、荷物が多すぎないことなどが条件になる。

 できれば「脱出」を覚えた魔術師の協力を得られるようにしてから始めたい仕事だが、大抵の者は歩いて回収しに行き、歩いて戻ってくるという。

 かつて回収詐欺が横行したことがあり、現在は書面で契約書を交わしてから仕事を請け負うようになった。



・調査団員


 王都から派遣された兵士や学者たちで構成されている、迷宮調査団。

 給料はそれなりだが、仕事はあまりないらしい。

 初めて発見された物などの管理を請け負い、探索者の相談にも一応はのってくれる。

 新発見はあまり多くあるものではなく、閑職といって差し支えないだろう。

 王都から派遣される兵士は問題のある者が多く、厄介払いだと考えられている。


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