街の成り立ち
迷宮の調査を始めた学者たちは、穴の奥に人間を襲う敵性生物がいることを確認し、王都へ報告をした。
学者たちの護衛として同行していたラディケンを中心に、調査のための戦闘チームが組まれることになる。
後に名が与えられることになったが、最初に見つかった穴は「白」の迷宮だった。
明らかに魔術で動く仕掛けを持つ大規模な遺跡は貴重であり、調査すべきではある。
だが、王国の西の荒野周辺には水場がなく、水の確保ができないことが大きな問題になった。
迷宮の調査は中止すべきという議論もなされたという。
だが、ほどなくして発見された同様の穴についての報告があり、調査は継続されることになった。
二番目に発見されたのは「緑」であり、「白」よりは調査が容易であったことに加え、薬草類を採集できたことが重視された。
新たな効能を持つ薬ができそうだという報告が為されたためだ。
西にあるスアリア王国との境に近い位置での調査団の活躍に、商売人たちが気付いたのも同じ頃の出来事だった。
迷宮の中で見つかる珍品の臭いを嗅ぎつけ、小屋を建て、馬車を増やし、調査団へ手伝いを申し出た。
そのうち三つ目の迷宮である「青」が見つかり、「紫」の存在も明らかになった。
増えていく迷宮の調査を兵士たちだけで賄うのは困難だと判断がされ、商売人たちの出入りは自由になっていった。
危険な迷宮内部の調査のために、囚人たちを活用すると決められたのもこの頃だった。
管理の為の建物が必要になり、建築の専門家の派遣も決まった。
調査団の建物はその頃に作られたものだが、囚人用の狭い宿舎だけは老朽化のために壊されて残っていない。
ちなみに囚人たちは迷宮調査と引き換えに釈放を約束されていたが、半数以上が探索の中で命を落としたとされている。
商売人たちが数多く出入りするようになり、その中の一人が「湧水の壺」を持ち込んだことで、水問題の解決の糸口になった。
また、大きな交易所が出来たために人の行き来はますます盛んになり、仕事を求めて訪れる者も増えていった。
囚人を利用した調査が打ち切られ、調査団以外の人間が迷宮に入り込むことも多くなっていく。
治安の安定をはかる為に、神殿の建設もなされた。
調査団長ラディケンの妻になったバルバラが仕える流水の神殿が最初に建てられたが、その後、商人たちによって船の神殿も建設された。
迷宮は次々に発見され、すべてを王国で管理することは困難になっていった。
地上では決して見つからないものがあるところとして、「八つの迷宮」は王国中に知られていった。




