熱中症
私はまず川に向かう。このゴミだらけのスラムにある川なのだから、汚れているかと思ったが、水は見る限り綺麗だった。ミリエスは人があまりいないところへ行き、ドレスを脱ぎ下着で川に浸かり、自分の体とドレスを洗った。そして近くにあった木や石などを使い、火をおこす。まさかこんなところで、前世の中学時代の自然教室実習が役立つとは思わなかったが••••••。火が十分についたら、ドレスを近くに置き、乾かす。幸い気温も高くドレスはあっという間に乾いた。そして、ミリエスはスラムの中心に向かう。すると、スラムの子供たちが近寄ってくる。
「おねーさん! どこからきたの?」
「その服どーしたの?」
子供たちがしきりに話しかけてくる。しかも全員前世の6歳だった弟と同じくらいの背丈なのに、身体は骨と皮しかないんじゃないかってくらい細く、顔色も少し悪い。それを見て、哀憐の感情が押し寄せてくる。
「ちょっと、色々あってね••••••」
「そうなんだ〜」
「ねぇ君たちお母さんはどこにいるの?」
「家にいるよ〜。具合悪くて寝てるの〜」
「具合悪いの? お母さんがどこにいるか教えてくれないかな?」
「んー? いいよ〜」
子供たちがミリテスを母親の元に連れて行く。連れて行かれた先の小さな小屋のような家に、女性が一人、小さな布切れが沢山敷かれておる上に寝ているのが見える。
「大丈夫ですか?」
ミリエスが女性に話しかける。
「••••••」
女性からの応答がない。
女性の肩を優しく叩く。
「大丈夫ですか? 聴こえますか?」
「••••••」
やはり女性は反応しない。
ミリエスは少し女性の体を触る。女性の身体は異常に熱い。女性の爪を少し圧迫し、話して3秒程待つ。しかし、色が戻らない。
••••••どうしたものか。嫌な予感が的中してしまった。おそらくこの女性は重度の熱中症だ。私も医者ではなかったから、詳しくはわからないが、この気温の高さと症状からして熱中症でおそらく間違い無いだろう。だとするとやることはひとつだ。まず身体を冷やすこと。
「ねぇ、君たち後5人くらい連れてきてくれる?」
と、ミリエスは子供たちに頼む。女性を運ぶのに、そんなに大勢必要はないと思うが、このミリエスの筋力量も分からない上、痩せ細った子供たちと、気を失って重いであろう彼女を運ぶには念のため大勢いた方がいいだろう。
「連れてきたよ〜」
友達を連れて子供たちが戻ってくる。
「ありがとう! じゃあ、この人を川まで運ぶから手伝って!」
ミリエスと子供たちは女性の身体を持ち上げ、川まで運び、流されてしまわないよう、胸から下までに水が当たるように横にして寝かせる。
「ねぇ私は日陰を作るのに良さそうなものを探してくるから、君たちは、この人を見てて」
と、ミリエスは言い、川から去り、物を探す。だが、そんなに時間をかけてはいられない。いくら熱中症だとはいえ、長時間冷たい川に浸らせて置くのは良く無いだろう。だから、十分程度で戻り、女性を川から出したり、また冷やすために戻したりしなければいけない。その上、ミネラルも抜けてしまっているだろうから、塩や栄養、水分も取らせないければいけない。ミリエスはドレスの下の方をお腹あたりにある紐で縛り上げ、腕をまくり、動きやすい格好にして、必死に探し回る。