表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/847

95話 雲行き怪しいですが何か?

 試験三日目。


 前半は武芸の実技試験で、後半は面接の予定だ。


 リューは、前日の失敗?を取り戻すべく、気合いが入っていた。


 そんな中、実技を終えた受験者達の声が聞こえてきた。


「剣の実技の試験官、強すぎるよ!お陰で何もさせて貰えなかった。あれじゃ、剣で実技受ける奴、みんな落とされるぞ」


 受験資格はそれこそ、十二歳からあるのだが、受験者の中には二十歳前後の者もいる。

 その為、剣の実技には差が出るので、試験官はそれに対応する為一流の者である事が多い。

 今回の試験官はそれに加えて、時間を気にしてるのか、早め早めに終わらせようとしてる節があった。


「……最悪だ。昨日の失敗を挽回しないといけないのに……」


 リューは頭を抱えた。


「落ち着きなさいよ、リュー。相手が早く終わらせ様としてるなら、先手先手で攻撃して粘ればいいのよ!」


「攻撃こそ最大の防御だね!?確かに、リーンの言う通りだよ!攻めまくって時間を稼いで印象に残って見せるよ!」


 リューはリーンに感謝すると、気合いを入れ直した。



「次、受験番号1111番。得手は?」


「剣です!」


「では、そちらの試験官の前に」


「はい!」


 リューは元気よく返事をすると、問題の試験官の前に歩み出た。

 試験官から、模擬戦用の刃の無い剣を投げて渡される。


「……年齢は?」


 試験官は相手がまだ小さい少年なので、確認してきた。


「十二歳です」


「……来年また受け直せ」


 剣の試験官がそう言うと、


「では、実技試験始め!」


 と、号令がかかった。


 その瞬間、リューは一気に踏み込むと、距離を詰めて試験官に剣を突き付けた。


 剣の試験官はピクリとも動けず、目の前に寸でのところで止められた剣先に冷や汗をかきながら、


「参った……」


 と、一言、答えるのだった。


 えー!?終わるの早すぎるよ!……あ!わざと負けて終わらせるパターンもあるのか!


 リューは一瞬で実技試験が終わったので、自分の受験もこれで終わった事を悟った。


 隣では、リーンが弓矢で、動く的を次々に射て歓声が上がっている。

 あちらは絶好調の様だ。


 それを横目に、リューはショックにうな垂れながら、次の受験者に代わるのだった。




「リュー、どうだったの?」


 リーンがリューの元にやって来た。


「一瞬で終っちゃった……」


 リューはがっくりしながら、リーンに答えた。


「……えっと。……そうよ!まだ、面接があるからそんなに暗い顔しないの!最後まで諦めちゃ駄目。私も最後まで頑張るから一緒に合格しましょう!」


 リーンに気を遣わせる程、凹んでいたリューであったが、確かに最後まで諦めたら駄目だ。


 ランドマーク家の名を汚さない様に最後まで堂々としていよう!


 そう、自分に言い聞かせるリューであった。



「受験番号1111番の君は、ランドマーク男爵?の三男……?」


 面接官が、書類を見ながら、確認してきた。


「はい!そうです!」


「ははは。長男ならともかく、よく三男で受験させて貰えたね?」


 完全に小馬鹿にした物言いだった。

 集団面接方式なので、受験生が他に四人並んで座っていたが、他の受験生もそれに賛同する様にクスクスと笑っている。


「いくら、この王立学園が平等な校風で上も下も無いと言っても、万が一、万が一合格できても厳しいかもしれないなー」


 この面接官はどうやら、リューにターゲットを絞って、いびりにかかってきた様だった。

 日頃のストレス発散が目的か、それとも、面接に飽きたのか、ちゃんと面接をする気が無い様だった。


 この、試験官……!


 リューは微動だにせず、面接官の言う事を受け流しながら、内心、かなりお怒りモードに入っていた。


 あとで、住所調べて家の庭に、築百五十年の家を置いて来てやる!


 と、誓うリューであった。


「おい、そこの助手の君。ここの受験者達の簡単な試験結果がまだ届いてないよ?」


 面接官はどうやら、試験結果を見ながらリューをいじめるつもりの様だ。


「すみません、こっちの書類に挟まってました!どうぞ」


 助手の男性が面接官に慌てて試験結果の書類を渡す。


「本当なら、教えては駄目なんだが、早めに不合格は知っておきたいだろう。来年の受験の為に悪いところだけ指摘してやるよ」


 ニヤニヤしながら、面接官は書類に目を通す。

 そして、固まる。


 受験生達は面接官の様子に不審がった。


 面接官は、はっと正気に戻ると、リューの成績の書類とは別の履歴書に目を通し直す。

 すると、その後ろに一枚のメモが添えられていた。


「王家からの推薦状有り!?」


 面接官は思わず、口に出してそう言った。


 リューは一瞬何の事やらと思ったのだが、そう言えば、本当なら兄ジーロが以前、王家の推薦で受験する予定だった事を思い出した。


 どうやら、ジーロを推薦できなかった代わりに自分を推薦してくれたらしい。


 受験生達も面接官の言葉にざわついた。


「……と、まあ、こういう嫌がらせをする面接官もいるから気をつける様に」


 と、面接官は言い訳をすると、今度は丁寧に面接を始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ