第902話 冒険のメンバーですが何か?
ゴーキとフージンは、二人がかりでも敵わなかったばかりか、同時に拘束されてしまったので、改めて力の差を思い知る事になった。
「「参りました……」」
ゴーキとフージンは、どちらも、身動きが取れない状態で、負けを認めた。
「二人ともかなり良かったよ。特に、ゴーキ。自分の身を盾にしてフージンの攻撃で僕を倒そうとしたのは、いい判断だね。以前の君なら、自分で仕留めようとしたはず。仲間を頼るのは信頼の証。これなら、連れて行っても大丈夫そうだね」
リューは二人を合格とし、魔境の森の冒険に連れていく事を認めた。
「「本当ですか!? 若、ありがとうございます!」」
ゴーキとフージンを目を見合わせると、喜んだ。
二人とも、四十過ぎたおっさんなのだが、どん欲に成長しようとしている姿は、十代の若者のようだった。
二人とも、祖父カミーザに出会って、いくつになっても成長できる事を知り、不仲だった事も、その前には、些細な事だと割り切れているようだ。
「これで、おじいちゃん、僕、リーン、ゴーキ、フージンの五人でいいかな」
リューが指折り数えて、候補を確認した。
「主、なぜ自分は入ってないのですか?」
リューの護衛役であるスードが、自分が数に入っていない事に不満を漏らした。
てっきり、自分は当然参加だと思っていたから、なおさらである。
「スード君には、夏休みを上げようかと思っていたんだけど……」
リューは休日返上しそうな勢いのスードに、苦笑した。
「主の行くところには、自分も当然行きますよ!」
スードは、普段、主張しないのだが、置いて行かれそうなので、必死だった。
「……わかった。じゃあ、スード君も連れて行こうかな」
リューは、熱意に圧される形で、スードの参加を認めた。
そして続ける。
「でも、もう一人、回復役が欲しいかな? 治癒士として僕は半人前だし、リーンの負担が大きいよね?」
リューは、旅先で何が起きるわからない事を想定した。
「それなら大丈夫じゃない? セシルちゃんとハンナちゃんには、自宅で待機してもらえばいいんだし」
リーンが、もっともな意見を述べた。
「リューの『次元回廊』があれば、いつでも戻ってこられるからのう。わははっ!」
祖父カミーザも、リーンの意見に賛同した。
負傷したら、自宅に送り届ければいいのだ。
治療中、守る手間も省けるし、一石二鳥である。
「そうだった。じゃあ、この人数で、いいかな、おじいちゃん?」
リューはカミーザに最終確認をした。
「もちろんじゃ。このメンツなら、あの古代黒竜の、鼻を明かせるかもしれん」
普段大きく出る事も多いカミーザが、可能性を口にした。
少しは望みが見えたという控えめな表現である。
それくらい、戦った古代黒竜は強かったという事だろう。
「だが、全員、無理はしてくれるなよ? ハンナの特製ポーションも数に限りがある。儂は、折角孫から貰ったものを、これ以上、使いたくないからのう」
カミーザは、冗談交じりに、残念そうな顔をするのだった。
リューは、マイスタの街、バシャドーの街、両方に顔を出すと、夏休みの過ごし方について、責任者達に説明した。
執事のマーセナルとシルバは、案の定、心配した。
「若様、あまり、無茶をなさらぬよう。留守はいつも通り引き受けますが、あくまで私は、若様の執事です。主のいない屋敷を世話するつもりはありませんよ」
マーセナルは、いつにも増して、真面目な顔で、リューを諭す。
この辺りは大人の貫禄というところだろうか。
みんなを代表しての発言だったので、周囲の者達も代弁してくれたマーセナルに同意とばかりに、激しく頷く。
「あははっ……。もちろん、無茶はしないつもりだよ? まあ、その場のノリでどうなるかわからないけど……」
リューは、言葉を濁すしかない。
四大絶地である魔境の森は、甘い場所ではない。
命がけの冒険になるのはわかっている。
だから、無理せず帰ってくる事を約束はできない。
大幹部のランスキー、マルコ、ノストラ、ルチーナなども、言いたい事は沢山ありそうだったが、リューは早々に、バシャドーの街に向かうのだった。
バシャドーの街でも、執事のシルバから、苦言を呈される事になった。
「若君、いくら領民に慕われているとはいえ、領主になって日が浅いのです。あまり無理をして、みなに心配をかけぬようお願いします」
シルバは、本当にリューの事を心配している様子だった。
エンジ・ガーディー、ケンガ・スジドー、アキナ・イマモリーの三人も、気持ちは同じだ。
それに、『屍人会』、『新生・亡屍会』との抗争も始まったばかりである。
現在、バシャドーには、裏社会四組織同盟の成立により、各組織の代表者が滞在している。
『バシャドー義侠連合』、『竜星組』、『死星一家』は、リューの傘下だから、問題はないが、とりあえず、別組織として、一定の距離感は保っていた。
組織の下っ端もその事実を知らないから、血の気の多い『聖銀狼会』も含めて、問題が全く起きないというわけでないのだ。
「とりあえず、『竜星組』の代表としては、幹部のクーロンが滞在している。問題が起きたら、そこと話し合って。僕も、毎日、朝と夜、忙しい時は昼も顔を出すようにするからさ」
リューは元『屍黒』の大幹部だった現幹部クーロンの名を口にした。
今では、マルコの腹心として活躍しているクーロンは、頭もキレるし、腕も立つ。
大抵の問題は、シルバとエンジ・ガーディー達とクーロンでなんとかなるはずだ。
「わかりました。この街の結束力が試される時ですね。若君は安心して、祖父殿に尽力してください」
シルバは、リューが、祖父と祖母の為に、一肌脱ぐつもりである事を聞いていたので、「若君らしい」と納得はしていた。
「お願いね。でも、毎日顔を出すから、いつもとほとんど変わらないよ?」
心配するシルバ達に苦笑するリューだった。
「全員、情けない顔をしないで頂戴。リューが心配するでしょう? こんな時は、『こちらの事は心配ないです。姐さん、若君をお願いします』と言いなさいよ」
リーンがシルバ達に注意した。
注意されてから、言う台詞じゃないからね?
リューはリーンにも苦笑した。
「「「姐さん、若君をよろしくお願いします!」」」
エンジ・ガーディー達三人は、直立して、リーンにお願いする。
「それでいいのよ。私がリューを守らないわけがないでしょ」
リーンは、満足げに応じるのだった。




