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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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892/903

第892話 良い面会ですが何か?

 バシャドーの街が、今まで通りに動き出した。


 燃えた区域はすでに、再整備が行われ、マイスタの職人達の指導の下、新たな建築技術を入れて、新しい建物が続々建ち始めている。


 そして、ようやく最初の税収が街から納められ、リューのもとに報告がやってきていた。


「この街はみかじめ料の額が凄い……!」


「ミカジメリョウ……、ですか?」


「あっ、間違えた。税収ね?」


 リューは報告書を見て、嬉しい悲鳴を上げ、シルバは、まだ聞き慣れぬ言葉に、首を傾げた。


 街一つの月の税収だが、人口が一万人を超える土地である。


 ましてや西部、南西部、北西部から王都へと続く街道の集約地点でもあるから、人が自ずと集まり、お金を落としていく額はとんでもない。


 この街を代々伯爵位の人物が治めていたのも、わかるというものだ。


 それを今、ランドマーク伯爵の与力であるミナトミュラー家が治めているのだから、王家が寄せる期待も大きいという事を、改めてリューは実感した。


「若君、税収が多いという事は、寄り親に納める税金も高いという事なので、お気を付けください」


 シルバが、リューに助言した。


「だよね? 年末がちょっと怖くなる収入だもの。一年丸々だと相当な額になるよね?」


 マイスタの街も立地や人口を考えると、かなり税収のある街なのだが、バシャドーの街は、その数倍になる。


 税収が多いという事は、そこに集まる人や物資も多いという事だ。


 リューが任命した来賓統括担当官ケンガ・スジドーのもとには、各地方から王都に向かう為、立ち寄る貴族達が挨拶をしに、連日押し寄せていた。


 もちろん、貴族だけでなく、各地方の商会や有力者なども挨拶に来るのだから、大変さはリューも想像を絶するところだ。


 その中で、有力な貴族や商人については、担当官であるケンガ・スジドーから、面会申請が上がってきたりする。


「若君、今日は、ルトバズキン公爵の与力貴族から面会申請が来ています」


「ルトバズキン公爵の? わかった、午後の執務時間を割いて、予定に入れておいて」


「わかりました」


 シルバは頷くと、予定表を書き換えるのだった。



「……。──初めまして。私はルトバズキン公爵の与力、ヤリク・シリアズキン伯爵と言う」


 まだ十代と思われる、ヤリクと名乗った若いシリアズキン伯爵は、応接室に入るなり、立ち止まってリューをじっと見た。


 だが、すぐに席の前まで進むと、自己紹介をした。


 オレンジ色の髪に、黄色の目、身長は高い。


 線は細く見えるが、歩き方から、武術に長けている人物と、リューは睨んだ。


「こちらこそ、初めまして。私はバシャドー領主のリュー・ミナトミュラー子爵です。シリアズキン伯爵は、確か……、ルトバズキン公爵のご子息ですよね」


 リューは握手を求めた。


「ああ。その通りだ。私は次男だがな。──うん、噂通りみたいだ」


 ヤリク・シリアズキン伯爵は、近くでまた、リューの目をじっと見ながら握手を交わす。


「……噂通りとは?」


 リューは聞き流そうとも思ったが、好奇心が勝った。


「子爵は、戦闘に長けているという噂を聞いてな。なんでも、チンピラ相手に大暴れしたとか?」


 ヤリク・シリアズキン伯爵は、握手の手を離さないまま、目をリューから離さない。


「はははっ。お恥ずかしい事ながら、就任早々、賊に、この街を燃やされる事態に陥りまして……。その為、僕自身が出て、討伐を行ったのは事実です」


 リューは苦笑してみせた。


「そうか。ランドマーク伯爵には勿体ない人物だと思ったが、確か三男だったか?」


 ヤリク・シリアズキン伯爵は、握手する手に力を入れた。


「はい。うちの父は、尊敬に値する人物です。愚息の僕などは足元にも及びません」


 リューは親を悪く言われたと感じ、握手する手に力を入れ返した。


「謙遜するな。兄弟の中でも、頭角を現すのが早かったそうではないか。すでに親を越えているのでは? という話もある」


 ヤリク・シリアズキン伯爵は、握手する手にさらに力を込めた。


「はははっ。それは大袈裟な事です。兄達は、僕とはまた違う実力者です。僕は兄妹の中でも、才能は一番ないかもしれません」


 リューは眉一つ動かさず、握る手に力を籠め対抗する。


「謙遜が過ぎると、侮られるぞ?」


 ヤリク・シリアズキン伯爵は、こめかみをピクピクさせた。


 握る手に相当力を込めているようだ。


 リューは内心、このヤリク・シリアズキン伯爵が相当な実力者であろう事を、理解していた。


 握力もかなりあるし、軽く引いたり押したりして、バランスを崩そうとしても、柔軟に対応していたから、体幹も強そうだ。


「今日は部下に任せず、赴いた甲斐があったようだ」


 急にヤリク・シリアズキン伯爵は、手の力を抜く。


「それは良かった」


 リューもすぐに、その手を離す。


「私の握力に対抗できる者はそうそういない。いるとすれば、父や一部の者くらいだろうな。ミナトミュラー子爵、気に入ったぞ。父にも良いように伝えておこう」


 ヤリク・シリアズキン伯爵は、楽しそうに笑みを浮かべた。


 どうやら、最初からリューを試すつもりだったようだ。


「僕はともかく、父ランドマーク伯爵の事を、よろしくお伝えください」


 笑ってリューは、応じた。


 一応、ヤリク・シリアズキン伯爵の事は多少調べてあった。


 歳はまだ、十七歳。


 西部地方の学校で、首席卒業。


 槍の使い手であり、『神槍ヤリク』のあだ名で敵に恐れられる人物だ。


 戦闘狂で知られるルトバズキン公爵に、一番似ていると言われており、武闘派の者を好む傾向にあるらしい。


 その人物に気に入られたのは、良かったかもしれない。


 これから、エラインダー公爵を敵に回そうかとしている最中である。


 ルトバズキン公爵派閥には、味方にできなくても、敵にならなければ御の字だった。


「よし、ミナトミュラー子爵。二人の時は、私の事をヤリクと呼んでいいぞ」


 ヤリクは、リューの事を相当気に入ったようだ。


 下級貴族に名を呼ばせる事など、普通ありえない。


 それも、公爵家の次男である。


「ヤリク殿、それでは僕の事も、リューとお呼びください」


「わかった、リュー。今日は会えて良かったぞ。──あっ、そうだ。これは、忠告だ。あまり、好き勝手にやらないようにせよ。見ている者もいるからな」


 ヤリクは、意味ありげに言うと、早々に出ていくのだった。



「最後の忠告が気になるね……」


 リューは苦笑する。


「ルトバズキン公爵に目を付けられたのか、エラインダー公爵のような人物の事なのか……。どっちにしろ、あまり嬉しくないわね」


 リーンも予想すると、苦笑した。


「でも、ヤリクとは、いい感触だったから、良かったよ。立地が良いだけで、こんな出会いがあるもんなんだね」


 リューは、バシャドーの街の領主として良い出会いがあった事に、満足するのだった。

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