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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第890話 一兵卒を願いますが何か?

 ヤン・ソーゴス捕縛の為に派遣された帝国軍の部隊は、リュー達によって、壊滅状態になっていた。


 これには通報した村長も震え上がる。


「この村の為に尽くした人物に対し、この仕打ちはないでしょう」


 リューは、部下が生死を彷徨うような重傷を負っている事もあり、怒りを滲ませて村長に詰め寄る。


「ひぃー! わ、私は監視するように命令されていただけなんです! ヤンに面会した貴族の子息がいた事を報告したら、軍が勝手に危険視したのであって、私の判断では……!」


 すでにリーンが、村の出入り口にいた隊を、一人で壊滅させていた事もあり、村長の恐怖はリューとリーン、ヤン・ソーゴスがやってきた時点でピークに達していた。


「……あなたは、ヤン閣下が村人に慕われている事に、嫉妬していたそうじゃないですか。上への報告内容もかなり私情が入っていたのでは?」


 リューは監視させていた部下から、村の状況や村長について数日分の報告を聞いていた。


「そ、それは……」


 村長は、図星をつかれて、言葉に詰まる。


「残念ですが、あなたの通報によって、この南部の帝国軍は、ヤン・ソーゴスの抹殺と共に、この開拓村の者達全員の口封じを考えていたようですよ?」


 リューは、部隊長が懐に入れていた命令書を、村長に差し出した。


「そ、そんな馬鹿な!? ──私まで始末する対象になっていたとは……」


 村長は命令書を読むと、内容にショック受けて腰砕けになり、座り込む。


 ようやく自分が、私憤にまみれた報告書を軍に送ったせいで、村全体が危機に陥っていた事を知った。


「僕は手を下しません。ヤン閣下も同じです。あとは全て、村人の手に委ねます」


 リューが振り返って村長宅を出ると、その表には、村人達が集まっていた。


「こ、これは誤解なんだ! 軍上層部がまさかこんな風に誤解するとは──」


「黙れ、クソ野郎! あんたが、ヤンさんに嫉妬して、村全体が毒されているなんて報告すれば、軍も危険視するのは当然だろうが!」


 村人の一人が、村長の書いた報告書の一部を手に、怒りを口にした。


 どうやら、部隊長は命令書と共に、村長の報告書も持参していた。


 それをリューが、村人達に読み聞かせたのだ。


「ち、違うんだ! その報告書は、偽物で──」


 村長が苦しい嘘の言い訳をすると、村人達の怒りのボルテージは上昇する一方だった。


 リューとヤン・ソーゴスが、自分達が話をすると抑えていたが、歯止めが利かなくなる。


「あなたは、選択を間違えた。言い訳でなく、まずは謝罪するべきでした」


 リューは、ヤン・ソーゴス、リーン、スードに下がらせた。


 村人達は、それが合図とばかりに、棍棒や鉈、斧を持った村人達が、村長を取り囲んでしまうのだった。



「ヤン閣下。あなたは森で一度死んだと、思ってください。それが、この村の為にもなります」


 リューは、村の外れで、ヤン・ソーゴスに今後について説明を始めた。


「……そのようですね。私が、帝国軍を道連れに、森で大規模な火計を行った、という形が、村人達の命を助ける事になるでしょうから……」


 ヤン・ソーゴスは、リューの策をすぐに理解した。


「ええ。それが良いかと……。ヤン閣下は死に、晴れてあなたは、新たな人生が送れますよ。おめでとうございます」


 リューは笑顔でヤンの新たな人生を祝した。


「ありがとうございます。ですが、それよりも、モーブ殿は、無事でしょうか?」


 ヤンは、最後まで自分を守ろうとしてくれたリューの部下を心配した。


「……王都にあるランドマークビルに送り、うちの家族に治療してもらっていますが、あの傷ではどうなるかわかりません……」


 リューは、楽観的な事は言えない程の怪我を、部下が負っていたので、事実のみを伝えた。


「……」


 ヤンは、リューの優秀な部下を、死なせるかもしれない事に責任を感じ、言葉に詰まった。


「ヤン閣下、気にしないでください。うちの部下は死ぬ覚悟を持って、僕に仕えてくれています。あなたを助けたのも、僕の命令に従っての事。あなたが気に病む事ではありませんよ」


 リューは、ヤンの肩の荷を降ろしてあげる為、優しく微笑んだ。


「……リュー殿。これから私の事は、ヤンと呼び捨てにしてください。モーブ殿の代わりとして、私はあなたのもとで、一兵卒として働きます」


 ヤンは、リューの眼前で片膝をつくと、忠誠を誓う。


「……ヤン。これからよろしく。でも、うちは、忙しいからね。一兵卒ではなく、もっと忙しい地位で働いてもらいますよ」


 リューは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「そうよ。リューに仕えるなら、その才能を発揮できるところで、頑張ってもらわないと」


 リーンもニヤリと笑みを浮かべた。


「……なんだか怖いですが……、──わかりました。仰せのままに」


 ヤンは苦笑すると、深々と頭を下げるのだった。



 リューは村の住民達に今後の対応について助言した。


 村人達は、リューの説明を聞いて、安堵した様子を見せる。


 彼らにとって、行く当ても無いし、住み慣れた帝国を離れる気にもなれなかった。


 ただし、奴隷の獣人族二十数名は、リュー達に付いて行きたがった。


 それはそうだろう。


 人以下の扱いをされている身である。


 これ以上最悪な状況はない。


 ならば、命の恩人に付いて行って役に立つ方が、まだ、真っ当な死を迎えられると思ったのだ。


「君達は同胞を助ける気はあるかい?」


 リューが奴隷達に聞く。


「「「そんな事ができるなら、もちろんです」」」


 奴隷の獣人族達は、声を揃えて頷いた。


「じゃあ、君達は、うちの『赤髪竜狼一家』が引き受けるよ」


 リューは頷くと、『次元回廊』で早速、帝国南東部に本部がある街に奴隷達を運び、『赤髪竜狼一家』のボスを務めるウルガに任せるのだった。



 ヤンの方は、ランドマークビルに連れていった。


 ヤンにとって、もう一人の恩人であるモーブの安否を確認する為である。


 夜中に眠気眼の中、治療にあたっていた妹ハンナのお陰で、モーブは一命を取り留めていた。


 ただし、傷が深かった事もあり、現場復帰は難しいかもしれないとの事だ。


 それでも、ヤンは安堵するのだった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


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