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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第859話 仲介してもらいますが何か?

 バシャドーの領主就任後の仕事は、大変なものだった。


 まず、代官と執事がいなくなった事で、引継ぎが出来なくなった事、要職には代官の息のかかった者が就いていた為、代官の処罰後、その者達が逃亡した事も問題となっていた。


「領兵隊長は、そのままバトゥ隊長に任せるとして、他の空いている席を決めないといけないなぁ」


 リューは未承認の書類が滞っている事に気づいて、頭を悩ませた。


「執事はわかるけど、商業統括担当官、来賓統括担当官、税務統括担当官とかマイスタの街にはない役職ね」


 リーンはリューの背後から書類を覗き込んで、一部の役職を読み上げた。


「マイスタと比べてかなり大きな街だから、人もお金も物も動く規模が大きい。だから分野別に担当を決めてある程度任せないと、動きが止まるんだろうね」


 街の雰囲気は数回足を運んでいたので、リューも多少理解できていた。


 同時に、管理が大変だろうなと予想はしていたのだが、代官以下、汚職に関わっていた者達が消えた事で引継ぎも無く、一気に仕事が押し寄せている状況だった。


「じゃあ、マイスタから誰か連れて来て任せる?」


 リーンが、一時的な解決策を口にする。


「いや、地元の人間じゃないと、内容を把握するだけで時間がかかっちゃうよ。かといって、僕では知っている地元関係者はほとんどいないんだよなぁ……」


 リューは腕を組むと考え込む。


「あっ! 一人、お願いできる人いるじゃない!」


 リーンが報告書をいくつか見ながら、ある報告書に目を止めた。


「どの担当官に相応しい人?」


 リューは、リーンの手許の報告書を覗き込む。


 そして、知っている名前に目が留まった。


「あっ! 忘れてた! そうか、今、ここに本店移動させているんだったよ!」


「これで商業統括担当官の枠は、任せられるわね」


 二人の目に留まったのは、とある商会の今月分の納税報告書だった。


 商会名は、『白山羊総合商会』、会長は『シーツ』とある。


『白山羊総合商会』とは、リューの傘下にある商会の一つで、元は『屍黒』のボス、ブラックが身分を隠して運営していたものだった。


『屍黒』の崩壊後、リューがそのまま引き継ぎ、『竜星組』の会長代理マルコの部下としてついていた元執事のシーツに会長を任せた商会である。


 その商会は、地方に強いので、交通の便が良いバシャドーの街に本店を移転させていたのだ。


 だから、会長であるシーツはバシャドーの関係者にも顔が利く、うってつけの人物と言えた。


「でも、問題もあるんだよなぁ……。シーツは大商会の会長。そっちの仕事があるから、領主の下で仕事をさせるというのは、表向き、筋違いの話だよね……?」


 リューの心配はもっともだった。


「じゃあ、シーツにうってつけの人物を、紹介してもらうしかないわね」


「そうだね。一応、ミナトミュラー商会とは商売を通じて顔見知りという設定ではあるから、面会して相談するのも疑われないか。そうしよう!」


 リューは思い立つと、『白山羊総合商会』に使者を出すのだった。



「若様、改めまして、この度はバシャドーの新領主就任おめでとうございます」


 シーツは応接室に通されると、まずは祝辞を送った。


「ありがとう、シーツ」


 リューはこの裏方として能力を発揮しているシーツを高く評価していた。


 マルコのサポートをしていた時もだが、今も商会長として、うまく立ち回ってくれている。


「それで若様。今日はどのようなお呼び出しでしょうか?」


 シーツは真っ当な商会の会長として、表向きは仕事をしている為、リューとの接点は商会同士の付き合いに限られていた。


 今回は領主の肩書で呼ばれていたので、それが気になっていたようだ。


「実は──」



「なるほど、そういう事でしたか……。この街で商業全般に詳しく、且つ、商会に属さない優秀な人物……。そういった者がいたら、うちに欲しいくらいです。はははっ」


 シーツはリューの無理な注文に冗談を言うと笑う。


「やっぱり、難しいか……」


 リューも無理な事を言っている自覚があったので、苦笑する。


「いえ、いますよ。さすが若様というべきか、とてもいいタイミングでのご依頼です」


 シーツは、にこやかにリューの運を褒めた。


「えっ? いるの!?」


「はい、もちろんです。……というか、私も最近、交流を持つ機会があり、若様にどう紹介したらよいものか考えていたところなのですよ」


 シーツは問題が一つ解決しそうだと、安堵した様子を見せた。


「それで、どんな人?」


「はははっ、若様も名前くらいは知っていると思いますよ。『バシャドー義侠連合』大幹部の一人で『バシャドー商人護衛連隊』代表のアキナ・イマモリー殿です」


 リューの食い気味の問いに、シーツは笑って応じた。


「「ええ!?」」


 リューとリーンは予想外の名前に驚くのだった。



 シーツは商人としてこの街に移住しているが、これまではアキナ・イマモリーとは接点が全くなかったのだという。


 というのも、『白山羊総合商会』は、自前で護衛隊を持っていたので、『バシャドー商人護衛連隊』に頼る機会がなかったからだ。


 それにシーツは他所者という事もあり、アキナ・イマモリーとは接点が作れずにいた。


 そこで接点を作る為、最近、この街の裏社会が騒がしくなっていた事を利用した。


 連日、『屍人会』、『新生・亡屍会』の攻勢に義侠連合も苦戦していた事を、である。


 シーツはアキナ・イマモリーの縄張りに、自前の護衛隊の宿舎を急遽用意し、タイミングを計ると、抗争の最中に助っ人として、応援に向かわせたのだ。


 これが、とても効果的だった。


 仲間を助けられたアキナ・イマモリーから感謝状が届き、昨晩、ようやく一緒に食事ができたのである。


「この街でやっていくなら接点を作っておきたい、と思っていたので良かったです。若様との接点は商会同士の付き合いでお願いされた、と正当な理由もありますし、引き合わせる事に問題はないかと」


 シーツはリューの役に立てそうだと、安堵するのだった。

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