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【8巻予約開始!】裏稼業転生~元極道が家族の為に領地発展させますが何か?~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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85話 緊張してますが何か?

 年が明け、リューとリーンの受験が近づいてきた。

 王都までの距離は馬車で三週間もかかる距離なので余裕をもって出発しなければならない。

 なので、出発を前にリーンの荷物はすでにリューのマジック収納にいれてある。

 もし何か必要なものが出ても、リューに『次元回廊』で取りに戻って貰えばいいので気楽なものだ。


 問題は、受験そのものだ。


 王都は国内最高クラスの優秀者が全国から集まってくるという。

 リーンも沢山勉強してきたが、合格できるかどうかは受けてみないとわからない、というのが勉強を見てくれた母セシルの弁だ。


 ランドマーク領で王立学園のレベルを知っているのは唯一、リューのスキル鑑定をしてくれたサイテン先生だけだが、その先生は今、王都に戻っていて聞き様がなかった。

 実にタイミングが悪い。

 リーンは、性格上、やることをやってそれで結果が出なかったらそれまでで、仕方が無いと切り替えるタイプだったが、今回は緊張していた。

 もし、リューだけ合格して自分だけ落ちたらどうしようかと、心配していたのだ。

 そうなると、リューは王立学園は諦めて、スゴエラの街の学校に行く事になっている。

 さらには、王都進出の話も無かった事になるのだ。

 責任重大だ。


「リーン、顔色悪いけど大丈夫?」


 リューがリーンの顔色を気にして声をかけた。


「大丈夫よ。ちょっと不安になっただけ」


「ああ。受験はなるようにしかならないよ?これまで頑張ってきたんだし、合格はしたいけどね。お互い落ちてもそれはそれでいいんじゃない?一緒に、スゴエラ領都の学校に行けばいいよ。あ、その時は、二人とも成績で一位二位を取ってランドマーク家は凄いんだとアピールしよう」


 リューはリーンが珍しく緊張しているので緊張を解そうと声をかけた。


「……そうよね。落ちてもそういう道があるものね」


「うん。緊張して本領を発揮できずに終わるより、後悔しない様に全力を出しきって落ちて来ようよ。ははは!」


 リューが笑うと、リーンは緊張が解れてつられて笑った。


「全力だして落ちるんじゃ意味ないじゃない!ふふふ」


 二人は笑うと翌日、みんなに見送られてランドマーク家を後に王都に旅立つのであった。




「……なんて笑っていた時期がありました」


 リューとリーンは馬車に揺られながらため息をついた。

 馬車に一日中揺られる日が、すでに一週間経っていた。


「やっぱり、片道三週間は気が遠くなるわね」


 リーンが、座る位置をずらしながら言った。


「本当だね。もう少し行ったら、街道沿いに村があるらしいからそこで休憩しようか」


 リューも座る位置をずらすと答える。


「ファーザ君やジーロが、このリューが設計した馬車じゃない旧いタイプで往復したなんて信じられないわね」


 父ファーザとジーロが、ランドマーク家が刺客による襲撃を知って、旧い型の馬車で強行して帰ってきた時の事は笑い話になっていた。


 リーンもそれを聞いて笑ったものだが、自分が当人なら笑えないと思うのだった。


「あの時はお父さんもジーロお兄ちゃんも馬車にはうんざりしてたからね」


 リューは苦笑いしていると、外からスーゴの声がしてきた。


「坊ちゃん、前方で馬車が二台ほど止まってます。大丈夫だと思いますが、一応警戒しといて下さい」


 スーゴの遠くを見通す『鷹の目』の能力で確認したのだろう、馬車から身を乗り出してもリューにはまだ見えない。


 リーンも身を乗り出すと、


「あ、本当だ。馬車の後輪の車軸が折れてるみたいよ」


 と、確認した。


 リーンの『追跡者』スキルにも同じ様な能力があるのだ、上級能力らしいがリーンは使えている。



 しばらく進んでいると馬車が道の脇に止まっていて、御者と護衛の兵士が馬車の周りで右往左往していた。


 その傍で、折り畳みの椅子とテーブルを出し、そこで優雅にお茶を飲んでいる、貴族らしい金髪の長いサラサラヘアーに青い瞳のリューと同じくらいの男の子がいた。

 その脇に従者と思われる女性がお茶のお代わりをその男の子に聞いている。


「どうします坊ちゃん?素通りしますか?」


 スーゴが、リューに確認する。


「車軸が折れたなら、僕が代えの車軸持ってるから渡して上げよう。このままだと村まで行かないと入手できないだろうし」


「わかりました」


 リュー達は一旦通り過ぎて馬車を止めて貰い、降りて困っている一団に歩み寄ると挨拶をした。


「こんにちは。車軸が折れたのでしたら、こちらに代えの車軸があるのでお譲りましょうか?」


 この馬車の主であると思われる貴族の男の子は、聞こえないのかこちらを見ようともしない。


「本当ですか!?車軸の代えなんて用意してなかったので助かります!」


 御者の男性が、リューの申し出に喜ぶとお礼を言った。


「いえいえ、困った時はお互い様ですよ」


 リューは感じの良い御者に、マジック収納からスペアの車軸を出すと、渡して立ち去るのだった。

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