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第845話 強敵ですが何か?

『豪鬼会』の大きな本部事務所は、解体業者も真っ青なくらい一瞬で、消滅してしまった。


 事務所から外に逃げ出した構成員達は、それが夢か幻なのではないかという思いで、茫然としている。


 そこに、イバルが率いるミナトミュラー家の領兵達が敷地に突入した。


 構成員達はにわかに現実に引き戻されるのだったが、集団戦の訓練が行き届いた領兵達にほとんど抵抗できずに、捕縛されていく。


 数人、幹部クラスと思われる者達が、激しい抵抗をするのだったが、そこはイバルとノーマンが出ていき、あっという間に取り押さえる。


 それを傍らに、リューがリーンとスードを連れて元屋敷内に入っていった。


 リューとリーンの魔法によって、ほぼ原形を留めない姿になった屋敷だったが、地下に向かう階段は残っている。


 リューはそこに下りていった。


 地下は、牢屋や拷問部屋などがいくつもあり、それらを通り過ぎてどんどん奥に入っていく。


 そして、地下深くに下りていくと、分厚い扉がリュー達の行く手を阻んだ。


 リューがようやくそこで魔法収納から、ドス『異世雷光いせのらいこう』を取り出した。


 自慢のドスに魔力を込めると、リューはその先端を鍵穴に突き刺す。


 雷魔法がその先端から放出され、鍵穴内部が焼かれる臭いが一帯に漂った。


「ぎゃぁ!」


「し、痺れる!」


「ぐわっ!」


 同時に、室内から複数の悲鳴が上がった。


 リューは加減したつもりだったが、漏れ出た魔力が室内にいる者達にまで、影響を及ぼしたようだ。


 リューが鍵穴を破壊して扉を開ける。


 すると、こちらの様子を窺うつもりで室内に待機していた構成員達が、失禁して気を失っていた。


「結果オーライという事で……」


 リューは苦笑すると、その連中を跨いで奥に入っていく。


 室内は広く豪華な造りになっているので、避難用の部屋である事がわかった。


 だが、気を失った構成員達以外に人がいない。


 いくつかの扉を開けると、トイレや風呂、寝室があった。


 そして、一番奥の扉を開けると、さらに奥に続く廊下があり、リューは躊躇する事無く、進んでいく。


 リーンとスードもあとに続いた。


 そこでまた、扉があったが、それは何の変哲もない通常のものだったから、リューが蹴破って突入した。


 どうやらそこは会長室のようで、壁には『豪鬼会』の看板が掲げられ、大きく高そうな机と豪華な椅子、そして、葉巻を咥えた体格の良いひげ面の男が立っている。


 男は不意の子供の来訪者に驚いた様子だった。


「『豪鬼会』の会長さんですか?」


 リューが確認する。


「……誰だ、お前ら……。地上で魔法攻撃を行った連中の仲間か?」


『豪鬼会』の会長は、リューの質問に落ち着きを取り戻したのか、葉巻を灰皿に押しつけて消すとリューに向き直った。


「仲間というか、当人です。自首してもらえま──」


 リューが笑顔で投降を勧める途中だった。


 会長の姿から黒い炎が噴き出し、一瞬消えたと思ったら、リューが壁に吹き飛んだ。


 リューがいた場所には会長が立っている。


 どうやら、瞬時にリューを殴ったようだ。


 壁に叩きつけられたリューは、両腕で攻撃を防いでいたようで、ほとんど無傷である。


「……ビックリするなぁ。闇魔法と火魔法の合わせ技かな?」


 リューは会長の前に進み出ると、身構えた。


 会長が相当強い相手だと判断したのだ。


「我が豪鬼拳を初見で防ぐとはやるな。だが、次はない」


 会長は、武術の達人なのか、上着を脱ぐと同じく構えを取る。


 リーンとスードも刀とドスを抜いて戦う構えを取った。


 しかし、リューがそれを手で制す。


 リーンとスードは、リューの気持ちを汲んで、後ろに下がるのだった。



『豪鬼会』の会長は、独自の武術を使用する達人レベルの武闘家のようだった。


 リューを子供と侮る事無く、本気で殺しにかかる。


 その繰り出す拳は黒い炎を纏い、一瞬で距離を詰めると、リューの目や心臓など急所を攻撃した。


 リューはそれを紙一重で躱すのだが、黒い炎が躱したはずのリューの服を燃やす。


 リューは燃える服を気にする事なく、殴り返した。


 その勢いで服の炎が消える。


 リューの拳は、会長の胸を掠めるがダメージを与えるまでには至らない。


「……その若さでよくぞ、この高みにまで上り詰めたものだ。実戦経験を積み重ね、余計なものを削ぎ落とした拳だな。だが、それだけだ」


 会長は踏み込むと、先程と同じように、一瞬姿が消え、次の瞬間にはリューと距離を詰めて、渾身の一撃を叩き込む。


 会長は先程の拳ではなく、貫手ぬきてでリューの喉笛を突く。


 先程紙一重で防がれたので、指を伸ばして突く分の距離を短縮したのだ。


 リューは渾身の突きを首をひねって躱すが、黒炎の貫手はリューの頸動脈を傷つけた。


 血が噴き出し、天井を赤く濡らす。


 しかし、すぐにその血も止まった。


 リュー自身が治癒魔法で傷を塞いだのだ。


「……ほう。仕留めたと思ったが、あれも致命傷にならなかったか」


 会長は、目を細めた。


 その瞬間である。


 リューの姿が一瞬、目の前から消えた。


 次の瞬間、雷を纏わせた闇が、会長の眼前に現れる。


 それは雷と闇を纏ったリューだった。


 会長がやった技をこの短時間で盗んでマネしたのである。


 リューは会長の鳩尾に会心の一撃を叩き込む。


 会長は、両腕を交差させてその攻撃を防いだ。


 いや、防ごうとしたが、両腕はその一撃に砕かれ、拳から生み出された衝撃波は鳩尾を捉えていた。


 会長は壁に掛けられた『豪鬼会』の看板に吹き飛ばされるのだった。



「……儂の『豪鬼拳』を一瞬で盗むとは……」


 会長は吐血すると、そのまま、意識を失う。


「ふぅ……。変わった身体操作だったなぁ。魔力と気を練り込むのか……。一度の戦いで何度もは使えなさそうだけど、練習次第ではいけるのかな?」


 リューは、倒した会長の事はすぐに興味を失ったのか、その場で『豪鬼拳』の練習を始めた。


 そこに、リーンがそっとリューの首元に手をやる。


「一瞬、焦ったじゃない……!」


 リーンは不機嫌そうに言うと、止血しただけの首筋の傷を魔法で治療するのだった。

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