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第844話 破壊し尽くしますが何か?

 新領地となる予定のバシャドーの街統治も問題だが、差し迫っているものは他にもあった。


 それがノーエランド王国で現在進行形で行われている『豪鬼会』対『風神一家』の大抗争である。


 すでに王都近郊での傘下組織同士の衝突だけでなく、王都内部で本家同士が精鋭を繰り出して両組織の事務所に火魔法を打ち込む事態になった。


 その為、警備隊、王国騎士団だけでなく、海軍騎士団まで出動して大捕り物に発展していた。


 そこへ、ミナトミュラー家も事業を守る為と、ノーエランド王家に協力するという理由で領兵を派遣する事になった。


「私達の行動について、王家には報告なしでいいんでしょ?」


 リーンは愛刀『風鳴異太刀かざなりのいたち』を腰に佩き、気合いが入っている。


「うん。どうやら、警備隊や各騎士団の動きがあちらに漏れているみたいだからね。両組織の幹部以上が全く捕まえられない以上、僕達には自由に動いてもらって、関係者の捕縛が可能ならお願いしたいらしいよ」


 リューは今回、クレストリア王国貴族として援軍にきている。


 だから、できるだけ捕縛する為、刃物は使用せず、素手で戦うつもりでいた。


「リューのドス『異世雷光』はただでさえ殺傷能力が高いうえ、最近、リューはまた魔力が強くなっているから、雷系魔法の発動は相手にとってかなり危険すぎる。だから判断としては正しいと思うぜ?」


 同行したイバルが、リューの無難な判断を支持した。


 これには、リーンとスード、ノーマンも頷く。


「みんな僕が手加減できないヤバい奴みたいな扱いしていない? 最近、学校の授業を参考に加減する訓練もやっているんだよ?」


 リューはみんなの考えに苦情を訴える。


「ノーエランド王家は、国内裏社会の関係者を生きたまま捕縛して、法に則って処罰し、他の者達に対して、好き勝手にはさせないという意思表示をする必要性がありますから」


 ノーマンが捕縛の必要性を説く。


「だから、僕もできるだけ手加減するって!」


 リューは自分の扱いが雑なので、再度、ツッコミを入れるのだった。



 リュー達は、ノーマンの情報網と『次元回廊』の移動力で、神出鬼没な動きを見せていた。


 隠れ家や拠点をまめに移動している幹部達の居場所を突き止め、リューの指示の下、現場に突入していく。


 イバルとノーマンを中心とした領兵隊が、次々と両組織の幹部達を捕縛していった。


 リューは現場監督として突入を見守り、リーンとスードはその護衛である。


 ミナトミュラー家の領兵隊は、先の大戦でランドマーク本家の援軍として活躍した精鋭達なので、その強さは祖父カミーザの折り紙付きだ。


 多少の負傷兵は出るものの、ほとんど問題なく任務は遂行されていくのだった。



「この数日で、何人捕縛したんだっけ?」


 リューが、この日、領兵隊を隠れ家に突入させて制圧した後、夕日に照らされながら、数日間の成果をノーマンに確認した。


「『豪鬼会』大幹部一名、幹部九名を捕縛。『風神一家』は大幹部二名、幹部六名を捕縛しました。構成員は百名を超えます」


 ノーマンが報告書を確認せずとも頭に入っているのか、すぐに答えた。


「結構、捕らえたね。出来る事なら両陣営のボスも捕らえたいところだけど、さすがにそれは難しいかな?」


 リューは結果に満足しながらも、少し贅沢を口にした。


「両者の本部事務所は、軍隊並みの警備態勢なので、王国軍に任せるのが一番かもしれないですね」


 ノーマンの情報網では、ボス達はそれぞれ王都の富裕層が住む地区に屋敷を構えており、そこから動いていない事は掴んでいた。


 ただ、要塞のような作りで、対魔法魔導具や結界、大型兵器まで持ち込んでいるらしく、そこに突撃したら領兵隊もただではすまない事は目に見えていた。


 その為、イバルやノーマンもおいそれと、そんなところに部下を突入させる気はない。


「でも、そういう事なら、僕やリーンも手加減する必要はないよね?」


 リューはこの数日間、みんなの頑張りを後ろで見ている日々が続いていたので、明らかにうずうずしている様子だ。


「……リュー。一応、言っておくが、両組織のボスの屋敷は富裕層の地区にあるから、あまり、派手な事はやらない方がいいぞ?」


 イバルが嫌な気配を感じたのか、リューに釘を刺す。


「でも、どちらとも、広い敷地に万全の構えで防壁まで設けているから、近所を巻き込む心配はなさそうだよね?」


 リューは地図を広げて、『豪鬼会』と『風神一家』のボス屋敷の広さを確認した。


「イバル、私がいるから、うちに死人は一切出させないわ。標的とその仲間の命までは保証できないけど」


 リーンもノリノリで、イバルとノーマンに一考する事を求める。


 今回、領兵隊はイバルに任せているし、突入作戦はノーマンに任せていた。


 この二人が賛成すれば、リューとリーンは堂々と参戦するつもりだ。


「……ノーマンどうだ? 両陣営のボスを捕縛できれば、この抗争も終わるんだが?」


 イバルはこれ以上リューを止められないと思ったのか、ノーマンに判断を委ねた。


「うっ……、イバル君、それはずるい……。──はぁ……。お二人とも、ボスは本当に生かした状態でお願いします。提案するならば、結界や対魔法魔導具を破壊するような大きいのを一発、屋敷に落としてください。ボスがそれに驚いて地下へ避難させる時間を与える事ができれば、そのあとは派手にやっても死なせずに済むかと思いますから」


 ノーマンはイバルに丸投げされたのでぼやくのだったが、すぐに冷静な顔になった。


「了解!」


 リューは信頼する二人の許可が下りたので笑顔で頷く。


 そして、早速、『豪鬼会』本部事務所がある地区へと向かうのだった。



 リューとリーンは、眼前に巨大な屋敷を確認すると、息の合った状態で二人とも魔法を発動した。


 リューは雷の巨大な玉を上空に生み出し、リーンも風の巨大な玉を同じく上空に生み出す。


「なんじゃあれは!?」


 事務所の警護を行っていた『豪鬼会』の精鋭構成員達が、上空に二つの球体を確認して、唖然とする。


 そこにまず、風の巨大な球が巨大な屋敷に落とされた。


 と言っても、その魔法は敷地全体を覆っていた結界魔法と、対魔法の設置型魔導具の機能を相殺すると消滅した。


 立て続けに、リューの雷魔法の球が落下する。


 すると屋敷の上層階が大きな音を立てて破壊されていく。


 屋敷は、屋根や壁、天井、床に至るまで、魔法陣で強化されたり、職人による技術で丈夫に造られていたが、リューが繰り出した雷球は、それを易々と飲み込んでいき、消滅させた。


 破壊の際に火事が起き、残った警備の精鋭構成員達が消火の為に水魔法を使用する。


 そこに、第二陣の魔法が上空に現れた。


 先程と同じ雷魔法による巨大な球である。


 これには、さすがに危機感を覚えたのか、屋敷の者達は急遽、避難を始めるのだった。


 リューはある程度、慌ただしい動きが治まったところで、そのまま、屋敷に改めて魔法を落とす。


 構成員達が避難を終えた大きな屋敷は、この強力な魔法によってほとんどを破壊し尽くし、広い庭に避難した者達は、戦意を喪失させてしまうのだった。

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