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第842話 結果発表も終わり下見ですが何か?

 学園ではこの日、テストの結果発表が行われていた。


 リュー達三年生の成績は以下である。


 一位リュー・ミナトミュラー

 二位リーン

 三位イエラ・フォレス

 四位エリザベス・クレストリア

 五位ラーシュ

 六位イバル・コートナイン

 七位ノーマン

 八位ナジン・マーモルン

 九位サイムス・サイエン

 十位シズ・ラソーエ

 十一位アリス・サイジョー

 十二位スード・バトラー

 十三位ランス・ボジーン

 十四位エマ・ノーエランド

 十五位シン・ガーシップ


 上位のほとんどは、定位置が決まってきた感じである。


 しかし、前回、七位だったラーシュが五位に入るなど、ミナトミュラー家の部下が勉強会の甲斐もあってか、上位を占めている。


 その中で、健闘したのがナジン・マーモルンであろう。


 サイムス・サイエンを抜いた事が嬉しかったのか人目もはばからず、ガッツポーズをしていたから、ライバルと考えていたようだ。


 そして、リューにとって最大の関心事は、当時、補欠入学だったランスが確実に毎回成績を上げてきていたので、どこまで行くのかだった。


 そのランスがスード・バトラーに抜かれた事で連勝記録もストップとなった。


「くっそー! 前回十一位まで行ったのに、アリス・サイジョーとスードに抜かれちまった!」


 ランスはここまで頑張れば頑張る程、結果に結びついていたので、勉強も楽しかった。


 だが、ここにきて、初めて順位が下がる経験をしたのだった。


「上位になると、みんな横並びだから、順位の維持は難しいよね」


 リューが励ますようにランスの肩を叩く。


「でも、感触はいいんだよな。それにリズの家庭教師の教え方と相性がいいんだよ」


 ランスは自分が成長できている手応えがあるから頑張れていた。


 放課後は王宮で雑用をして、リズの計らいで一緒に勉強をしている。


 どうやら、その先生の教え方がいいようだ。


「王家に教える先生ともなると、一流なんだね」


 リューはリズやランスを教える教師に興味を持った。


 リズは自分やリーン、イエラ・フォレスがいなければ、間違いなく一位を守っていただろう成績である。


 ランスも補欠入学から上位に食い込むまでになっているのだから、相当な敏腕家庭教師のはずだ。


「だろうな。リズや俺への教え方がまるっきり違うんだけど、的確でこっちのやる気を削がないというかさ。お陰で俺は、弱音を吐く事なくやる気を維持できているよ。それよりも、リューやリーンは良くやる気を維持できるよな。これ以上、上がらない順位を維持するのって大変じゃないか?」


 ランスは切磋琢磨する友人と競争しているが、リューとリーンは友人達の目標になる存在である。


 プレッシャーに苛まれてもおかしくないとランスは想像した。


「うーん……。僕もランスと同じだよ? 日々の努力が自分を強くすると思っているから、努力は怠らない。だからしっかり成長できているし、頑張っている友達を見ていると、僕も刺激されるしね。みんなのお陰で僕は、成長を止める事無く頑張れていると断言できるよ」


 リューは素直な気持ちを口にした。


 それを聞いていた友人達は、少し感動してしまう。


 努力は本人のものだから、それが他者への感謝に繋がるというのは、リューらしいと言えたからだ。


 そして、そんな人間性だからこそ、学園一の実力者である事を維持し、友人達からも妬まれる事無く慕われるのだと感じたのだった。



「成績発表も終わったから、ようやくバシャドーの下見に来れたね」


 リューは領地加増予定の街の郊外にリーン、イバル、スードと共に訪れていた。


 バシャドーの街は、人口一万人を優に超える大都市であり、西部地方、北西部、南西部の人々が、王都に向かう途中で必ず訪れる事から、普段から二万人くらいの人口で溢れている。


 中には、王都まで向かわなくても、バシャドーの街までくれば、事足りるという者もいるくらいだから、街の規模が窺えた。


 街はたくさん集まる街道上にあり、街の中心部は東西南北を繋ぐ十字の大通りが走っている。


 城門は大きく、主要な街である事を示していた。


 リュー達一行は、馬車で城門を潜ると、バシャドーの街に入った。


「王都以外でこの大きさは初めてです」


 護衛のスードが、馬車の小窓から外を眺めた。


「王都に繋がる街という事は、ここを押さえられたら王都もヤバいって事だからな。かなり重要な土地だから、城壁も分厚く高いし、門も二重、三重の硬さで守りも鉄壁なのさ」


 すでに何度も訪れているイバルが、説明する。


「外から見ただけでも、大きさに驚いたけど、この規模を任されるとさすがに緊張するなぁ」


 ランドマーク家の与力として、しっかり本家を支えている自負はあるが、この街を任されるという事は、結構な重圧だった。


「私達が支えるから大丈夫よ。でも、この街に明るい人材も雇わないと、さすがに大変かもね」


 発展著しいマイスタの街と比べても、数倍規模の大きさがあるバシャドーだから、リーンも適当な事は言えなかった。


「俺もそう思う。──一応、先代バシャドー伯爵の関係者、現在の代官統治下で使えそうな奴には目星をつけているけれど、選ぶのはリューの仕事だからな。あとで資料に目を通しておいてくれ」


 イバルは魔法収納付き鞄から、人材の記載のある資料を取り出すとリューに手渡した。


「結構あるね。マイスタの時に面接したマーセナルみたいな人物がいるといいのだけど……」


「さすがに、マーセナルさんレベルの人材となると、その資料にはいないなぁ」


 リューの執事であるマーセナルは、酸いも甘いも嚙み分けるかなり優秀な人材である。


 マイスタの街の出身でもあったし、あのレベルの人材は稀有だろう。


「ですよねー」


 リューも贅沢な事を言い過ぎたと苦笑する。


「サン・ダーロの下に付けたユキタはどうなの? サン・ダーロが絶賛していたけど?」


「ああ、ユキタかぁ。彼、元商人の子で、親が真っ当なやり方で負債を抱え、お店を潰した過去があるんだよ。そこで彼が考えたのが真っ当ではないやり方みたい。だから、そっち方面には才能を発揮するんだけど、表舞台の普通のやり方は向いていないってランスキーが言っていたから、ちょっと無理かなぁ」


「ユキタさんはノストラの旦那の下では間者以外では全く使い物にならなかったらしいから、今の地位から動かさない方がいいと思うぜ」


 リューの情報にイバルも同意した。


「そうなのね? じゃあ、また人材を探さないといけないけど、これだけ人の多い街で募集を掛けたら、前回以上に大変な事にならない?」


 リーンはマイスタの街での面接を思い出すと、苦い顔をする。


「うっ……。あの時は執事のマーセナルや補佐のタンク、元執事シーツにメイドのアーサが発掘できたけど、酷い人は酷かったよね……」


 リューも当時を思い出すと、リーンと視線を交わし、苦笑いするのだった。

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