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第841話 組織関係の整理ですが何か?

『竜星組』組長代理であるマルコの活躍で、テッドが会長を務めていた『亡屍会』は、『死星一家』に看板を変えて、『竜星組』と同盟を結ぶ事になった。


 ただし、それに不満を感じた幹部の一部が『新生・亡屍会』として、分離独立。


 他にもエラインダー公爵の完全支配下にある『屍人会』にも一部の縄張りを持っていかれる事となった。


『死星一家』のボスであるテッドにとっては、厳しい再スタートとなったが、本人は信用できる部下だけが残ったから、問題無いとの事だった。


「それよりも、『サンドラ商会』とかいう血も涙もない商人にうちの傘下の商会が数件潰されて結構な被害を受けたのが一番堪えたよ」


 とテッドは、同盟相手であるマルコに不満を漏らしたそうである。


「こっちも慌てて止めたんだけどなぁ。サン・ダーロ達は怪しい商会を狙い撃ちにしているだけだから、テッドの傘下だとは知る由もなかったから仕方ないよね?」


 リューは苦笑すると、誰も悪くないとばかりに、言い訳をした。


 というのも、テッドの悪徳商会を潰した事で、リューのもとには資金洗浄された膨大な資金が流れ込んできているからだ。


「同盟を結んだ時にはすでに、『サンドラ商会』が動いていたんだから、起きた事は仕方が無いわよ。その後は、リューが止めたんでしょう?」


「うん。でも、大きな商会ばかりサン・ダーロとユキタが狙い撃ちにした大掛かりな作戦だったみたいで、僕の懐には結構な額が流れてきたから、ちょっと心が痛むかも……」


 リューはリーンの賛同を得たものの、やはり、気になるところではあった。


「テッドには『サンドラ商会』と話をつけたから、今後は狙われない、と保証しています。感謝されたくらいなので問題はありませんよ」


 マルコがテッドと交わしたやり取りを報告した。


「ならいいけど……。その関連で、サン・ダーロからも報告が来ていたよね?」


 リューは机の上に積み上げられた紙束の山から、報告書を見つけて取り出した。


 サン・ダーロからは、『亡屍会』攻撃の手を止めた事で、今度は、バンスカーをボスとする東部方面に勢力を持つ『骸』から、不審の目を向けられているという。


「何々……。『疑われた状態ではやりにくいので、こちらの立場について嘘を交えて説明しておきました』ってある。以下、参照?」


 リューはサン・ダーロが『骸』側と会談を開いた内容の報告書が添付してあった。


 そこには、『サンドラ商会』が王都の最大組織である『竜星組』と同盟を結んだ『死星一家』を敵に回す気がない事。


『竜星組』には以前お世話になった経緯があり、関係組織、商会などもできるだけ敵対する気がない事などを説明していた。


 会談に出席した『骸』の幹部ダガンは疑う素振りは見せたが、『サンドラ商会』側が素直に素性の一部を明かしたので納得する事にしたようだった。


 そこで両者は、次の標的を誰にするか話し合ったそうだが、『屍人会』、『新生・亡屍会』、エラインダー公爵関係の商会を狙い撃ちにする事が決まったという。


 サン・ダーロは『骸』のエラインダー公爵関係への執着が凄いと評価してあった。


「これは僕の疑問がどうやら正しいみたいだね……」


 リューは読み終えた報告書を机に置く。


「つまり、『骸』のボス、バンスカーはエラインダー公爵に恨みがあるって事?」


 リーンがリューの仮説を思い出した。


「うん。バンスカーの死亡説が裏社会に流れる前に、『屍』の吸収を謀って動いていたからね。エラインダー公爵は、対等の存在だったバンスカーの勢力を裏で吸収しようと動いていたんだ。それで生まれたのが『屍人会』。『亡屍会』はテッドが独立して作り、エラインダー公爵の接触があって、傘下に入る事を決めたわけだけど、バンスカーにしたら幹部達の裏切りに映るよね。『屍黒』に関してはボスのブラックがそれを嫌がった形で独立、バンスカーの弔い合戦とばかりに僕達に喧嘩を売って滅んだから、まだ、許せるのかもしれない」


「テッドからもそれに近い証言が出ています。『骸』と接触を図ろうとしたそうですが、『屍』時代の同僚だった『骸』の幹部ダガンが、テッドとの会談を嫌ったそうです」


 マルコがリューの仮説を裏付ける情報を出した。


「という事は意外に『竜星組』は恨みを買っていない?」


 リューは期待に表情が明るくなる。


「バンスカーにとって、自分を殺そうとした相手はマスク姿のリューだから、正体がバレない限り『竜星組』に対する恨みはほとんどないんじゃない? どちらかというと、『黒炎の羊』に対して多少あるんじゃないかしら?」


 バンスカーが当時、『黒炎の羊』を潰そうとしたが、阻止された事をリーンは指摘した。


「そうだった……。僕がバンスカーを倒したから、ついうちが恨みを買っていると想定していたよ。それじゃあ、バンスカーの『骸』とは上手くやれそうだね」


 リューは細かい事を思い出して整理すると考えを改めた。


「若、という事は、今後、『竜星組』は『屍人会』、『新生・亡屍会』を相手にするという事でよろしいですか?」


 マルコが真面目な顔で確認した。


 それはそうだろう、相手はエラインダー公爵傘下の裏社会では一番の巨大組織である。


 冗談でやり合える相手ではない。


「さすがに、単独でやり合う気はないよ? 傘下のシシドー一家をはじめ、同盟関係である『蒼亀組』、『赤竜会』、『死星一家』、他にも友好関係にある組織、あとは、手打ちで今は停戦状態の『聖銀狼会』とも同盟を結べたらいいかな」


 リューも無謀ではないから、単独で抗争を始めようとは思っていなかった。


「『聖銀狼会』ですか……。あそこは強さを求める武闘派組織です。その象徴である王都進出を諦めない限り、うちと同盟を結んでくれるかどうか……」


 さすがのマルコもこの件については、現実的ではないと考え、渋るしかなかった。


「そこなんだよね……。それさえ諦めてもらえれば、僕も友好関係が結べると思っているのだけど、さすがに難しいかぁ。ラーシュにお願いして間に入ってもらう方法もあるのだろうけど、多分それをやったら、あちらの会長が怒りそうだなんだよね」


 リューは唯一の繫がりである兎人族のラーシュを利用する事は逆に難しいと考えていた。


「『かわいい孫をカタギに戻したのに、巻き込みやがったな!』って、怒りそうだものね?」


 リーンはラーシュと仲がいい。


 ラーシュと『聖銀狼会』会長である祖父との関係性については、ある程度理解しているから、一番あり得そうな事を口にした。


「そうなんだよ。うちで独自に、あっちと関係を作らないと難しいだろうなぁ」


 前途多難な未来にリューは溜息を吐くのだった。

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