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第828話 他国の抗争ですが何か?

 リューはノーエランド国王と会談をすると、王都裏社会の動きについて知らせた。


 当初、国王も外部の人間であるリューが詳しい事に疑問を持ったが、おにぎり屋の経営の際に絡まれていた事から相手を調べていた事も伝える。


「──そうであったか……。我が国の問題でミナトミュラー子爵には、迷惑をかけたようだ。──宰相。これまでは国内の安定維持と外交を優先して多少の事には目を瞑っていたが、このまま放置して好き勝手やらせるわけにもいくまい。王都が戦場にされようとしている今、こちらも腹を括る必要がありそうだ」


「はい。ですが、こちらは裏社会の情報についてはあまりに無知です。ガーシップ海軍元帥にも協力を依頼して、今から情報を集められるだけ集めないといけませんな」


 宰相は国王の前向きな言葉に理解を示す一方、その難しさを口にした。


「それならば、うちが協力できるかと。部下を使って情報を集める一方、対策を練っていたところなので」


 リューは控えめに口を挟んだ。


「真か、ミナトミュラー子爵。迷惑をかけたばかりか、協力もしてもらえるとなるとこちらもありがたい。その言葉に甘えよう」


 国王は感謝を述べると、リューから国内裏社会の情報を聞き、理解を深めるのだった。



 王家の心配をよそに、ついに王都でも衝突が起きた。


 それは『風神一家』の本部事務所に数発の火魔法が撃ち込まれるという事件が起きたのだ。


 すぐに消火されてボヤで済み、怪我人も軽い火傷で済んだ為、大ごとにはならなかった。


 しかし、王都内での火の攻撃魔法使用禁止は、裏社会のみならず、王都全体の絶対的規則であったから、これをきっかけに、王都警備隊が『豪鬼会』の王都本部事務所に捜査で立ち入り、容疑者の構成員を一人逮捕した。


 これは、警備隊に花を持たせる為の替え玉であり、何の解決にもならない。


 警備隊内部にも裏社会と通じ、大きな騒ぎにしないという暗黙の了解ができていたようだ。


「警備隊内部の調査に入れ!」


 この事を深刻な問題とした国王の勅命で、騎士団が警備隊の内部調査を即座に行う事になった。


 結果、警備隊の地区隊長二名に、副官三名、隊員十五名が逮捕される事態になった。


 他にも裏社会からお金を貰っていた者はいただろうが、この逮捕がかなり抑止力になりそうだ。


 これも、リューの情報を基に動いた結果である。


 王国騎士団は感謝すると、リューの情報に信頼を深め、それを基に次々に関係者の摘発に力を入れていく。


 蛇の道は蛇という事で、リューは『豪鬼会』や『風神一家』が手を出していそうな公共機関関係は想像できたし、ノーマンから得た情報がかなり役に立った。


 時には個人名まで入手できたので、裏社会と関わりの深い汚職隊員や職員などは一斉検挙されていくのだった。



 内紛騒ぎ以降、国内は平和と思っていたノーエランド王国であったが、次々に逮捕されていく者達が出たので、国王以下、宰相達も驚かずにはいられなかった。


「ここまで、浸食されていたとは……」


 国王は、眉をひそめた。


「不幸中の幸いで、重臣までは汚職は広がっていませんでした。この時に悪い虫を一掃できたのは大きいですぞ。あとは『豪鬼会』と『風神一家』の摘発のみです」


 宰相は、やる気十分といった様子である。


「お待ちください、宰相閣下。両組織にはしっかり衝突してもらい、取り締まりが必要なものという流れを作り、世論をこちらに引き込む必要があります。両組織が大きいという事は、そこに関わる者も多いという事ですので」


 リューが特別な客人として口を開いた。


「……なるほどな。ミナトミュラー子爵の言う通りだ。世論を味方にすれば、通報も期待できるし、いらぬ騒動も起きづらくなるか」


「はい、それに、両組織が揉めれば揉める程、結託する可能性が無くなります。一番怖いのは両組織が手を結んで国に反抗姿勢を取る事ですから」


 リューは狡猾だった。


 両組織の手札を切らせて情報収集を進め、両組織に潰し合いをさせて徐々に削っていく。


 そして、最後は一斉に両組織の中枢を押さえるという計画を用意していたのだった。


「ミナトミュラー子爵。お主も悪よのう」


 国王が作戦を聞いて、苦笑する。


「いえ、大きな組織が相手となれば、正面からの取り締まりは損害も大きいと思いますから、苦肉の策です」


 リューは苦肉とは思えない笑顔だ。


 これには、一堂に会している重臣達も思わず釣られて笑いが起きる。


 冗談と捉えたようだ。


 そして、納得するしかない。


 リューの作戦はあくどいが、相手が裏社会である以上、正攻法では一掃できないのも確かだからだ。


 国王をはじめ、宰相以下重臣達は、クレストリア王国の『王家の騎士』称号持ち少年貴族を、頼もしく感じるのだった。



『豪鬼会』と『風神一家』の衝突は、王都だけでなく、王都郊外でも続いた。


 その度に、彼らの情報はノーマン達が調べ上げるきっかけとなり、丸裸にされていく。


 そうとは知らず、両者ともやられたらやり返す、報復合戦に執心する。


「ノーマン君、どう? 結構、情報は集められた?」


「はい。両者の大幹部が活発に動いてくれたので、居所もほとんど割れました。これなら、次の段階に移れるかと」


「それじゃあ、あとはお願い。僕もタイミングを見計らって、国王陛下にその情報を流すよ」


 リューは頼もしい部下に笑顔で頷くと、『次元回廊』で、リーンとスードと共に一度、仕事の為にクレストリア王国へ帰還するのだった。

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